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転生少女の異世界のんびり生活 〜飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい〜  作者: 明里 和樹
飯屋の娘に転生した現代人が、ただ賄いを食べるだけのお話。

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2.いただきます、なのです

「いただきます」


 まずは木のコップに(そそ)がれた、ゆらゆらときらめくオレンジ色の飲み物――みかんっぽい果物の果汁を水で割って氷を入れていい感じに冷やした特製オレンジジュース――をひとくち口に含むと、口の中いっぱいに果実のこっくりとした甘さがじんわりと染み渡るように広がり、それをこくり、と飲んでのどうるおします。うーん、幸せ。


 あ、ちなみにわたし、転生者にありがちなチートな能力はありませんでしたけど、多少は《魔法》が使えるようなので水も氷も魔法で出しました。なぜか川や井戸の水より美味しいし。なにより綺麗で安全安心(実験検証済み)。食の安全は最優先なのです。


 次は前菜代わり……というわけじゃないですけど、青々とした葉っぱと棒状にカットされたお野菜がこんもりと木の器に盛られている、昨日の朝採れたてのお野菜(賄いなので材料は基本的に残り物)で作ったサラダに手を伸ばす。最初は見た目も味もレタスっぽい葉野菜――このくだり面倒だからもうレタスでいいや――に先がフォークのように割れた木製のスプーンを突き刺……だが刺さらない! 木製だからね! 仕方ないね!


 わたしは辺りをきょろきょろと見回して誰もいない事を確認すると、エプロンのポケットから二本の棒――お箸を取り出し、こっそりと《洗浄》の魔法を掛ける。


 この世界、食器も調理器具も種類が少なく、平民が使う物なんて大抵木製か陶器製なので、すこぶる不便なのですよ。フォーク代わりの木製の先割れスプーンが簡単に刺さったりすると思います?


 そこでわたしが思い付いたのがこの――危ないからと包丁なんかの刃物はお父さんの見ている時しか使わせてもらえないので、《風》の魔法でちょちょいと形を整えて表面がつるつるになるまで研磨けんました――お箸であるのです。


 まあ、わたしには懐かしく扱いやすい代物しろものではありますが、この世界の人には「何それ?」状態なので使用はこっそりと、なのですが。


 そんなこんなで手に馴染んだお箸の感触に少し嬉しくなりながら、ほんの少々塩をまぶしてあるレタスを一枚摘まんで口の中に放り込む。新鮮で瑞々《みずみず》しいレタスの青臭い葉っぱの味とお塩のほんのりとしたしょっぱさにシャキシャキとした食感を楽しみながら、ごくんと飲み干す。うん、おいしいのです。


 そうそう、そういえば先ほど焼くか煮るかしか調理法がないって言いましたけど、あれは一応火を通しておけば安全に食べられるっていうこの世界なりの衛生管理の概念でありまして、最初に生野菜のサラダを作ったところ「生で? 食べる? 野菜を?」と真顔で言われたのは今となっては良い思い出です(遠い目)。


 なので《水系統》の魔法をちょちょいとイジれば汚れとか人に悪影響のある菌とか消せないかな? と思い、調理に都合よく改良したのがこの《洗浄》魔法なのですよ。しかも多少(しな)びた程度のお野菜なら、採れたてのようにシャッキリするというおまけ付き!


 すごいね! 魔法って! とっても便利!


 そんなわけで! とっても! 安全安心! 新鮮食感! なレタスを、今度はキュウリにくるりと巻いて器の端に盛ってあるマヨネーズに付けてぱくりと食べる。レタスとキュウリの瑞々しい野菜の味と、マヨネーズの少し酸っぱくてコクのあるこってりとした味わいが混ざり合ってとってもおいしく、ボリボリとむさぼるように食べる。うんうん、良い歯応えです。


 ちなみにこのマヨネーズもわたしのお手製ですが、卵や油といった材料はあったものの、ミキサーとかの道具がないので子供の力で上手くかき回せるかな? と、不安だったのですが、そこは身体能力を向上させる《強化》魔法を使ったら余裕でした。


 すごいね! 魔法って! とっ!(以下略)

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