62話 4人の決意
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冥澄の女神の攻撃によって爆風が起こった。砂嵐が舞う。ノクト以外の者はケリをつけれたと思っていた。しかしノクトはそう思わなかった。
砂嵐が止む。するとそこには無傷のグラヴィルが立っていた。
「素晴らしい魔法だ。さすがヴァルグランを破ったわけだ。でもまだまだ完成していない。2人の心がまだ通じ合ってないようだね。
まあ、それもそうか。勇者側の人間と魔王側の人間が分かり合えるわけないんだ。余りにも育ってきた環境が違いすぎる。だからノクトいつでも帰ってきていいんだよ。僕はいつでも可愛い弟分のことを待っているからね。」
「黙れ!」とノクトが叫んだ。そして更なる上級魔法をエリシアと共に発動する。
「冥澄輪葬・虚空輪墓」
ヴァルグランを破った巨大な境界輪が空から落ちてくる。そしてグラヴィルに降りかかった。グラヴィル境界輪に向けて手のひらをかざした。すると手のひらに黒紫色の塊が宿る。その塊はグルグルと回転して徐々に大きくなる。そしてグラヴィルは大きくなった重力の塊を境界輪に向けて投げやった。
お互いの魔法が衝突する。そして巨大な境界輪は呆気もなく消えてしまった。するとグラヴィルが魔法を発動する。ノクトらの上空に巨大な重力の塊が現れてゆっくりと落ちる。
ノエルが防御魔法を発動するが、氷の盾もすぐに破れる。全員が魔法を使ってその球体を止めようとするが、グラヴィルの魔法は全く持って動きを止めなかった。
「駄目だ。助からない。」
ノクトが絶望した。ここまでの力の差を感じたのは久々だった。グラヴィルの魔法は彼らを押しつぶすかと思われた。だが衝突の瞬間に魔法は消えた。
「ははっ。悪い冗談だったねノクト。僕は君を生かしておいてあげるよ。でも覚えておいて欲しい。君たちの命は僕らの握ってるってことを。殺そうと思えばいつでも殺せるんだからね。」
グラヴィルは微笑んで彼らを見た。
「もし君たちがそれでも魔王軍を追うならば、君たちが最後に戦うのはゼルクじゃない。きっと僕だよ。それまで楽しみに僕は待っているよ。」
グラヴィルはその言葉を残すとホウキに跨った。誰も彼を止めようとはしなかった。
「ノクト。次会うときまでに考えておいてよ。君に本当に必要なのは僕さ。君の力だけでは何もなし得ることなんてできないからさ。それでも魔王軍を滅ぼすと言うなら、僕が最後の相手になってあげるよ。」
グラヴィルはそう言うと箒に乗って飛んでいった。彼は上空で独り言を呟く。
「あの氷属性の男から奇妙なマナを感じた。あれはまさか‥‥‥」
グラヴィルは笑った。
「魔王の子に勇者ルシエルの妹。更にはネフェルナ一族の生き残りとセラフィーヌに似た氷属性のマナを持つ魔法使い。なんて面白いパーティーなんだ。これは面白いことになる。」
グラヴィルは何故だか分からない喜びを胸にして、魔王城に帰って行ったのだった。
グラヴィルが去った後、ノクトらは一言も言葉を発せずにいた。そして沈黙を破るようにしてライナが声を上げて泣いた。ノクトはライナが泣くところを初めて見て、彼女にどのような言葉をかけたらいいのかが分からなかった。そしてエリシアを頼るように見る。するとエリシアも静かに泣いていた。
ノクトは2人に何か言葉をかけたいが、肝心な言葉が見つからなかった。魔王軍を脱退してから今に至るまで、魔王軍に大切なものを奪われて悲しむ人たちを色んな国で見てきた。ザルベックの国葬や暁が眠る墓標。多くの者が魔王軍による理不尽な暴力に悲しんでいた。しかし実はもっと身近にいたのだ。ライナとエリシアも魔王軍に全てを奪われた者たちだった。
グラヴィルがライナの一族を全滅させた。グラヴィルがエリシアの兄である勇者ルシエルを殺した。ノクトとグラヴィルは魔王軍の中でも先輩後輩の長い付き合いだった。よく一緒に任務もこなした。だからこそ自分自身がとてつもなく憎らしくなったのだった。
(俺には皆んなと旅をする資格なんてない‥‥)
皆んなの気持ちが沈みかえっていた。するとふとたくさんの雪の妖精が空から舞い降りてきた。
ふわふわとした雪の妖精たちは、手のひらに乗るほど小さい。まるい体は淡い白と水色でできていて、綿毛みたいに軽く宙を漂う。羽はないのに、降る雪がそのまま命を持ったみたいに静かに舞っていた。
目はつぶらで優しく、近くにいるだけで胸の奥の痛みが少しずつほどけていく。妖精たちは傷ついた人の周りをくるくる回りながら、柔らかな雪の光をこぼして、心のひび割れをそっと埋めていく。
「ごめんね。こんなことしかできないけれど。」
ノエルの魔法でライナとエリシア、ノクトの心は何だかポカポカと温かくなったような気がした。
「ありがとうノエル。この魔法は凄いね。人を幸せな気持ちにする魔法なんて聞いたことがないよ。」
ライナがいつも通りの笑顔になった。
「笑ってくれて嬉しい。やっぱりライナはその笑顔じゃないと。」
ノエルの魔法のおかげでパーティー全体に活気が蘇った。
「ノエルがいなければ今頃どうなってたことかしら。ありがとうノエル。」
エリシアも気分が良くなったようだった。だがノクトだけは心にある鉛のような気持ちを除けることができなかった。雪の妖精たちも困った顔をしてノクトの周りを漂う。ノクトは雪の妖精に悲しそうな目で微笑んで「ありがとう」を伝えたのだった。
ライナがみんなに言う。
「あたしフェルナ村に行きたい。そこで真実を確かめたいの。あたしの一族は魔王軍によって滅ぼされた。でもそれがあたしのいとこのお兄さんが関係していたってさっき聞いた。だからお兄さんに会ってちゃんと確かめたいの。」
「ええ。そうね。そこに六魔星もいるみたいだし。粛清してやりましょう。」
「ノクトはフェルナ村にいる六魔星は知っているの?」とノエルが尋ねた。
「ああ。知ってるよ。爆発魔法の使い手だ。六魔星の中では1番戦いやすい相手だと思う。」
「六魔星の中にも強い弱いがあるんだね。」
「ああ。1番強いのは恐らくさっきのグラヴィルだと思う。その次はノクティルかネクロシア。その下にセラフィーヌかな。ヴァルグランと一緒くらいの強さだと思う。その下がヴォルツかな。でもこればかりは戦いの相性とかもあるし、ヴォルツ1人でも一つの国を潰せれる力は充分にあると思う。だから油断はできない。」
「油断はしないわよ。あなたが死に物狂いで倒してくれるんでしょ。」
エリシアがノクトを見る。
「さっきから暗い顔ばっかりして。私もライナもあなたを恨んでいないわ。一緒に旅をしてる仲間でしょ。ちゃんと信頼してるんだから頑張ってよね。」
「あたしもだよノクト!私たちはノクトのこと大好きなんだから!一緒に戦おうね!」
ライナがノクトに抱きついた。ノクトはライナの激しめなスキンシップに少したじろぐ。
「ありがとう‥‥‥」
「目真っ赤にしちゃって。魔王様の子どもでも可愛らしいところがあるものなのね。」
「う、うるさい!」
ノエルが元気そうな3人を見て微笑んだ。
「僕たちはこれから長い旅をしながら成長していくんだ。みんなで強くなろう。4人でどこまでも成長すれば、どんな敵だって倒せるはずだから。」
ノクト、ライナ、エリシア、ノエルが互いの顔を見合わせる。決意の籠った眼差しは太陽よりも眩しく見えた。
彼らはフェルナ村のあるグリュネヴァルト王国を目指す。新たなる幕が今開いたのだった。
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