第81話 お風呂に入ろう 1日目
スイカの皮の残骸がタライの中に投げ入れられている。
みんな良く食べて、騒いで、暴れて……
そしてようやく寝る準備をし始める。
僕はさっきからシャワーを浴びたくてしょうがない。
顔の化粧を落としたいからだ。
罰ゲームで、みんなから顔を真っ白に塗られ、口紅を口が裂けたように耳元まで塗られ。
それを面白そうに笑いながら写真を撮られまくれ……
今日一日でも十分内容の濃い一日だったので、すでに疲労感でいっぱいだ。
なのに、これをあと二日こなすのか?
体、もつのかな……
秋芳部長らは、広間に集まって先に誰がお風呂に行くか相談している。
各々、バッグから寝巻きやら着替え、化粧品などを取りだしている。
「香奈ちゃん、そのショーツ、かわいー」
「ありがとう。この前、お店でたまたま見つけて、買っちゃったの」
……
「深谷さん、それ、なに?」
「これ、コンディショナーよ。使ってみる?」
…………
なんか……
女の子達が、女の子の話してる。
当然と言えば当然なのだが……
非常に居心地が悪い。
ちょっと縁側でも行こうかな……
「あー そういえば春山、お前、男だったよな」
風呂場に行こうとした南先輩と目が合ったため、そんなことを今さら言われる。
「お前は入るの、最後だからな」
「はい」
「覗いたら、ただじゃすまないからねー」
遠野先輩がニヤニヤしながら言ってくるが、僕もそんな愚かなことはしないし、まだ死にたくはない。
そもそも先輩たちの裸なんかに……興味は……ない。
「なんか、つい忘れちまうんだよな。男っていうことを」
「はぁ」
「男らしくないというのか……」
あんまり褒められてるようではないので、早いとこ行ってきてください、南先輩。
「春山くんは弟みたいな感じなんだよね」
そうですね、部長から見れば僕は放っておけない弟分なんですね。
「春くんはー マスコット的なー ペットかなー?」
あぁ、そう……
遠野先輩的には、僕は人間でもないと……
「もう面倒くさいから、女として生きれば?」
深谷先輩は、僕が男であり続ける以上、存在事態を許してくれないのだろうか?
みんな、なにをを言ってるんだよ、もぅ。
広間では、お風呂の順番待ちの間に、女の子たちが話に花を咲かせている。
みんな、なんだかんだいって、仲いいよね。
良いことだと思う。
僕なんか個人的には、あんまり家族以外の人と共同生活するのは、ちょっと抵抗がある。
特にトイレとかお風呂とか……
修学旅行とか、林間学校とか、そのことだけが嫌で、いい思い出として残っていない。
それが今回、女の子と。
しかも年上の先輩方と……
しばらくすると南先輩がお風呂から戻ってきた。短パンに白いシャツという姿で、片手にコーヒー牛乳のパックを持ちながらやって来る。
温かい湯気と、石鹸のよい香りとともに。
さっきは先輩たちに興味ないなんて思ってしまったが、なんだか風呂上がりの女の子を見ると、変にドキドキする。
そしてみんな順々に浴室へと消えていっては、変身して帰ってくる。
深谷先輩は灰色の寝巻き姿で現れる。
髪の毛が濡れて、バサバサになってると、また印象が全然違って見える。
しかし、その、まぁ……
胸が大きいため上着のボタンを全部はずして着てるけど、僕がこの場にいるってこと、理解してるのかな?
次に入っていったのは遠野先輩。
入る前と、入った後の差が一番大きい。
白いヒラヒラしたドレスみたいなの着て戻ったけど……それ、寝巻きなの?
いつもは髪が波打っているのだが、まっすぐ下に垂れ下がったストレートに。
顔もちっちゃく……というか、パーツが全部いつもより小さくなってる?
よーく見ると、童顔なんだな、遠野先輩って。背も一番小さいし。
いつもは女子高生の割には、大人っぽい綺麗なお姉さんみたいな印象だったけど。
今は可愛らしい女の子って感じだ。
化粧の威力って、はんぱないんだなー
あっ、目が合っちゃった。
「ん? なに見てんのよー!」
「あ、いえ、すみません」
「ジョーカーのくせにー!」
いやぁ……いつも化粧してる人に言われましても。
そして今度は部長。
部長に関しては、何をやっても絵になる美少女だから、まったく問題ない。
ツルツルの光沢のある涼しそうなピンク色の寝巻きに身を包みやってくる。
ツヤツヤになって、ほてった顔が、なんだか色っぽい。
「お待たせ、春山くん。さっぱりしたよー」
「じゃあ、借りてきますね」
最後となった僕は、シャワーを浴びにお風呂場へ。
早くこの顔の忌々しい化粧を洗い流したい!
脱衣所で急いで服を脱ぎ捨てると、浴室に。
中はすでに4人分の熱気で包まれており、サウナのような状態に。
すでにみんなが使用した後なので、ほのかにソープのよい香りが充満している。
これはこれで、よく考えると、変な感覚だな。
要するに、使用後の浴室、な、わけだし。
さっきまで、みんなこの場所で全裸になってたわけだし。
女子高生3人の使用済み浴室。
響きが卑猥すぎる。
まっ、いいやそんなことは。それよりも顔を!
鏡に写った自分の顔は、まるで場末のピエロみたいな酷く疲れはてた顔だった。
早速顔を洗う。
……これ……
……なっかなか……
……落ちないんですけど!
なんとか顔を洗いきると、髪から体へと順に洗っていく。バーベキューをやって、煙の匂いとかついたので、念入りに洗う。
そして洗い終わると、そのまま掃除の開始。
石鹸から洗剤に、垢すりからスポンジへと持ち替えて、タイルを磨く。
ちゃんと使った分はキレイにしてと……
……ん?
排水溝に髪の毛が……
長くて黒い……髪の毛。
この持ち主は一人しかいない。
部長の……髪の毛?
なんか、ちょっと……
なんだか、ちょっと……
エッチだな……
どうしよう……違う変は毛とか、落ちてたら。
どうしよう……
「春山くん?」
「ふぁい!」
突然! 脱衣所から、部長の声が!?
「大丈夫? だいぶ時間たってるけど?」
曇りガラスの向こう側に、部長が立っているのが分かる。
慌てて空っぽの湯船の中に飛び込んで、僕は身を隠す。
「大丈夫です! 掃除してるんです!」
「そう? ならいいけど…… のぼせて倒れちゃってるのかと思って」
「大丈夫ですから! 終わったら戻りますんで!」
あー びっくりした。気付かなかったけど、いつからいたんだろう?
「……」
「……?」
「……」
「……??」
え? なんでまだいるの?
「部長?」
「顔、きれいになった?」
「え? ええ、まあ」
「洗顔フォーム、貸してあげようか?」
「あ、ありがとうございます」
洗顔フォームかー それあると、もっときれいに落とせるかな?
なんか、まだ顔に違和感があって……
「……」
「……?」
「……」
「……??」
「取りに来ないの?」
「そこに置いといてください!」
「渡そうか?」
「置いといてください!!」
なんなんだよ!
なんで入ろうとするんだよ!
……
…………
……行ったかな?
そーっと様子を伺いながら扉を開け、いないのを確認して、置いてあった洗顔フォームを借りる。
まったくもう。
僕の裸でも見たいの?
どういう神経してるんだよ。
掃除も終え、顔ももう一度洗いなおして、身も心も浴室もきれいになったところで、浴室から出る。
さっぱりしたー
さてと、寝巻きに着替えて……えっ?
あれ?
脱ぎ捨てた服や下着が、きれいにたたまれて並べてある。
おかしいな~
入るとき急いで脱いで、かごの中に無造作に放り投げてたと思うんだけど……
あれ? もしかして……
え?
まさか部長が?
たたんでくれたの?
下着も?
うそでしょ……
恥ずかしいんですけど!
めちゃくちゃ、恥ずかしいんですけどおぉ!!
そうだね、これからは脱いだ服はちゃんとたたみます。
脱いだ靴も、そろえるようにします。
カバンも、床に放り投げないようにします。
食べ終わった食器も、片付けるようにします。
だから、
だから……下着は、もう……
触らないで下さい。




