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救世の闇魔法――魔王の子と光の王女――  作者: 藤原 光希
ネフェルナ一族のライナ編

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78話 幻術の魔法使い

今日も読んで頂きありがとうございます!pixivの投稿もちょくちょくしているので、そちらも目を通して下さいね!

pixiv↓

https://www.pixiv.net/users/15442111

pixivではこれからも救世の闇魔法のイメージイラストをたくさん投稿していこうと思います!

戦いが終わった頃、グリュネバルトの森は悲惨な姿に変わっていた。


 燃え広がった炎は、ノエルの魔法によってそのまま凍りついている。赤く暴れていた火は氷の中に閉じ込められ、森のあちこちで燃えたまま止まったかのような異様な景色を作っていた。


 砕けた木々、黒く焦げた幹、氷に覆われた地面。その上には、武器を手放して倒れる反対派の人間たちが無数に転がっていた。うめき声を漏らす者もいれば、もう二度と動かない者もいる。


 美しかった森は、炎と氷と血の跡に引き裂かれ、まるで悪夢の名残そのものになっていた。


 両足の骨が折れて寝たきりの反対派兵が怒鳴り声を上げる。


「まだまだ首都には人がいる。これからまだまだ大量の兵がここに乗り込んでくる!エルフはもう終わりだ!必ずここは滅びるからな!

なんせ明日からは精鋭部隊も戦いに加わる!今日の比じゃないぞ!必ずエルフを滅ぼしてやる!」


 反対派の大軍はこれからもここに押し寄せてくる。今回の攻撃では魔王軍の者はいなかった。この男の言う精鋭部隊とはもしかすると魔王軍のことかもしれない。明日からはもっと大きな戦闘になるだろう。ノクトらは覚悟していた。そしてふとノクトは妙な違和感を抱いた。普段は余り感じない妙な違和感を抱いたのだった。周囲に注意を向ける。すると静かにゆっくりと歩いてくる者がいた。


 六魔星ノクティル。ノクティルは、肩にかかるほどの黒髪をした細身の青年だった。切れ長の瞳は冷たく鋭く、感情を殆ど見せない。漆黒の六魔星のコートを静かにまとい、立っているだけで周囲の空気を張りつめさせる。まさに影のような不気味さを持つ男だった。


「久しぶりだな。」とノクティルが呟く。


ノクトは驚きの目でノクティルを見た。


「どうしてここに?」


「ヴォルツに頼まれた。どうやらエルフの幻術に苦戦していたらしい。」


ノクトは呆気に取られた。まさかここで六魔星に出会うとは思わなかった。ノクトはふと周りを見る。すると誰もいない。この世界に存在するのは自分とノクティルだけになっていた。自分が今いる場所もグリュネバルトの森から無機質で真っ白い空間にいつの間にか変わっていた。


ノクトは慌てて闇魔法を発動しようとする。しかし魔法が発動しない。ノクトは剣を抜く。すると剣が砂に変わってサラサラと崩れ出した。


「まさか。ここで俺は死んでしまうのか‥‥」


「ノクト。どうして魔王軍に反発する。」


「この世から理不尽な暴力をなくしたいからだ。」


「ノクトが魔王軍に振るう暴力は許されるのか?」


「それは許されるはずだ。」


「どうして?」とノクティルが尋ねる。ノクトは視線を逸らさずにじっと目の前にいる男を睨み続けた。


「これは意味のある暴力だからだ。」


「意味のある暴力とはなんだ?」


「それは誰かを助けるための暴力だからだ。」


「魔王軍だってそうだろう。自分が戦わないと自分や他の隊員も殺されてしまう。だから戦うんだ。」


「何が言いたいんだ?」とノクトが尋ねる。


「ノクト。どうしてお前の父であるバルかディアス様が世界征服をしようとしたのか知っているか?」


 ノクトは首を振った。そんな話を父としたこともなかった。


「バルカディアス様はただ私利私欲のために世界征服を企んだわけではない。そこにはちゃんと思想がある。


お前の父も同じだ。この世から暴力をなくそうとしたんだ。」


「意味が分からない。魔王軍が暴力を無くすためだって?よくそんな訳の分からないことが言えるな!」


 怒りに任せて叫ぶノクトを見て、ノクティルをうっすらとした笑みを浮かべた。


「まぁ最後まで聞け。バルカディアス様は人間の根源を悪と考えた。人間は生まれる前から悪い者だと。だから人間は魔王軍が存在しないときから何度も醜い争いを繰り返してきた。

 

 人間は元々が悪。放っておくと必ず悪いことが起こる。良い人間などこの世に存在しない。このままではいつか世界は悪によって滅んでしまう。だがバルカディアス様はたった一つだけ悪を制御する術を見出した。


 それが力ある者による徹底的な支配管理だった。力ある者が世界を征服してこの世を自らの力で制御すれば、誰だって恐怖心から己の悪を表に出そうとはしない。魔王軍の役割とは絶対的な恐怖を世界中に与えて、この世から悪を完全に制御しようとすることだっだ。言うならば力による悪の支配だ。」


「そのために何の理由もなく殺されてしまう人が大勢いたっていいのか!?」


「良い未来のためなら人の命は少しの犠牲にすぎない。ノクト。お前もバルカディアス様の息子なら肝に銘じておけ。争いとは思想と思想のぶつかりで起こる。だが最後に残るのは優れた思想ではない。力ある者が抱いた思想だ。


 お前の父親ば誰よりも強かった。更には何よりも強いものを残した。魔王軍は現に最強だ。お前が1番に知っているだろう?ゼルク、グラヴィル、ネクロシア達は世界最強だ。もうこの世に彼らを倒せる人間はいない。もう世界は諦めるしかないんだ。それでもお前はまだ諦めずに旅を続けるのか?」


「ああ。当たり前だ。」


「いったいどうして?」


ノクトの胸に、これまで命を懸けて戦い、そして散っていった者たちの顔が次々と浮かんだ。


 ザルベックを守るために最後まで剣を取ったゼルマン。

 ベルナールで未来を信じて立ち上がった暁の者たち。

 誰かを守るために自らの命を燃やし尽くしたアルマン。


 他にも沢山の者を見てきた。彼らは相手がどれほどの強敵であろうと、死のリスクなど全く考えていなかった。ただそこには、大切なものを最後まで守り続けたいという決意と、自分の抱く信念を死ぬまで貫きたいという覚悟があった。もちろん皆、生きたかったはずだ。

 それでも誰かの未来のために、自分の命を差し出した。


 ノクトはその重みを思い出すたび、胸の奥が焼けるように痛んだ。

 あの死は、決して無駄にしてはならない。

 自分が立ち止まれば、あの人たちの願いまで地に落ちてしまう。


 だからこそノクトは、亡き者たちの想いを背負いながら、なおも剣を握り続けるのだ。


 「俺には守りたいものがあるからだ。」


 ノクトの決意と覚悟は大きかった。


「誰かが力で制圧しないと、どちみち世界は人間の本能によって狂う。もし魔王軍がいなくなっても、また世界には新たな力による制圧が始まる。」


「それでもいい。そのときはまた俺とは違う戦う者が出て来るはずだ。俺は全ての人間が悪だとは思わない。」


「そうか‥‥ノクト。一つだけ言いたいことがある。お前は本当に自分の意思で父親を殺したと思うか?」


 ノクトはその言葉を聞いて呆気に取られた。


「人間の決意や覚悟なんて脆い。なんせ俺ならばそれを魔法で操作できる。ノクト。お前はいつから父を殺そうと計画していたか思い出せるか?」


「いったいどういうことだ!?」


「お前は死ぬまで魔王軍の人間なんだ。さっきお前は全ての人間が悪ではないと言った。でもお前は生まれたときから悪なんだ。なんせ魔王軍だった過去は変えられない。それにお前は本当に父を殺したかったのか?人の心なんて魔法で簡単に操れる。ノクト。人の決意や覚悟は脆い。」


「ふざけるな!」とノクトは叫んだ。するとその瞬間にノクトは自分の名を叫ぶ者がいることに気づいた。そして意識は変える。自分のすぐ側にはエリシアがいた。彼女はノクトの名を叫びながら彼の肩をゆすっていたのだった。


今日も読んで頂きありがとうございました!


次回も楽しみにお待ち下さい!

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