人工物。
足を付けて居る。地面を踏み付けてみる。
右を向いて視る。左を向いて視る。
辺りを見回して視る。
じっくりと私が居る世界を。改めて注意深く。視てみる。
そこは人の手によって彩られた。物体であり。道であり。
家々が立ち並ぶ通りを歩いてみても。そこはやはり、人と言う生物が手を加えた。
物体の塊である。
不思議と、何も思わなかったけど。
私はこの世界で、誰かが手を加え築き上げて来た世界の中で。風情の中で。
普通に息をし。御飯を食べ。眠り。用を足し。人と交じり。新たな人を生産して。
そうして何時も何時も何かの仕様を定められて居るかの様な。
見えない何かと。気付いて居る仕様と図式の中で。
そうやって生きて居る。特に。特に、気にする様な事でも無いとは思う。
実際、困る訳でも無いし。その事を改めて考えたからと言って、何か得る物が有る訳でもなし。
だけど、だけど、だけど。
私は何故か、その事を物心付いた時から考えて居る。
私は……私は。私は、この世界が好き。誰かがそこに居たから、作り上げてくれたから。
この世界が有ると。理解出来るから。
私は……私は。私は、この世界が嫌い。何時も何時も私は独りだと。実感させられるから。
だって、何時も誰かと触れ合い。会話し。相手を察しながらも。本音を出さず、相手をどこか評価して。見下ろそうとして。塞ごうとして。邪魔をしようとして。そんな計算と打算が混じった、利益的な日常が。どうしても慣れないから。
私は……私は。私は、この世界を何となく惰性の様な何かの思考で。どうでも良いと思って居る。
誰かが定めた方式や姿。図や仕組み。路や普遍的な察する様な配慮や知識。
それらを知って居れば、何となく生きる事が出来るから。何とも無しに無難に選択をして行けば。
何も問題無しに過ごす事が可能だから。
どうでも良い。そう。……そう。思う事も考える事も出来る。
人と程良く関わり、程良く明るくして、程良く後ろ暗さを保ち、程良く時間を消費し。働いて、対価としてお金を得て。自分の欲を消化して。
そうして誰か、誰か人と言う郡体が作り上げて来た人工物の中で。
何か戸惑いながら、だけれど皆がそうして生きて居るんだから間違いじゃないと思わされて考えさせられて。
教育とか人の教えとか、そうした見えない人工物から手解きみたいな諭しと言い付けを守って。
この人工物だらけの世界を生きて居る。
……良いのか? 私は。
本当に、良いのか? ……何か。何か奥底で、ちょっとした疑問や揺さぶってきて苦しませる何か。殺し切れて居ない何か。
纏めてしまえば、青臭くて幼い。子供染みた思考と感情。そうやって普遍的な、そこらに居る誰か達と同じ様に成れない。
愚かで馬鹿な己を何時も理解し。実感してしまう。
この世界、人工物の世界は。何時も何かを、狂ってしまう要素を秘めた誰かを。
見えない路へ、藻掻いて足掻いて溺れて貶められて苦しまされて死にそうな目に遭わそうとし。
そして……歩いても歩いても、どこか目眩がしそうな程。息苦しい、忙しい(せわしい)世界なのだと。思い知らされる。
でも、でも。ここが、ここが。私が産まれた、連綿とした息吹を私自身が出して居る。
確かな確かな。私の生きて居る世界。
どうやっても私は、其処から出る事が出来ないし。
ここから出てしまえば、私は死に絶えるだろうと。自身が分かって居る。
楽園の様な監獄の様な。二心の面持ちを匂わせる。
寒々とした感じと暖かさを伴わせた、私の住まう世界。
笑われても、蔑みを受けても。
私は此処でしか、生き方を知らない。出る事も出来ない。
そんな世界。
……歩く。走る。
横断歩道の前で、足を止める。
今は赤信号。赤い印で足を止め、今迄普段生きて居る世界の事を考えて居た。
考えて居た事は毎回毎回、何かの折に必ず私自身の中から浮かび上がって来る物で有る。
今迄思考して来た事を改めて慮ってみると、否定的過ぎたり悲観的過ぎたり。
悪い面ばかりが目に付いてしまうけれど。別に、本当にそのまま悪い事ばかりで有る訳でも無いし。
実際は何事も無く、普通に過ぎ去って行く様な。
動きも何も無い、平穏な世界では有る。
只其処の世界の一部を切り取って、形としてこうして表に出して見ると。
そんな様な言葉や言い換え、思考等が毎度の様に出て来てしまうと言うだけ。
暖かいだの寒々しいだの、そんなのは人が勝手に決めて居るだけで。
人工物と言うのは実は凄く便利なモノで有るし。人に時間や安全をくれる。
有り難い結晶の集まりで有り。欠片なのだと。言える部分は有るだろう。
只、そうやって一つ一つ気にして見ると。
己自身がそう言う風に言い表してしまうと言うだけで。
……ふぅ。さてと、今日もこの世界で寝よう。
人工物の塊であるこの世界の家へと。足を向けて。
そうして私は今迄の思考に切りを付けて翔て行く。
人工物の世界の中で……
自分自身が普段居る場所や生活空間だったりとか、色々な物に目を向けて見ると。
誰かの手が加えられて居る事が多い世界の中で日々を過ごしてるんだなぁ……と。思った事から、この題材を思い付き認めてみました。
さて……と。ここまでお読み下さった方。ありがとうございました。
それではまた、次回に。




