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伊予天正の陣戦記  作者: 赤城康彦
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戦記 十七

 金子の殿様は討たれない。

 そんな話を領民たちは嬉々として語り合い。毛利軍の到着を心待ちにしている者まであった。

 そのため金子城下は緊張がほぐれていた。

「おや?」

 なにか音がした、と思ったら。それはどんどんと大きくなって、ついに姿をあらわす。

「や、毛利軍ではないか」

 領民は笑顔でその方へ駆け寄る。

 が、しかし――

 刃が光り、領民たちはたちまちのうちに血祭りにあげられてゆく。 

「こりゃどうしたことじゃ!」

 領民たちは一気に悪夢の中に叩き落とされた。金子の殿様は討たない。それから土佐人を追い払ってくれる。と期待を寄せていた毛利軍に襲われようとは。

 しかしこれは悪夢ではない。現実である。人々の悲鳴が響き血が飛び交い。ぬめりとした血の感触に発狂する。

「嘘じゃったのか、なにもかも、嘘じゃったのか!」

 人々は悲鳴交じりに叫んだ。

 所詮、毛利も長宗我部も同じ侵略者ではないか。戦など、結局は領土が欲しいなど、欲望のぶつかり合いではないか。

 その欲望のぶつかり合いから自分たちを守ってくれたのが、ほかならぬ金子元宅だった。

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