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伊予天正の陣戦記  作者: 赤城康彦
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戦記 二十二

 金子城でのことは、元長が使いをよこすまでもなく電撃のように駆け巡って隆景の耳に入るところとなった。

「恐れていたことがおこったか」

 苦虫を噛み潰すような面持ちで隆景はうめいた。

 これで伊予、金子領の領民は毛利を恨むであろう。

「もはやきれいごとは通じぬ」

 領民は毛利に不信感をいだき、狙うは残る高尾城のみであり民には危害を加えぬと、いかに説得しようとも聞き入れないであろう。

 それどころか領民たちは高尾城の残存兵力とともに毛利と戦う決意をかためていることは、容易に想像できた。

 不覚小早川隆景、この伊予にて汚名を残すか。葛藤が胸中を駆け巡り。そんなときに元長からの使いが来て、金子城でのことを伝えた。

 そこで驚かされたのは、元宅が討たれたと聞いていたが、実は弟の元春が身代わりになって死んだ、ということだった。

「元宅殿は生きているのか」

 兄弟の間でどのようなやりとりがあったかわからないが、元宅は最後の最後まで徹底抗戦を貫く覚悟なのであろう。それに領民も加われば、凄惨な戦いになることは避けられない。

 だが戦を長引かせることはできない。これは毛利だけの戦ではない。羽柴秀吉の天下を賭けた戦いなのだ。もし下手に長引かせれば戦況は大きく動き長宗我部を利し、そのうえ反羽柴勢力の動きが盛り上がるかもしれないのだ。

(元長も辛かったであろう)

 その辛さを、己も引き受けなければならない。

「やむをえぬ」

 隆景は、心を鬼にする決意をかためた。かためざるをえなかった。

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