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最終章 エピローグ

「うあ! やっぱり畑の空気は旨いな!」

「何よそれ」


 俺は牢獄から出されてすぐに自らの畑に向かった。

 なんと、驚くことにシルバー学長は特に変わることなく学長の座に収まっている。

 しかし今の彼の中にはもう勇者の魂はない。つまり、これから彼がどんな風になるかはよくはわからないということだ。

 でも、今のところは大丈夫そうだった。


 ―まあ、これも神の仕業ってことかな?


 まったく、俺をこんなところに送っておいて何のお礼も寄越さないとは、しみったれた神だ。


「ねえねえ」

「なんだ?」


 シャルが休憩している俺に近づいてくる。

 そして隣に腰を下ろした。

 さわやかな匂いが俺の鼻腔に掛かる。


「勇者以外にもやったことあるのよね?」

「まあな」

「なら魔王もあるの?」

「ん? ああ、3回くらいだったかな」

「じゃあさ、私の畏怖の力も使えるの?」

「ああ、まあな。でも加護と畏怖は併用できない」

「ふーん。じゃあさ、私と戦ったとき、本気じゃなかったの?」

「ああ、その話か……」


 俺は今回のことで、シャルに自分の秘密について話した。

 実は俺が、本当の自分が生まれた世界で起こした罪のせいで、神から異世界を何度も転生させられて、いろいろな役目をやらされてきたということ、そしてその都度魂にその世界で鍛えた力が蓄積されて、いまやそれが百以上の世界として俺の魂に存在していることをだ。


「まあ、そうだな。全力は出してない。だけど、全力みたいなもんだったぞ? 魔王城にたどり着くまで大分力使ったし、お前とも最後は軽く十日くらいは戦っただろう? 最後はジリ貧だったわけだからな」

「それはそうだけど、全部のリミットをはずしてやればよかったんじゃないの?」

「そうしたいのも山々だったけど、世界との相性とかいろいろあるんだよ。だから、まあ一つの世界で使えるリミットは50が限度だな」

「私との戦闘で使ったのは?」

「32……」

「ほらあ! 手加減してたんじゃない!!」

「違うって!」


 シャルは俺の肩をばしばしと叩く。


 ―いやいや痛いって、お前の一撃は軽く地割れを起こすレベルなんだから! いつの日かの痛くないやつはどうしたんだよ!


「体調とかいろいろあって、あのときはあれが精一杯だったんだよ!」

「なら、今はもっと出せるの?」


 シャルが俺の目を覗き込むようにして見てくる。

 これは本当のことを言わないと、後で痛い目を見るタイプのやつだ。そう俺は思った。

 はあ、やれやれ……。


「まあ、今回ので得たこともあるから、60近くは出せるんじゃないか?」

「なら!」


 シャルは勢いよく立ち上がった。


「今からそのリミット60で私と戦いましょう! ヒカルの全力みてみたい!」


 ―なんか、最後、飲み会でのコールみたいなテンポじゃないか。


「あほか! 俺とお前が全力でやったら、世界が滅ぶわ!」

「ええ! みたい! みてみたい!」

「うるせえ! この戦闘発情期!!」

「うわあ! またそんなこと言ったわね!! 取り消しなさい!」

「やだね! この戦闘用サルが!」

「ムキーーーー!」

「やっぱサルじゃねえか!」


 そのとき、畑の近くで馬車が止まるのが見えた。

 ユリスたちだ。


「何よ。あんたたち、二人で鬼ごっこでもしてるわけ?」

「してねえわ!」

「お嬢様も混ざりたいのですか?」

「そ、そんなことなな、無いわよ?」

「よし、全員揃ったな。じゃあ畑作業の再開だ! シャル! もういいだろ!」


 俺はシャルの頭を片手で抑えながら、もう一方の手を天に向かって振り上げた。

 まだ、俺がこの世界で死なないってことは、この世界でやることがあるってことなんだろう。


 ―うわあ、面倒くせえよ……。


 こうして、俺たちの怒号の春が終わりを告げた。

 これからさらにこの聖錬学園での三年間で俺たちは数々の偉業を成し遂げることになるのだが、それは決して俺がそうしたかったわけでなく。すべてこの愛しの畑のためであったことをここで言っておく。


「ほっほほ、良い組み合わせだったみたいじゃな。これからも頼むぞ、二人の英雄よ。この世界の命運は、うぬらに託されておるのだからな」


最終章までありがとうございました!!

続きは、連載のほうで書きます!!

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