170.
ドクン。
心臓が冷たく脈打つ。
俺はスキル【開】に、通常の魔力ではなく、拒絶の魔力を流し込む。
イメージするのは、断絶。
否定。
そして、虚無。
こんなふざけた空間は認めない。理不尽に人の命を奪うようなものを、俺は許さない。
俺の前で、勝手な真似はさせない。
その思考が引き金となり、力のベクトルが反転した。
キィィィィィィン!
甲高い音が鳴り響く。
それは、世界そのものが悲鳴を上げている音だった。
俺を中心として、膨張を続けていた暗黒空間に、一本の亀裂が走る。
いや、違う。
それは亀裂ではない。
開いていた傷口が、強制的に縫合されているのだ。
本来なら「空間を切り裂き、開く」はずの俺の力が、今は「空間を縫い合わせ、閉じる」力として作用している。
ズズズズズズズッ!
巨大な黒い球体が、見えない巨大な手によって圧縮されるように、急速に縮小を始めた。
内側からの圧力など関係ない。
物理法則も無視して、ただ理不尽に、有無を言わさず「閉じられて」いく。
「あ……?」
外で勝ち誇っていた砂漠エルフの、間の抜けた声が聞こえた気がした。
シュンッ!
最後には風を切るような軽い音と共に、飲み込まれていた光と音が戻ってきた。
暗黒空間は跡形もなく消滅し、そこには青空(天井の大穴から見える)と、無傷の俺だけが残っていた。
俺は着地し、パンパンと服の埃を払う。
「な、なな、なん……!?」
砂漠エルフが、飛び出しそうなほど目を見開いて硬直している。
口をパクパクと開閉させ、言葉にならない音を漏らしていた。
「ば、馬鹿な……! 邪神様の力が……暗黒空間が、消えただと!? 貴様、何をしたぁああああああ!?」
「邪悪なる力を、閉ざさせてもらった」
エルフが理解不能といった顔で首を傾げる。
空間の穴が開いていたから、閉じて塞いだ。
それだけの話だ。
「ご、ご主人様ぁ……!」
「父上さまっ!」
腰を抜かしていたミュゼとフレイが、涙目で俺に駆け寄ってくる。
二人とも、俺が死んだと思って生きた心地がしなかったようだ。
悪いことをしたな。
「心配かけたな。まあ、この通りだ」
「信じられません……あのような質量のエネルギー体を、一瞬で無に帰すなんて……」
「やっぱり父上さまは最強です!」
二人が俺にしがみつく。
その温かさを感じながら、俺は冷ややかな視線を前方のエルフへと向けた。
「さて、貴様は捕縛させてもらうぞ」
俺が一歩踏み出すと、砂漠エルフは「ひぃっ!」と悲鳴を上げ、無様に尻餅をついた。
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※1/30(金)
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