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アネモネが華やかに舞いましょう  作者: komado(六種銘菓BOOKS)
アネモネが軽やかに舞いましょう
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◯『一番』の生まれる場所

 アネモネの大好きな『一番』の紅茶は、カフェアリーヌが茶園に出向いて直接仕入れ、そして自らの手でブレンドしたものです。ですが、アネモネはその茶園の場所を知りませんでした。ですから、自分の店で出したり、プライベートな時間で楽しんだりするには、やっぱりカフェアリーヌからブレンドを直接貰う他に術がないのです。

 今のアネモネの目標は二つありました。ひとつは遠い将来、シテンや旅人たちのための観光案内所を開くために、この世界にもっと詳しくなること。もうひとつは、喫茶店のウェイトレスとしてのお仕事を全うすることです。

「夢がいっぱいあるって、忙しいけど楽しいことよね! やりたいことが沢山で、困っちゃうわね!」

 まだまだお客様が来ない、白い世界の喫茶店。それをよりよい店にする為の工夫をしていきたいものです。ですから、本店のオーナーであるカフェアリーヌには様々なことを尋ねますし、彼女が知らないであろうことでさえもアネモネは沢山知りたがっているのです。『一番』のことを知りたがるアネモネに、カフェアリーヌは昔を思い出す顔をしながら答えます。

「当時紅茶が特別好きだったわけではないのだけれど、喫茶店をやるんだから、メニューには添えておきたいものでしょう? だから勉強したし、紅茶園にも足を運んだ」

「アクティブだったのね。一からだと、大変だったんじゃない?」

「大変だったわよ。知り合いもいないところから始めなきゃいけないの。すごく大変。でもこれを仕事にするんだ、って気持ちで人と接していくとわかるの。良い意味でビジネスライクな人も、アットホームな人もいる。そういう人たちにそれぞれ助けてもらったから、今があるんだわ」

 アネモネはカフェアリーヌの当時の苦労の上に今のゆるりと流れる時間があることを知り、唇をきゅっと一文字に結びました。自分の夢も同様に、そのような苦労を重ねなければ叶わないもののはずです。自分ではまだ方法がわからず、夢見て憧れる程度のものでしかありませんが、じっくり考え細かいところまで勉強していけば、自ずと壁にぶつかっていくでしょう。その壁の高さに、アネモネは不安を抱いているのです。

 不安を感じ取ったのか、カフェアリーヌはふっと微笑んで『一番』をアネモネのカップに注ぎ足しました。彼女は、高い壁もいろいろな人たちと力を合わせれば乗り越えられることを知っています。ですからこう言いました。

「アネモネちゃんも、そういう人たちと仲良くなれるといいわね」

 アネモネはカフェアリーヌの注いだ紅茶に口をつけてから、小さな声で呟きます。

「私でもできるかしら」

「できるわよ。みんな最初はお人形さんが動いたら驚いちゃうかもしれないけど、そういうことにも慣れっこな人ばかりが住む世界でしょう。であれば、アネモネちゃんみたいにピュアでキラキラした目を持つ子は応援したくなっちゃうもの」


 アネモネは動くお人形。不思議な生き物や存在が沢山住むこの世界でも、人並の大きさのドールが動くのは大変珍しいことで、目にすれば仰天してしまう人のほうが多いのです。ですからあまり人前には出てきませんでしたし、人前に出るのであれば細心の注意を払ってきました。時々それが嫌になってしまうアネモネは駄々をこねたりもします。

 けれど、それを除けばアネモネは本当に『良い子』なのです。まっすぐな心と一緒に、この世界の化身しか知らないであろう大地の知識を持っている、稀有(けう)な存在。そんな彼女の願い事を応援してくれる人は、これから沢山見つかるのかもしれません。

 アネモネはそんな未来に期待し、胸をドキドキとさせていました。

「あ、ただ悪い人には騙されないようにね。少ないけど、この世界にもいるの、知ってるでしょう?」

「知ってるわ……目を背けたい現実。でも、そんなことにも直面していかなきゃいけないのよね。わかったわ、気を付ける」

 両頬に手を当て、やはり不安そうな表情をしながらではありますが、今度はカフェアリーヌが心配するには及ばない顔でした。悪い人が近づいてきても大丈夫なくらい、信頼できる人たちとの繋がりを増やしていきたいとの思いが、彼女の夢への気持ちを一層強くさせていたからでした。

「アネモネちゃんにも、今度うちの『エリア』を紹介してあげるわ。腕利きの商人と仲良くして、いろんな商材に触れる機会もあれば、きっと見識は深まると思うわよ」

「ホント!? いつ会えるのかしら。私それ、すっごく楽しみ……! ありがとう、カフェアリーヌ!」

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