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   第十二話  状態異常の回復




    ◆   ◆   ◆   ◆   ◆



「さてと。神の眷属。僕達三人相手にどう闘う?」

「そうだ!俺達は強いぞ!」

「ハヒヒヒ……」


「そうかよ…」



 うんざり。の、一言。内戦で軍の側として戦ったばかりだというのに。今度は個人同士の立場で。俺としては面倒くさいの限り。


 でも、そんなこと言ってられない状況。


 左足のふくらはぎに矢が刺さって酔ったような状態で、意識がもうろうとして平衡感覚が狂っている。面倒くさいのはあるけど、そんな余裕ある言葉は口から出せない。ただ伝わる痛みに歯を食いしばって耐えているしかできない。



「さてと。僕達も二手になって行動する?」

「なるほどネ」

「賛成!」


「おい!」

「なんです?神の眷属」

「俺の承諾を、得てないから。残念、ながら二手にはなれない」

「へえ。威勢が保てるんだ」



 と、憎たらしい顔で俺を見下すように見て、不敵に笑う。

 その笑いにはただ苛つく。いや。笑いに苛つくというよりかは、その笑いで自分に苛ついてしまった。自分に劣等感を感じた。自分がどうしようもできなかったことに、ただ苛つく。



「反撃しようとしないのか?」

「誰がそうさせないようにしたんだよ…」

「確かに!僕達がやった。でも君には効かないと、うまくいくはずがないと。思ってた。でも。報告通りだった。失望した!ペンダントなしでは、雑魚同然の人間のようだ!!」

「……っ!」



 幹部の兄弟の弟は、そう言って再び腹に蹴りを入れる。足の先端が深くめり込んで、衝撃から来る痛さは尋常じゃない。

 本当は今すぐにでも抵抗したいが、この状態異常をどうにかしない限りは抵抗すら不可能。口ではなんとか抵抗できるけど。



「さてと…」

「オイ。あんま時間掛けてルト、私の特製の麻酔ガ、切れちゃうヨ」

「はあ。もうか?もう一発できないの?」

「んな過度にヤルと死ぬヨ」

「そうか。じゃあもう、あとは遊ぶしかないな」

「よっし!遊びの時間だあ――!」



 グロマの名前も知らない連中は、遊びと言って突然指を鳴らしたりして興奮状態のようになってこちらを見つめる。こいつらが言う遊びって…。



「さあ、さあ!遊びの時間だあ!僕達の戦闘欲求満たしてくれよ!」

「肉!血!触りたい!」

「私は汚らしい顔が見られれバ、それでオッケー」



 俺は状態異常の回復をそうにか試みたいが、この場に適した方法が一切思い浮かばない。治癒魔法系統は直接、魔法を自分に使うことができない。魔法を使う者の代償と言われているが、解明には三桁の年数が掛かると言われている。

 その謎多き代物をいかにして使うか。

 最初は直接で使えないのなら魔法陣を地面に発動させて罠魔法の要領で行うのも手だが、一手間多いうえに無防備になる。適切な方法とは言えない。



「じゃあ。早速、一発!」



 そう言って俺の顔を蹴り始め、それを発端に腹や背中からも殴られ始め宙に飛ばされて後方に吹き飛ばされる。

 さらに、たたみかけるようにして空中で兄弟の連続攻撃。まともに受けて吐血。どんどん後方に吹き飛ばされていく。

 常に視界に動きがあって残像しか見えない。蹴られている感覚はわかるが、それしかわからない。強化魔法は飛行魔法に使っただけで、身体強化目的でイメージして魔法を発動させたわけでもないので、景色の動きにすらついていけてない。



「これだとただのイジメだけどー?反撃しないのかなー?…オラ!」



 なんとも性根がひん曲がっているようで。と、ふと思った瞬間に宙に浮いていた体がグロマの兄弟の弟によって、地面に体を押さえ付けられて引きずられる始末。



「や、野郎が…」

「ハハ。その野郎にやられる様はどうだ?神の眷属!」



 そして再び蹴られて空中を舞って、兄のほうの力強い攻撃も受けてさらに吹き飛ばされる。もうどのくらい飛ばされているのかもわからない。これだけで山道の入り口まで行ってしまうのではないか…。



「状態異常…治癒魔法…」



 俺はただ考えた。


 治癒魔法の直接は不可能。間接だと手間が多くて無防備。正直言って直接できない代償は大きいと言える。



「ハハ。神の眷属!僕達は君に絶望を与えてやるよ。あくまでも僕達はお遊びだけどな!」

「くっそ…与えれてたまる、か……」


 と、言っている最中に一筋の光のような希望ある方法が一瞬で頭に浮かんだ。その確実性は神界で使ったものでよく知っていた。


 思い出した。調子づいた弟が俺にヒントを与えちまった。そう()()()。もうこれが答えそのものだった。



「おい」

「なんだよ。神の眷属!」

「ありがとな」

「はあ?」



 俺は嫌味を籠めた感謝を伝えて、自分の体に広げた手を添えるようにして置く。


 俺は魔法の種類で与える意味を持つものを忘れていた。これは実質、魔法を使う者の代償を無視することができる。魔法を使う者はなんでもできる。なんてことを証明したいのかもしれない。魔法の欠点を魔法で補う。

 言葉として『与える』ことを意味する。


 俺は心の内で言葉通りの詠唱を行う。


 

【付与魔法準備・展開、付与魔法と効果内容・治癒魔法で身体の状態異常回復、以上・付与魔法発動】



 グロマの三人組に気付かれることなく自分の体に魔法を付与する。

 その刹那、頭痛や平衡感覚などの状態異常の回復が始まっていき、一秒程度で治療完了したようで体が軽くなる。矢が刺さっている左足の痛みはあるがさっきの状態に比べれば及第点となる。



「さて!俺の反撃だ!」

「なに?!」

「これは?!」

「チッ。治したカ…」


 兄妹揃って俺の急な正常っぷりに驚きの顔を見せて、不気味な女は舌打ちをして再び弓を構え始めた。

 さっきの状態異常は矢を食らったときから始まった。原因は矢。刺さったときの痛みは味わいたくはないが、それ以外の状態異常は一秒程度で治療完了となる。神界で見た魔法書のように付与魔法は永久的と言っても過言ではないほどの持続ができる。魔力が周りにあるか限り。



「再び酔エ!」

「うっさい!」



 俺は宙に浮いている足を地面に着地させて勢いを殺す。矢が刺さっている左足を右足で少しカバーした状態にして着地したので、宙を舞う勢いを殺すのは難しく、ふらつきながらもなんとか勢いを半減以上させたことを感覚で確認してそのまま身体強化の能力を発動させる。その(かん)は、矢の心配があったが勢いを殺さす際に、ふらついたその瞬間で矢は俺の真横を通過したので逃れることに成功した。



「うっし!これで!」


「面倒なことしてくれるよ」

「そうだ!ねじ伏せてやる!」



 俺は勢いを半減以上させて吹き飛ばされなくなると、それに反応したグロマの兄弟はそのままこちらに向かってきて弓使いの不気味な女は一旦停止して、なにや手元を動かし始めた。


 俺は収納魔法を発動させて神剣を取り出した。


「お前らが手加減しようが俺は本気で応戦する!自己防衛だ!」

「チッ、兄さん。アレをできる?」

「おう!弟よ!」



 兄弟はなにか使用としていたがその隙に距離を詰めて、剣を上に振りかざして攻撃を仕掛ける。



「好都合!」

「なっ…!」



 腕を引いて構える兄。俺は振りかざしたまま。



「【鋼鉄固め(フル・アーマー)】」



 そう言って引いていた拳を俺の腹目掛けて振るった。それにはやむを得ず振りかざしていた剣で対抗。俺は腕を切り落とすことを覚悟して剣を振り下ろした。


 振るった拳は当然ながら剣と接触するのだが、手や腕は斬れずに弾いた形となってお互い通り過ぎる。

 弾いたときに聞こえた音はまるで金属のような音だった。



「鋼鉄化?」

「おい!」

「え……?」



 兄の不可解な能力に気を取られていると、目の前には弓を構えたあの不気味な女がいた。



「吹き飛ベヤ!」

「え……?」



 弓から放たれた矢。真正面から飛んでくる。驚きはしたが弓を構えていた時点で反射で剣を振り下ろして、その同タイミングで矢と接触。

 かと思いきや、そのまま剣をすり抜けて腹に入って最終的に消滅したようだった。



 そしてその矢に驚くなり、矢が消滅した腹辺りに空気圧のようなものが発生して一瞬にして後方へ吹き飛ばされる。

 空気圧の威力にまたしても吐血。今までの量以上の血が噴き出した。


 その際も吹き飛ばされる勢いは止まらず木々にぶつかっても勢いが衰える様子がなく、まるで操られているようだった。


 このままだと…山道の入り口に、来ちまう…。


 マズい。


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