172.
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
「どうか、この部屋をお使いください! 当宿で一番良い部屋です!」
宿屋の主人は、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔で、最上階の鍵を差し出した。
本来なら一泊で金貨が飛ぶような貴賓室だ。
だが、俺は遠慮することなくそれを受け取る。
「ありがたく使わせてもらおう」
ここで「いや、そんなことはできない」と断るのは、かえって失礼にあたる。
相手の精一杯の感謝を受け入れ、満足げに頷いてやるのもまた、貴族の務めだ。
通された部屋は、素晴らしいものだった。
床には足首まで埋まるほど毛足の長い絨毯が敷き詰められ、部屋全体に柑橘系の香油の匂いが漂っている。
窓からはエルフの都が一望でき、家具も一流の職人が手掛けた彫刻品ばかりだ。
「ふぅ……」
俺は革張りのソファに深く腰掛け、指を鳴らす。
空中に黒い亀裂が走り、先ほど捕獲した砂漠エルフの顔だけがニョキリと突き出した。
「ひぃっ!? ここは、どこだ……!?」
「質問するのは俺だ。……貴様ら砂漠の民が、なぜこの森の国で幅を利かせている?」
俺が冷ややかに問うと、エルフは顔色を青くしてペラペラと喋り出した。
命が惜しいのだろう。
彼が語った内容は、予想以上に深刻なものだった。
現在、この国は砂漠エルフによるクーデターで乗っ取られているらしい。
その力の源となっているのが、王城の地下深くに安置された『聖なる遺物』。
そこから溢れ出る莫大な魔力エネルギーを利用し、本来の住人である森のエルフたちを力でねじ伏せ、奴隷のように扱っているという。
「その遺物とやら、どす黒い気配を放っていないか?」
「な、なぜそれを……! あれは我らに力を与える、偉大なる闇の……」
間違いない。
俺たちが探している『邪神の遺体』だ。
俺は用済みとなったエルフを再び異空間へ押し戻し、亀裂を閉じる。
「……酷い話です」
淹れたての紅茶を運んできたミュゼが、沈痛な面持ちで呟いた。
その長い耳は、力の入っていない枯れ葉のように力なく垂れ下がっている。
トレイを持つ手も、微かに震えていた。
「私の故郷が、まさかそんなことになっているなんて……。同胞たちが虐げられていると思うと、胸が張り裂けそうです」
ミュゼはかつて、この国で暮らしていた森のエルフだ。
今は俺の従者としての立場を優先しているが、生まれ故郷が蹂躙されていると聞いて、平静でいられるはずがない。
彼女は唇を噛み締め、俯いた。
「ご主人様、あの……」
「言うな」
俺はソファから立ち上がり、ミュゼの頭にポンと手を置く。
「お前が何を言いたいかくらい、分かっている」
「あ……」
「方針は決まった。やることは二つだ」
俺は指を二本立てて、ミュゼとフレイに見せつける。
「一つ、王城の地下にある『邪神の遺体』を回収する」
「二つ、そのついでに砂漠エルフどもを叩き潰し、この国を開放する」
ミュゼがバッと顔を上げ、濡れた瞳を見開いた。
「国を、開放……ですか? しかし、それではご主人様に多大なご迷惑が……」
「勘違いするな。俺は『遺体』が欲しいだけだ。だが、それを守っている連中が邪魔だから排除する。結果として国が救われるなら、それでいいだろう?」
俺は不敵に笑う。
欲しい物はすべて手に入れる。
ついでに従者の悩みも解決してやる。
それが俺のやり方だ。
「それに、俺の可愛いメイドが暗い顔をしていては、紅茶の味が落ちるからな」
「ご、ご主人様ぁ……ッ!」
ミュゼの目からポロポロと涙がこぼれ落ちる。
彼女はその場に跪き、俺の手の甲に額を押し付けた。
「ありがとうございます……! この身も心も、すべて貴方様に捧げます……!」
「父上さま! フレイも頑張ります! 悪いエルフたちをドカンとやっつけちゃいましょう!」
フレイも元気よく拳を突き上げる。
ミュゼの耳も、今は嬉しそうにピクリと立ち上がっていた。
「よし。そうと決まれば善は急げだ。王城へ『カチコミ』といくぞ」
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