77話 それぞれの葛藤
とうとうこの章も中盤にさしかかりました!
これからの投稿もお楽しみに待っていて下さいね!
レオニルは全てを話し終わった。全員はその話の悲惨さに黙り込むことしかできなかった。するとレオニルがその沈黙を破るように声を発した。
「ライナ。どうやって生き残ったんだ?」
「分からない。気が付けば森の外にいたの。森に戻ったときはもう誰も生き残ってなかった。しかも森の中は魔王軍だらけだったから。私は逃げるようにこの国を出た。
あのときのことは覚えているけど、途中から記憶が全くなくて。どうして自分が生き残っているのかも分からない。」
レオニルは何度も何度も頭を下げてライナに謝った。
「俺のせいだ。俺があの男に騙されたから。母も父も親戚まで殺されてしまった。ライナ。ごめん。本当にごめん。」
レオニルは頭を下げ続ける。
「俺は一族が滅ぼされたにも関わらず、魔王軍の一員として働き続けていたんだ。それが情けなくて、情けなくて、、、」
「あの砂時計のせいか‥‥」
ノクトは全てを把握しているように話し出した。
「ノクトはあれが何か分かるの?」とエリシアが尋ねる。
「ああ。あれは恐らくノクティルの幻術魔法‥‥レオニルさん。あの時計をひっくり返されるとどうなるんですか?」
レオニルの表情は恐怖に支配されたものに変わった。それは想像もしたくないほどの痛みと絶望だった。
「あの砂時計がひっくり返されると、砂が全て落ち終わるまでグラヴィルの魔法に襲われるんだ。」
レオニルの顔色がひどく悪くなる。
「僕はあの魔法に耐えられなくて、魔王軍の言いなりになってしまった。」
絶対的な暴力がレオニルを支配していた。その圧力にはどんな理性も正常を保てない。それほどにノクティルの魔法は強力だった。
「あの砂時計はきっと強力な魔力でないと壊せない。ノクティルは魔王軍の中でもナンバー2を争う魔法使いだ。実力はグラヴィルと同等。恐らく村が襲われた日、グラヴィルの隣にいたのはノクティル。きっと突然に現れた巨壁は幻術だ。」
「どうして君はそんなにも魔王軍のことに詳しいんだ?」
レオニルの質問に場の空気が静まり返った。ライナが話を逸らそうとする。しかしノクトは真実を話した。
「俺は元魔王軍で魔王の子なんだ。」
その瞬間にレオニルの表情が変わった。
「ライナ‥‥どうして魔王の息子なんかと仲良くしてるんだ‥‥」
少しの沈黙の後にレオニルがノクトの胸ぐらを掴んで怒鳴り声を上げた。
「お前の親父のせいでライナの家族が殺されんだ!お前はどんな気持ちで俺の妹に接してるんだ??」
レオニルがノクトの頬をぶつ。ノクトはあえて避けなかった。そしてまた一発。また一発とレオニルが叫びながら頬を殴った。
「お兄ちゃんやめて!」
「ライナ!こいつは魔王の息子なんだぞ!?どうしてこいつのことをかばうんだ!?」
「ノクトは確かに魔王の子だよ。でもノクトは優しくて良い人だから!」
「そんなの信用できるか!元々魔王軍にも所属していたんだろう!?人だって何人も殺してきてるはずだ!ライナ!ライナは騙されてるんだ!俺と一緒の末路を辿って欲しくない。目を覚ましてくれ。」
「お兄ちゃんだって今、魔王軍の下にいるんでしょ!?」
ライナの一言でレオニルは黙り込んでしまった。
「誰にだって自分ではどうしようもない運命がある。アタシやお兄ちゃんが1番に分かるでしょ?
ノクトも同じだよ。どうしようもない運命があったの。でもノクトは今、その運命と向き合ってちゃんと戦ってる。」
レオニルは完全に沈黙した。ライナの言葉を聞いて、もう何も言うことがなくなってしまった。レオニルは「ごめん」とだけ呟いて足元を見た。
「いいんです。魔王軍だった俺の過去は変わらないんです。でも約束させて下さい。必ずヴォルツを倒してこの国を救いますから。」
その時だった。セレフィナが慌てた顔をして部屋に入ってきた。
「反対派がエルフの森域に侵入してきたわ。」
エルフ排斥を掲げる反対派。魔王軍がネフェルナ一族の惨殺劇をエルフのせいにしたので、エルフは多くの国民から厭われた。それでも森の守護者としてエルフのことを信用し続ける者もいた。エルフを排斥するために森を滅ぼそうとする反対派、エルフを未だ信じ続けて森と共存を守ろうとする守護派。これらの抗争は続いていたが、魔王軍が後ろにつく反対派が勢力を伸ばして、守護派は殆どいなくなってしまった。
セレフィナの母もまさかの事態に困惑した。
「いったい誰がエルフの幻術結界を破ったというの。今まで結界が破られたことなどは一度もなかったわ。」
ノクト達は慌てて外に出た。するとたくさんの反対派がエルフの森に入ってきていた。その数は計り知れないものだった。
大勢の反対派が統領の館に傾れ込んでくる。反対派の軍勢は、もはや一目で数え切れる規模ではなかった。森域へなだれ込んできたその数は、1000人を優に超えていた。反対派の者はエルフ達に殺意を抱いて、殺傷用の武器を全員が持っていた。
反対派の群衆のあちこちで、松明の火が揺れていた。剣や斧だけじゃない。油壺や火種まで抱えた者もいる。彼らはただ侵入してきたのではない。森ごと焼き払うつもりで来ていた。
グリュネバルトの森が炎上する。しかしノエルがすぐさま森を雪景色に変えた。ノクトは剣を握って戦おうとするが、人数が多すぎるのでとうとう闇魔法を発動した。反対派の者が次々と倒れていく。エリシアもそれに続くが、ノクトを除く者は違和感を抱いていた。なんせ魔王軍でない者を傷つけることはこれまで殆どなかった。
自分たちが戦っているのは魔王軍ではない。国民だ。自分たちは魔王軍ではない人間を殺してしまうかもしれない。この違和感に苦しみながら全員は自分たちとエルフ、グリュネバルトの森を守るために戦ったのだった。
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