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   第十一話  勝利への道筋

追記:文章修正等に先立って技名を変更しました。




    ◆   ◆   ◆   ◆   ◆



 耳に絶え間なく聞こえる風の音。必死になって辺りを見渡す。



「早く見つけないと…みんなのために」



 獣人の女の子捜索は辻島優花に託された。先程から彼女も探し続けていたが手がかりすら見つかっていない状況。優花はどうしたものかと悩みつつも、あちこちを捜索する。


 ジークから伝えられた情報には女の子がどうなっているかは伝えられていない。得られなかった情報なのだから仕方のない話だが、今の状況からすれば情報も少ない中で探すのは困難を極めた。

 今や捜索をできるのは彼女だけとなってしまっている。



「とりあえず、山道の入り口付近に戻らないと」



 彼女は捜索するために山道入り口付近に戻る。その(かん)で、彼女は確実に見つけることのできる手段を考えていた。そもそも彼女は女の子が見つからないことに疑問を抱いていた。


 山道の入り口付近という特定された狭い範囲内のみでの捜索。女の子が移動している可能性もあるが、女の子の近くにいた数人の人間。彼女と仁也は三人のグロマの幹部と知った。

 グロマの用意周到さは優花も知っている。だからこそ。グロマの連中にとって女の子の役割というのを考えると明らかにおびき寄せるための人質でありエサ。


 そのエサを自由にさせるなどグロマの立場になってみるとあり得ない話だと言える。だからこそ、今も山道の入り口付近にいるのは確実。

 だが、その人質を簡単に見つられないようにして、まるでいないかのようにして捜索を難航させる。という可能性を彼女は考えていた。


 いないのではなく、女の子は見つからないように隠れされている。


 まとめると、女の子は今も山道付近にいて人質のようになっていて自由の身ではなく、捜索が難航するように施されている。



「人質としてどう捕らえられてるかわからないけど…。大丈夫かな…」



 優花は一つの方法を思いついていたが、女の子がどのように捕まっている状態かを気にしていた。でなければできないということのようだ。


 この森はロックウルフと同様に様々な魔獣・魔物が蔓延っている可能性はけして否定できない。

 だからこそ優花は、人質でもグロマはエサとして利用するために、魔獣・魔物に襲われないようにとなにか施してあると考えたようだ。

 優花達に見つからないようにしているのと同時に魔獣・魔物対策として成立するかもしれないが、グロマは人質が気になるような状態にはしない。簡単に目に付かない場所でなおかつ、見つけられても簡単には開放されないようにしてある可能性も、彼女は考えた。



「きっと。大丈夫。グロマの連中は用意周到。それを逆手に…」



 あくまで彼女の考え。だが、けして可能性がないわけでもない。



「もう。やるしかない。みんなのためにも」



 彼女は手元にある剣を握り締める。どうやら複数同時攻撃の特異能力(シンギュラースキル)の【星屑(スターダスト)】を使うようだ。

 さらに……――。



「【強化魔法発動  インクリース】」



 優花は魔法陣を発動させて自らを対象として発動。身体強化を完了させる。

 飛行魔法には使っていたが彼女自身には発動されていなかった。これにより強化されたわけだが、彼女はただ身体を強化しただけではなく、さらに対象を細かくして器官に限定。対象は聴覚。

 そして再び発動させて聴覚を強化。



「これで、聞こえる」



 優花はそう言うとそのまま手元の剣を横に振りかざす。

 そして…――。



「【星屑(スターダスト)】」



 そう言って剣を横に振り下ろす。剣からは無数の光を纏った弾が放たれた。内戦のときより弾の数が増えて山道の入り口付近に弾が降下していく。



「お願い!」



 弾は徐々に降下していくと木々の中に姿を消していく。優花は黙り込んで耳を澄ます。


 そしてその二秒後に、強化された耳に響いた金属がぶつかったような鈍い音。



「あそこに…!」



 優花はそう言い放つとすぐに飛行魔法で音の鳴ったという場所に向かった。

 高度を少しずつ下げて降下していく。



 彼女の目に徐々にはっきりと映るのは、鼠色の小さな檻だった。



    ◆   ◆   ◆   ◆   ◆



「サリス!突然ロックウルフが…」

「サリス。あの巨大な魔獣。ロックウルフではないですよ?完全に違う魔獣になってます!」

「わかってる!今から指示する。戦闘態勢に!」

「え?!」

「は、はい!」



 サリスはボスのロックウウルフの変貌を目の当たりにしてから、すぐさま後退したようでジークとクラリシアがいるところまで来て、三人で倒すようだがサリスにこの巨大なロックウルフ、いや超巨大な謎の魔獣は、倒せるのだろうか。



「サリス!あれ十五メートル近くあるんじゃない?」

「そんなのわかんないよ!」



 超巨大な魔獣の鼻息。その鼻息の大きさは魔獣そのものの大きさと強さを知らしめるようだった。魔獣の容姿の原型はウルフそのもの。しかしながら、禍々しいその姿は狂乱を表しているようだった。体の模様は必要以上に多色な模様があって毒々しさを感じる。

 さらに先程のように対話しようとする落ち着いた様子が見られず、サリス達を威嚇して顔を険しくしている。理性は完全に失っている様子だった。辺りの広範囲の魔力は超巨大な目の前の魔獣に、集まっていく。まさしく狂乱だった。



「倒せます?」

「本当は無理に倒さず追い払ってもいいけど。この大きさの魔獣を放置するのはどうかと思うのね」

「だよね。災害レベルの大きさだよ」

「うん。だから、今から言う戦闘をしてほしいの」



 サリスはジークとサリスに指示を送る。



「まず、クラリシアとジークが二人で私が一人で行動するのは変わらない」

「うん」

「はい」


「それで質問だけど、ジークはまだ特異能力(シンギュラースキル)使える?」

「え?あーあと一回くらいなら」

「オッケー。だったらジークはその一回を魔獣に向けて使って」

「え?調べるの?」


「うん。分析もできるんでしょ?」

「確かにそうだけど。クラリシアとサリスは?」

「クラリシアはジークの補助。そして危険がないか周囲の確認。私はジークが特異能力(シンギュラースキル)を使う前に、あの魔獣を私の特異能力(シンギュラースキル)で抑え込む。そのあとの行動は分析結果次第になる」


「てことは…半分は計画的で半分はその場任せってことか…。大丈夫?」

「大丈夫。そこまで私達は愚かじゃない」


 彼女達は超巨大な魔獣を前に屈することなく、強い意思に従って行動を開始する。

 

「行くよ!」

「うん!」

「はい!」



 サリスは一目散に走りガントレットを付けた状態で、超巨大な魔獣の周りをアクロバティックに飛び回って一周する。そのとき彼女は、常にガントレットの手のひら部分を地面に接触させて飛び回っていた。接触の際には地面の中になにかが埋め込まれる。

 超巨大な魔獣はサリスの動きに最初は反応していたが、サリスが周りを走り出した途端から魔獣の目にはサリスの姿が消えて鈍い動きで探す。


 そのころにはすでに一周したサリスは、超巨大な魔獣に向かって右手を大きく広げて特異能力(シンギュラースキル)を発動させる。



「【鎖の拘束(チェーンバインド)】」



 魔獣の周辺の地面から、鎖で繋がれた先端が鋭利な筒状の小型ロケットが飛び出して、そのまま魔獣の肉体に深く突き刺さって傷口から血が溢れ出す。

 魔獣はその後、ここから抜け出すために暴れ回ろうとするが鎖で見事に抑え付けられている。



 そしてその(かん)で、ジークは最後になるであろう特異能力(シンギュラースキル)を発動させる。



「【魔力探知(マジカルサーチ)】」



 彼の脳裏に入ってくる情報の数々。それにより、ジークがサリスに指示をする。



「サリス!魔獣の背骨を粉々に粉砕して!そのあとに魔力遮断ができる罠と火炎放射の罠を!」

「了解!」



 サリスは罠を発動させたなり、そのままジークの指示通り魔獣の脊髄がある背に乗って、首筋から下に向かって体を回転させるようにガントレットを付けた拳で、背骨がある背筋を無造作に殴っていく。


「絶対に勝つッ!」


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