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救世の闇魔法  作者: なまけもの先生
打倒ヴァルグラン編

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54話 新たなる魔法

更新が遅くなりましたが!すいません!


いつも読んでくださっている方々がもしいらっしゃるならば物凄く嬉しいです!

 ノクトとエリシアはヴァルグランを倒したと思った。だが黒い雨が止んだとき、ヴァルグランの姿はあった。


 ヴァルグランは少し息を切らしていた。損傷もしている。けっこうなダメージを受けたはずだった。


「思ったよりもやるな。ノクトに傷をつけられたのは初めてだ。」


「殺したと思ったんだけどな。」


「それはまだ10年早い。そんなに六魔星を倒すのは甘くないからな。魔王様の力を失ったお前じゃなおさらだ。」


「俺にはもう父の魔力はないが、今はエリシアがいる。だから誰だって倒せるはずだ。」


「そうか。なら、やってみろ。これが俺の最後の攻撃だ。


 ノクト。この世界は力が全てだ。勝つ者が正しく負けた者が悪い。この事実を否定する綺麗事なんて一切通用しない。なんせ殺されたら終わりの世の中だからな。お前が1番よく分かるだろう?なぁ、ノクト。


 お前は父を殺した。その理由はどうでもいい。お前はお前の貫きたい思いのために実の父を殺したんだ。そうすることでしか思い通りにならなかったわけだろう?この世はそんな世の中なんだ。だからこそお前は正しかった。なら次は俺を殺してみろ。お前が勝てばお前が正しい。お前が死んでしまえば俺が正しいことになる。お前の全てを俺にぶつけてみろ。」


ヴァルグランは最後の魔法を詠唱する。


熾界天葬シカイテンソウ灼皇巨神転生シャクオウキョシンテンセイ


ヴァルグランの詠唱が終わった瞬間、紅蓮界域が呼吸を止めた。


熱の揺らぎが消える。

代わりに、瓦礫の山そのものが――静かに赤く光り始めた。


石が焼ける音。

鉄が溶ける匂い。

そして、空気の密度が一段落ちた。肺に入るはずの酸素が、火へ変わっていく。


ノクトは本能で悟る。


(これはとんでもない魔法だ。一瞬でも油断をすると死んでしまう)


エリシアが一歩前へ出ようとして、足が止まった。足元の瓦礫が、柔らかい。踏めば沈む。まるで溶けた床の上に立っているみたいだった。


ヴァルグランが、ゆっくり両腕を広げる。


その胸の中心――心臓の位置に、白い核が灯った。太陽の核。いや、灼熱の王の心臓。


「見せてやる。力が全ての世界の形をな。」


白い核が脈打つたび、ヴァルグランの体表のマグマが剥がれ落ち、空中で硬化し、赤い装甲になって貼りついていく。人の姿が、巨人へ引き伸ばされる。


 骨格が隆起し、肩が山のように盛り上がり、腕は溶岩の柱となる。背中からは白焔の噴流が立ち、陽炎の翼のように揺れた。


――灼皇巨神。


その膝が瓦礫に触れただけで、石が液体になった。一歩、踏み出す。足跡が溶岩湖になる。


ヴァルグランが見下ろした。


「今日がお前たちの命日だ。」


巨神の右腕が持ち上がる。拳の内側に、白い核が凝縮する。さっきの掌核よりも深い。重い。

あれが落ちたら、瓦礫の山ごと街が沈む。


ノクトはエリシアの手を掴んだ。


「エリシア。次で決めないといけない。」


「でも、どうやって? あれは――」


「燃やされる前に断つ。あの巨人を打ち込む魔法を放つんだ。


エリシア。俺に力を貸してくれ。」


「ええ。」とエリシアが呟く。


巨人になった。ヴァルグランが何度も何度も攻撃を繰り出す。ノクトたちは手を握りながら全ての攻撃を上手いことかわしていく。


ノクトは新たな魔法を生成するためのイメージに時間を費やしていた。あの巨人を倒す魔法。それは今までの魔法ではいけない。


「ちょこまかと逃げてばっかりか。やはりこの魔法には逃げるしかないだろう。でももう終わりだ。


そして、次の瞬間。


白い核が、さらに深く脈打った。


止まったはずの拳が――今度は落ちるのではなく、空間ごと押し潰すように降りてくる。


「見せてやる。これが俺の終焉だ」


 灼皇巨神の全身が、白焔へ変わり始めた。

形が崩れ、熱が質量を失い、巨大な白い太陽のようになる。


エリシアの声が震える。


「ノクト……! これ、受けたら――」



ノクトはエリシアの手を強く握った。


「エリシア。俺の魔力の波動に合わせてマナを送ってくれ。」


「ええ。」


「この魔法でかたをつける。救うんだ、世界を。」


二人は空いている手を地面にかざして魔法陣を地面に展開する。光の魔法陣。闇の魔法陣。それらの魔法陣が重なった。すると魔法陣は瓦礫の上に、円陣が浮かび上がる。


 ――色が、消えた。


 白でも黒でもない。眩しさでも暗さでもない。そこにあるのは、澄み切った“深さ”だった。


 輪郭は見えるのに、光が反射しない。影も落ちない。まるで円陣の中心だけ、世界が一度「息を止めた」みたいに静まり返る。


 音が遠のく。


 爆ぜる炎も、砕けた瓦礫も、風も――全部が薄い膜の向こうへ押しやられた。


 残ったのは、透明な無音。


 冥澄メイチョウ


 闇の冥さが沈み、光の澄みが満ちる。混ざるのではなく、重なって“境界”になる。生と死、始まりと終わり、熱と冷たさ、そのどちらにも属さない――名付ける前の領域が開く。


 円陣の縁に刻まれた紋が、ゆっくり回転した。


 回るたび、瓦礫の粉がふわりと浮く。燃え滓が舞う。だが燃えない。落ちない。重力が一瞬だけ迷っている。


 ノクトの黒い杖先から伸びた闇が、円陣へ吸い込まれる。


 同時に、エリシアの聖剣から溢れた光が、円陣へ注がれる。


 光と闇が燃料として消えるのではない。


 光と闇が鍵になって扉が開く。


 円陣の中心が鏡みたいに澄んだ。


 澄んでいるのに底は見えない。


 覗き込んだ瞬間、そこに映るのは自分の顔じゃなかった。


 過去。選択。罪。救えなかったもの。


 ――そして、これから救うはずの世界。


 冥澄の円陣が、脈動する。


 脈動は熱を生まない。光も生まない。


 代わりに、世界の法則が一拍だけずれる。


 空間が、きしむ。


 瓦礫の山の上に、見えない水面みたいな波紋が広がった。


 触れたものの境界が曖昧になる。炎は炎であることを忘れ、闇は闇であることを忘れ、ただ「在る」という一点だけが残る。


 ノクトが低く息を吐く。


「……いける。エリシア、波を合わせるんだ。」


「ええ。私のマナを全てあなたに預けるわ」


 二人の掌が、同時に円陣へ沈むように落ちた。


 冥澄が、完全に起動する。


瓦礫の山が溶け落ちる寸前、最後の勝負が始まった。


いつもありがとうございます!

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