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◆第十六話『混沌の王』

 どうやらヴィルシャは気を失ったらしい。

 腕の中で、静かにまぶたを閉じていた。


 少し悪戯をしたい衝動に駆られるが、いまはそんなことをする暇はない。すぐさま影を走らせ、彼女の得物である2本の剣を回収。抱かせる形で持たせ、転移を使って魔界へと送った。


 ふと荒い息遣いが聞こえてきた。

 見れば、リエラが大きく肩を上下に揺らしていた。疲れているよりは焦りが先立っているような雰囲気だ。彼女はいまにも飛び掛からんと剣を構える。


「随分と取り乱しているではないか」


 心中を悟られたことを嫌悪したか。

 リエラが剣をみちりと音が鳴るほど握りしめる。


「まあ、待て。少し話をしようではないか」

「……わたくしにはその必要がありません」

「これを見ても同じことが言えるか?」


 カオスは意地悪く笑みながら、懐から拳大の角ばった結晶を取り出した。それを見た瞬間、リエラが大きく目を見開く。


「《聖石》の核……? ではやはり先の爆発は──」

「あのベイオーンとかいう男のものだ。俺様に渡すぐらいならと爆発しよった。結果は見ての通り無駄に終わったわけだが」


 奴らの自爆魔法はたしかに強力だ。しかし、それは弱者が想定以上の力を発揮するからであり、それ自体の威力は防げないほどではない。骸骨将軍や愚指の巨人程度であれば、あの爆発でも倒されていただろうが。


「とはいえ、面倒なことをしてくれた。おかげで城は潰れるは大量の民衆が死ぬは予定外なことばかり起きてしまったぞ」

「なんてことを……」

「ま、俺様が《聖石》を守ったから再び生き返ったがな。奴らひどく間抜けな顔をしていて面白かったぞ。あの光景、お前にも見せてやりたかった」


 多くはなぜ生き返ったのかと疑問を抱いた表情だ。


「ああ、ちなみに復活したベイオーンは拘束中だ。さすがにまた爆発されても困るからな。いや、拘束というのは違うな。正確にはエルリードの玩具になっている」


 鎖を口に突っ込ませるだけでなく、ほかの鎖でも体中を拘束。笑いながら少量の毒を流したり骨を折ったりと遊んでいた。うっかり殺してしまいそうだったが、去り際に注意をしたのでさすがに大丈夫だろう。……おそらく。


「生き返った民はどうしているのですか」

「なんだ、ベイオーンの心配はしてやらんのか?」


 本当にどうでもいいと思っているらしい。

 まるで興味がないとばかりの表情と無言が返された。


「安心しろ。いまは魔物たちを都市の外に待機させている。お前の連れも生きているし、すべてとはいかんだろうが、民も大半は生きている」

「……脅しに使うためですか」

「なぜ脅す必要がある?」

「あなたではわたくしに勝てないからです」


 淀みない返事だった。

 その目も自身の勝利をまるで疑っていない。


「ふ、ふふっ、ふはははははははっ!」


 突然、大きな声で笑われたからだろう。

 リエラが不快感をあらわにする。


「なにがおかしいのですか?」

「いやなに、傲慢もここまで来ると清々しいと思ってな」

「わたくしはただ事実を言ったまでです」

「ふん。その面を覆ったものはお前の心の内を隠すためのものか?」

「……なにを言っているのかわかりません」

「言いたくないのならそれでも構わん。だが……断言しよう。じきにお前はその弱さを自ら口にすることになる」


 すでにヴィルシャのおかげでリエラの〝弱さ〟は露呈しはじめている。いまも会話中に幾度も目をそらしているのが証拠だ。


 とはいえ、このまま会話を続けていても〝弱さ〟を認めさせることはできないだろう。認めさせる手段があるとすれば、ただ1つ──。


「俺様と戦え。もし俺様に勝てば、いま都市を包囲している魔物たちを撤退させよう。それだけでなく今後、地上に侵攻しないと約束しよう」

「…………なにが目的ですか?」

「疑り深い奴だな」

「勝てない相手にわざわざ挑んでくるのですから、なにか裏があると考えるのは当然だと思いますが」

「相変わらず自身の力を疑わん奴だ。まあ、たしかにお前に勝つのは難しいだろう。〝いまの〟俺様ではな」


 カオスはにたりと笑ったのち、手に持った《聖石》の核を口に放り込んだ。そのまま咀嚼することなく、ごくんと大きく喉を鳴らして呑み込む。


「ふむ、やはり味はしないな」

「なっ!? 《聖石》を……食べた……?」


 予想だにしない行動を前にしてか。

 リエラが何度も目を瞬かせていた。


 強敵を前にして頭がおかしくなったわけでもなければ、ただ腹を満たすために食べたわけでもない。これはリエラという強敵に勝つため、現状でとれる唯一の手段だった。


《聖石》の核は、元は六門の始祖の心臓。端的に言えば大きな魔力の器だ。そんな器を取り込んだのだから、当然、いまよりもさらに大きな魔力を内包することが可能となる。


 ただ、魔力量が増えたこと以上に大きな利点がある。

 それは過去、六門の始祖たちによって施された封印の解除だ。


「ぁあ~……感じる、感じるぞ。体に巡る懐かしき力を……ッ!」


 プリグルゥによって1本が取り除かれ、残り4本になっていた刃の刻印。そこから1本が削られ、残り3本となった。瞬間、全身に大量の魔力が流れ込んでくるのを感じた。言うなれば空になった大きな池に水が流れ込んでくる感じだ。


 これでも本来の姿に戻ったとは言えない。

 だが、この戦いを制するには充分な力だ。


 リエラもこちらの強大さを肌で感じ取ったのか。

 剣を握る手が見てわかるほどに震えている。


「体のほうは正直だな。俺様と戦うことを恐れているようだ」

「……そのような、ことは……ありません」

「ならば改めて要求する。俺様と戦え」

「言われなくともそのつもりです……!」


 リエラが恐怖を押し殺さんと剣を振り下ろした。すでに《聖上讃華》を果たしているのだろう。高位魔法を軽く上回るほどの強烈な氷撃が放たれる。


 封印が1つしか解かれていない状態であったなら、正面から受け止めるのは自殺行為だっただろう。だが、封印が2つ解かれたいま、なんの脅威でもない。


「──《ダークスフィア》」


 そう唱えた直後、身を包むように球形状の黒い障壁が出現。襲いくる氷撃を触れたもののみ完全に消滅させた。触れなかった氷撃だけが後方へと扇形に散っていく。


《ダークスフィア》は放出した魔力を高密度で固め、身を包んだものだ。単純だが、それゆえに強力な防御魔法だ。


 完全に防がれたことに驚愕したか、リエラが一瞬だけ目を見開いていた。だが、《ダークスフィア》に耐久力があると踏んだか、間髪容れずに連撃を繰り出してくる。


 とてつもない速さとあって放たれた回数はすぐさま20を突破。まるで猛吹雪のごとく視界を埋め尽くしはじめる。


 だが、ついに一度も《ダークスフィア》を抜けることはなかった。やがて晴れた視界の中、肩で息をするリエラの姿が映り込んだ。


「そんな……1度も突破できないなんて……ッ」

「どうした。もう終わりか?」


 力の差を理解したかと思いきや、まだ諦めていなかったらしい。


 リエラが剣を地に突き刺した。いったいどんな攻撃をしかけてくるかと思いきや、下方から山のごとく巨大な氷塊が突き上げてきた。あまりに凄まじい勢いとあって一瞬にして視界が氷で埋め尽くされてしまう。


《ダークスフィア》がなければ空に打ち上げられていただろう。そんなことを思いながら、氷塊を削りながら悠々と外に出た。途端、掲げた剣を振り下ろすリエラの姿が目に入った。直後、まるで呼応するかのように上空から轟音が聞こえてくる。


 見上げた先、落下してくる氷塊が映り込んだ。回避行動をする暇はない。落下してくる氷塊は、先ほどせり上がった氷塊にぶつかりながら地上に激突。耳が潰れそうなほど強烈な衝撃音を響かせた。


 ただ、それだけだ。《ダークスフィア》が襲いくる氷塊の脅威をすべて防いでくれた。大量の氷片と砂埃が舞う中、カオスは自分の体を抱きながらわざと震えてみせる。


「氷ばかり放ちよって。少し肌寒いではないか」

「あり、えない……っ」


 リエラにとっては必殺の攻撃だったのだろう。

 無傷で防がれたことを知った途端、その目に絶望の色が滲みはじめていた。


 このまま圧倒することは簡単だ。

 しかし、それでは真の絶望を与えられない。


「いいことを教えてやろう。この《ダークスフィア》は魔力を用いた攻撃を防ぐのに特化した防御魔法だ。純粋な剣による攻撃であれば簡単に突破できるぞ?」


 挑発ともとれる発言だ。

 しかし、リエラもその可能性を考えていたのだろう。


 ほぼ間を置かずに地を蹴り、距離を詰めてきた。鋭く振られた刃が左方から襲いくる。さすがの速さとキレだ。瞬きをする間もなく刃が首に触れるが、しかし血は流れなかった。まるで輪郭がぼやけ、まるで煙のように空気中に消えていく。


 いましがた斬られたのは《幻想鏡》を応用して生み出した分身体だ。先の氷塊が落ちた際、入れ替わる形で分身体をリエラの前にさらしていた。カオスはさらに分身体を次々に生み出し、リエラを囲む。


「んばぁっ」「こっちだぞ」「ふははははっ!」「俺様こそが至上最強の魔人!」「当てたら脱いでやるぞ!」「こっちだこっち!」「いや、そっちじゃない、こっちだ!」


 からかった分身体から斬られてしまうが、すぐさま生み出して補充。また色んな角度から挑発する。


 遊ばれている状況に苛立ったか、リエラが勢いよく剣を地に突き刺した。直後、その剣を中心に周辺の地面が凍結。地表から尖った氷が無数に飛び出してきた。全方位への攻撃で逃げ場はなく、分身体のすべてが貫く形で消滅させられてしまう。


 残った本体──カオスは、氷の地面から逃れるように大きく飛び退いた。着地した瞬間、リエラの鋭い目に射抜かれる。……どうやら遊びはここまでのようだ。


「では、これはどうだ? ──《グラビティホール》」


 耳鳴りのような音が一瞬響いた、直後。


 リエラを中心に広範囲の地面が半球形にへこんだ。重力を操り、対象を圧する魔法だ。並の人間であれば這いつくばるか、最悪押しつぶされるが……さすがはリエラだ。剣を支えにではあるが、二の足で立ち続けている。


「ぐっ……!」

「さすがだな。だが、そんな状態でこれを躱せるか? ……《ダークレイン》」


 カオスは右手を掲げ、振り下ろす。

 と、リエラの頭上に巨大な魔法陣が出現。

 影で作られた大量の黒い槍を降らせはじめた。


 その光景を見た瞬間に目を丸くするリエラだったが、とっさに自身を守るように氷壁を展開する。だが、これまでの戦闘で消耗したせいか、その壁は薄かった。


 幾本もの黒槍が氷壁に激突し、貫通。リエラの肌をかすめ、切り傷を作っていく。動きが鈍ったところでさらに腕や肩、太腿に槍が突き刺さる。黒槍は突き刺さってからまもなく消え去るが、同時に傷痕から血が勢いよく流れはじめた。


「くっぁ……っ!」


 リエラは呻き声をあげるが、崩れ落ちることはなかった。


 ただひたすらに氷壁を展開しながら進み続け、ついに《グラビティホール》の影響下から逃れた。まろぶように倒れ込むと、黒槍につけられた傷を押さえていた。


 すでに満身創痍といった様子で息も絶え絶えだ。

 もはや勝敗はついているが、まだ終わらせはしない。


「よくぞ、《グラビティホール》を抜けきった。これを凌いだ人間を見たのは初めてだ。褒美にもう1度味わわせてやろう!」


 カオスはさらに《グラビティホール》を追加で放った。直後、重い音が鳴り響き、不格好な体勢で地面に押しつけられるリエラ。


「くはっ……ぁ、ぁ、ぁあ……」


 もはや耐えきる力が残っていないのだろう。また黒槍で空いた傷からは大量の血が流れ出ている。このままでは殺してしまいそうだが、それは望んでいない。


「ふははははは! ほんの冗談だ!」


 カオスは笑いつつ《グラビティホール》を解除。

 リエラのもとへ向かってゆっくりと歩く。


 リエラはもう自分の足で立てなくなったようだ。半身を起こした状態でこちらを警戒しながら後ずさりはじめた。


「ぐ……ぁ……はぁ……うぐっ」


 ……いや、警戒というよりは恐怖に流されるがまま逃げているといった感じだ。その顔はぐしゃぐしゃに歪み、もはや氷にように冷めていた当初の面影はどこにもない。


「そうかそうか。それがお前の本当の顔か。なんとカワイイ顔だ。これほどそそられたのは初めてだぞ。もっと近くで見せてみよ」


 言いながら、カオスは鼻息荒く近づく。と、リエラが剣を振ってきた。がむしゃらで鋭さもない攻撃だったので手の甲で難なく弾き飛ばした。得物を失ったからか、リエラの表情がさらに崩れていく。


 本能的な動きか、彼女はこちらに背を向けると、少しでも遠ざかろうと地をはいずりながら逃げはじめる。


「ほう、まだ気力が残っていたか」

「はぁっ、はぁっ、はぁ……っ!」

「だが、逃げられると思っているのか?」


 まさしく芋虫の動きだ。

 移動速度も歩きで追い越しそうなほど遅い。


「だ、誰か……! 加勢を……っ」


 このまま眺めるのも面白いが、先にリエラが出血死でくたばりそうだ。


 カオスはリエラの襟首を掴んでひっくり返した。

 半身を起こした状態で座らせつつ、言い聞かせる。


「叫んだところで助けなんて来るはずがないだろう。なにしろあの都市にはお前より強い奴はいないのだからな。お前でも勝てない相手に誰が挑むというのだ」


 リエラも助けが来ないことぐらいわかっているはずだ。ただ望みを捨てたくなくて声にしただけだろう。しかし、事実を突きつけられてか、ついに現状を認めたようだ。目から完全に光が失われた。血色の悪くなった唇を力なく動かしはじめる。


「どうした?」

「や……や、め……っ」


 聞こえてくる訥々としたか細い声。

 なにを言おうとしているのかわかりにくい。


「お前は本心を言葉にするのが苦手なようだな。顔には出ているが……言葉にせねばわからんぞ? ほれ、言ってみよ」

「っ、ぁ……こ、こ……」

「なんだ、はっきりと言え」

「こ、殺さっ、ないで……っ!」


 まるで目を合わせようとしない。

 声も小さいうえにかすれ気味だ。

 だが、悲痛な叫びはたしかに届いてきた。


「あれだけ自分は負けないと言っておきながら、この結果とはな。これ以上ないほどの痴態をさらしてしまったな、リエラよ。ほかの人間どもに無様と笑われるのではないか?」


 これまで自身を犠牲にしてまで守ってきた民衆に後ろ指をさされる。そんな光景を想像したか、リエラの目がより揺れはじめる。


 あの自信過剰ぶりからしてわかるが、おそらくリエラは完全な敗北を味わったことがないのだろう。それどころか傷をつけられたことすらなさそうだ。


 そんな彼女が敗北後に待ち受ける未知の事態に恐れを感じることはなにもおかしくはない。カオスはいまも震えつづけるリエラを慰めるように、その頭を優しく撫でる。


「だが、安心しろ。俺様は優しい。これ以上、苦しみを与えることはしない」


 かすかな希望を感じ取ったか。

 リエラの目にわずかな光が戻った。

 瞬間、カオスはにやりと笑いながら告げる。


「いますぐに殺してやろう」


 これまでリエラ以上に表情の硬い人間はいなかった。だが、そんな彼女がいま、誰よりも感情をあらわにしてくれている。そう断言できるほどに落差のある表情を見せてくれた。


「いま、自分がどのような顔をしているか、わかっているか?」


 そう訊きながら、カオスは先ほど弾き飛ばした剣を影で引き寄せた。剣の腹をリエラに向け、そこに映る自身の顔を見せつける。と、リエラが信じられないとばかりに目を見開いた。


「これが……わた、くし……」

「そうお前だ。弱くて臆病な本当のお前だ」


 その瞬間、〝守護者として〟のリエラの心は壊れたようだ。


「…………死に、たく……ない」


 小さい声ながらたしかにそう口にした。


 揺さぶりはもう終わりだ。

 カオスは剣を放り捨てたのち、リエラの胸の奥底に響くようそっと囁きかける。


「ならば俺様と刻印契約を結べ。そうすればお前は死を超越した存在となる。いまもお前が感じている恐怖とは無縁の存在になれるぞ」


 揺れるリエラの瞳がついにこちらを捉えた。なによりも欲するものが対価として出され、反射的に動いてしまったのだろう。だが、ほんのわずかに理性が残っていたようだ。リエラが再び目を下向けたのち、ぼそりと呟く。


「そんなこと、できるわけが……」

「なぜだ? なぜできない?」

「わた、くしは……守護者で……みなを、守らなければ──」

「なぜ守る必要がある? お前がこれほど苦しんでいるとき、奴らはなにをしている? ただ助けが来るのをじっと待っているだけだ。お前が解決してくれるとすべてを押しつけ、ぬくぬくと生を享受しているだけだ」

「ですが……、それが使命で──」

「お前が自身に課したのか。いや、違うな。お前はそんなことをするような人間ではない。言われるがまま育ってきた。そう人形のように。そうだろう?」


 初めて目にしたときから思っていたことだ。

 リエラには芯となる意志が見られない。加えて、なに不自由なく育ってきたことがわかる甘さがある。おそらくは誰かに言われるがまま生きてきたに違いない。


 そう踏んでいたが、どうやら推察は当たったようだ。リエラが目をそらすと、ほんのわずかだが手に拳を作っていた。


 リエラの胸の奥──見える感情は揺れに揺れている。初めて出会ったときとは比べ物にならないほど色も黒く、大きくなっている。あとはもう……両手を広げて迎えてやるだけだ。


「これからお前はお前のために戦えばいい。誰のためでもない。お前が生きるために戦うのだ」

「わたくしは、わたくしのために……」

「そして俺様はその手助けをしてやれる。助けに来る気のない奴らとは違う。お前を死から救ってやれる。愛してやれる。可愛がってやれる。誰よりも、なによりもな」


 カオスは優しくそう告げながら、リエラの頭に右手を置いた。整った輪郭をなぞるように下ろしていき、掌が頬に到達した、瞬間。左手も彼女の頬に当て、ぎゅっと挟みこんだ。自然と唇が尖り、彼女の顔が不格好になる。


「リエラ・リィンズよ。もう1度言うぞ」


 今回、《聖石》を奪取することを表向きの目的としていたが、もう1つ優先度の高い目的があった。それを果たすときがついに訪れた。


 カオスは腹の奥底から溢れ出る昂揚を感じながら、欲望まみれの言葉を口にする。


「──俺様のモノになれ」


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