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救世の闇魔法  作者: なまけもの先生
打倒ヴァルグラン編

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48話 白い雨が降る中で

 ライナとレオンが各々の魔法で魔王軍の兵士を一掃する。彼らの強さはヴァイスも予想外だった。このガラクタの巨壁にも驚いたが、まさか雷魔法の使い手がここまで強いとも思っていなかった。


レオンは雷属性の魔法で多くの魔王軍を倒した。彼は雷を全身に纏う。そして迫り来る敵を殴り付けて直接、雷を相手にお見舞いした。更にレオンの周囲にバチバチと雷が落ちる。その雷に当たった敵も倒れていく。


魔王軍の数は圧倒だったが、ライナとレオンの活躍で魔王軍の侵入は防がれていた。すると壁の向こう、隊列の奥。その中心にいる男が、ようやく一歩、前へ出た。


 黒翼将ヴァイス=クロウフォード。彼は剣も槍も構えない。ただ白い手袋の指先で、空中の何かを整えるように撫でる。


「思ったよりも厄介だな。俺がやるしかないか。お前たちから魔力を奪ってあげよう。もちろん命そのものな。


白雨封殺はくうふうさつ


次の瞬間――空が、白く濁った。そして雨が降り始めた。それは雪でも霧でもない。光だけが漂白されたような白い雨。


 地面に落ちた雫が、石を濡らす。そして暁の者は濡れた箇所からどこか色が奪われていくような感覚を覚えた。


ライナの焔もレオンの雷も鈍い灰に沈む。


「なんだ、これ」


レオンは全身の魔力が弱まっていく感覚を覚えた。体を纏う雷もいつもよりか弱くなった気がする。彼は拳を振る。やはりいつもの感じとは違う。


 ライナも同じだった。拳を握りこみ、紅蓮を呼び起こす。いつもなら胸の奥から爆ぜる炎だが、今は思うように火力を出せない。


「もぉ!いったい何なのこれ!」


 白い雨が、魔力の流れを押し潰している。術式が立ち上がる前に、濡れて、重くなって、沈む。


 雨脚は一段と強くなった。白い雨はユリウスまでは届かないが、一つ目の壁を守る者全員に降り掛かった。


 「その魔法はヴァイスさん以外の魔法も弱くなるじゃないですか。ヴァイスさんったら自己中心的なんですから。」


 ヴァイスの側でエル=シェイドが微笑んだ。


「僕のゴーレムも弱まるね。止めてよ。変な雨降らすの。」


 エルの隣にいるのはバサルトだった。暁の公開処刑を実施するために黒翼将が三人集まっていた。


「だからお前たちは来なくていいと言っただろう。勝手に来たのはお前たちだ。そこらへんで黙って見ておいてくれ。」


 ヴァイスは腹を立てた様子だった。するとエルが空気を読まずに微笑みながら楽しそうに話す。


「だって、ずっとお城にいるのは退屈なんですもん。それにヴァルグランさんは怖くて苦手なんですよ。」


「僕もヴァルグランは怖い」とバサルトが言った。


「分かった。もうお前たちは黙って見ておけ。俺の邪魔だけはするんじゃないぞ。」


「いや、僕はちょうど戦いたい相手を見つけた。あの赤髪の女。あいつには前さんざん邪魔をされたから。それに僕が負けたみたいだったし。だから殺すよ。」


「じゃあ僕は高みの見物といきますね。2人とも頑張って下さい。いやぁ、黒翼将2人の戦いが見れるだなんて楽しみだなぁ!」


エルは満面の笑みだった。ヴァイスは呆れた顔でエルを睨んだ。バサルトは魔法を詠唱する。


地脈終律ちみゃくしゅうりつ――大地覇神だいちはしんバル=ガノス!」


巨大なゴーレムが出現する。その高さはユリウスの創造した巨壁よりも遥かに高い。その高さは五〇メートルを超える。


 ゴーレムは巨壁をひと殴りでぶっ壊す。暁の者は我を失った。そして何体もの魔物がレンデルの街に侵入する。一つ目の壁が破られた。


 暁の者は二つ目の壁を破られないように戦うしかない。巨大なゴーレムが歩いてくる。殆どのものはそれに近づく術を知らなかった。だがそのゴーレムを見て心に火のついた者もいた。


ライナは、砕けた巨壁の向こうでゆっくり近づいてくる《大地覇神バル=ガノス》を見上げる。


「あれはゼルマンを殺した黒翼将の魔法‥‥‥」


 ライナは亡きゼルマンを思って涙するミレオを思い出した。またゴーレム使いは誰かの大切な人を殺そうとしている。ライナには無人情な魔法使いが決して許せなかった。


 雨はかなり強くなっていた。もうヴァイスの意思だけでは雨が止まないほどに、上空にある雲は発達していた。ヴァイス以外のものは雨に魔力を奪われている。それはバサルトたち魔王軍も同じだった。


 白い雨が肩を濡らす。いつもなら濡れた瞬間に蒸発して蒸気が立つはずの熱が、今日は立たない。火力が奪われてる。分かってる。分かってるけど。


ライナは拳を胸の前で握り込んだ。どんな魔法だって焼き尽くす。今はノクトもエリシアもここにいない。アタシがしっかりしないと!


紅蓮爆装ぐれんばくそう――」


 黒い外套の下、肌の上を赤い炎の膜が走る。薄い。弱い。だけどゼロじゃない。

 雨粒が触れたところから、じゅ、と小さく白煙が上がった。白雨封殺の“重さ”を、炎の膜がぎりぎりで弾く。


「まだ燃える。なら、十分!」


 ライナは一歩で踏み込み、瓦礫を蹴って加速した。巨人の足元へ――狙うのは胴じゃない。膝。足首。関節。


灼魂連砕しゃっこんれんさい!」


 拳が連続で叩き込まれる。鋼みたいな脚に、赤いヒビが走った……ように見えたが、次の瞬間、土と岩の皮膚が“押し戻す”ように盛り上がり、亀裂が塞がっていく。


「やっぱり簡単には崩せないよね。」


ライナは全身に炎を纏った。紅蓮爆装ぐれんばくそうを唱える。ミレイユ・ヴァルモンとリュカ。そして複数の暁メンバー、ガラクタの兵士も応戦した。


 レオンも副リーダーであるジャン・ルーセルや他のメンバーと共にヴァイスとの戦いを始めた。白い雨が強烈に降っている。


バサルトはゴーレムの強化魔法を唱える。最初から最上級の魔法を発動した。もう最初からライナを潰しにいこうとしたのだった。


「参ノさんのいん地脈覚醒ちみゃくかくせい


 ゴーレムはとてつもないパワーとスピードで動く。しかしそれでもヴァルスの魔法によって動きは前よりも弱まっていた。ライナたちは弱まったゴーレムの動きを見抜く。しかし攻撃をしても自らの魔法も弱まっているので相手を倒せない。


「この雨をどうにかしないと‥‥‥」


 ライナはこの雨を蒸発させるような豪炎をイメージした。もっともっと強い炎を。弱点である水属性の魔法さえも蒸発させてしまう焔の渦。もくバサルトから誰も奪わせないために‥‥‥


 白い雨が、肩を叩く。冷たい。重い。術式は濡れて沈む。火力は出ない。――それでも。


 ライナは、胸の奥の火種だけを両手で抱え込むみたいに拳を握った。


「……火力がまだまだ足りてない。」


 彼女は息を吐く。吐息が白くならない。喉の奥が赤く灼けていく。


「アタシ自身が火になればいいんだ。


紅蓮化身ぐれんけしん……!」


 次の瞬間、ライナの目が琥珀に燃えたのだった。

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