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戦記 二十三
さて高尾城。
城下には領民があつまり、毛利と戦うのだと意気込んでいた。
それを城から眺めて、元宅は胸をいためた。己はどうなってもかまわないが、領民は巻き込みたくなかった。
しかしそれはできそうもなかった。
(わしは地獄に落ちて、鬼のみならず民からも責められるであろうな)
元春は自分の身代わりになって死んだという。元宅であるといつわり、元長の軍勢を足止めした。そのおかげで、自分は義光にかかえられながら高尾城に逃れることができた。
金子城から一昼夜かけて高尾城に逃れ、幸いにというべきか、隆景の軍勢は来ず、ゆっくり休むことができた。
陽が沈んでゆこうとし、空を朱に染める。
城下では松明が焚かれ、夜の帳が下りる城下で点々と灯る。
元宅のそばでは義光も同じように城下を眺めていた。
この夜が明ければ隆景の軍勢が総攻撃をしかけてくるであろう。
高尾城は一千の兵力があり。それに領民が加われば一万は超えるであろうが、いかんせん領民は素人である。玄人の毛利軍に蹴散らされて、残りの一千くらいしかない高尾城はあっけなく落とされるであろう。
「元宅殿、土佐に逃れないか」
などと、とても言える気配ではなかった。元宅からは死を覚悟した悲壮感が噴き出されているのを感じてやまなかった。




