17/25
戦記 十七
金子の殿様は討たれない。
そんな話を領民たちは嬉々として語り合い。毛利軍の到着を心待ちにしている者まであった。
そのため金子城下は緊張がほぐれていた。
「おや?」
なにか音がした、と思ったら。それはどんどんと大きくなって、ついに姿をあらわす。
「や、毛利軍ではないか」
領民は笑顔でその方へ駆け寄る。
が、しかし――
刃が光り、領民たちはたちまちのうちに血祭りにあげられてゆく。
「こりゃどうしたことじゃ!」
領民たちは一気に悪夢の中に叩き落とされた。金子の殿様は討たない。それから土佐人を追い払ってくれる。と期待を寄せていた毛利軍に襲われようとは。
しかしこれは悪夢ではない。現実である。人々の悲鳴が響き血が飛び交い。ぬめりとした血の感触に発狂する。
「嘘じゃったのか、なにもかも、嘘じゃったのか!」
人々は悲鳴交じりに叫んだ。
所詮、毛利も長宗我部も同じ侵略者ではないか。戦など、結局は領土が欲しいなど、欲望のぶつかり合いではないか。
その欲望のぶつかり合いから自分たちを守ってくれたのが、ほかならぬ金子元宅だった。




