23話 ゼルマンの想い
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バサルトの姿はなくなっていた。ライナ達はゼルマンのもとに向かう。ゼルマンはバサルトの魔法によって瀕死状態だった。
「ゼルマン!」とミレオが叫ぶ。
「どうして僕なんかのことを庇っだんだ!」
「ミレオ様を命に代えてもお守りする。それが私のお役目ですから。」
ゼルマンはニコッと笑った。その笑顔はミレオの表情とは対照的だった。
「嫌だよ。ゼルマン死なないで。」
ミレオの泣き声が響く。
「もう誰も失いたくないよ。ゼルマン。お願いだから生きて!」
ゼルマンの状態は明らかに良くなかった。どんどんと呼吸が弱まっていく。そしてゼルマンは最後の力を振り絞ってミレオに言葉を投げかけた。
「ミレオ様。私はずっと後悔していました。バルザック王と共にずっと一緒にいられなかったことをです。
私はバルザック王が生まれたときからずっと王のことを見守っていました。私の人生はバルザック王そのものだったんです。王を見守り王と共に生きることが私の誇るべき人生でした。ですが私は王のことを守ることができなかった。
ミレオ様。私は悔しかった。ですがそんな王が残してくれたものがミレオ様です。私はミレオ様のことを愛しています。」
「ゼルマン!だめだ!死なないでよ!」
ミレオは泣きながらゼルマンに訴え続けた。
「ミレオ様。この世の中は理不尽です。自分がどんだけ良い行いをしていようとも、悪い奴らは平和な日常を突然奪いにくるのです。ですが一生懸命に生き抜くということは、おかしな理不尽と戦うということです。
ミレオ様。何があっても負けてはいけません。負けるとは理不尽から目を逸らすということです。負けるとは理不尽に絶望して夢を抱くことをやめてしまうということです。
ミレオ様。どうか王子は夢を抱き続けて下さい。このザルベックという国の平和を。発展を。その夢を抱くことを最後までやめなければ、どんな理不尽がミレオ様を襲おうと、ミレオ様の人生は素晴らしいものになるはずです。私の人生がそうであったように。」
ゼルマンは静かに涙を流しながらもミレオに満面の笑みを向けていた。
「ミレオ様。愛しています。」
ゼルマンは息を引き取った。ミレオの叫び声が響く。ゼルマンは亡き後もにっこりと微笑んでいたのだった。
その頃。エリシアは回復するノクトの手を力強く握った。
ノクトは驚いてエリシアを見る。
「間抜けな顔をしないで!あなたの体が完全に回復するために、少しの間だけ逃げるわよ!
城を出ましょう。その間にあなたは回復して頂戴。二人で強力しないとあの男は倒せないわ。」
エリシアがノクトの手を取って走る。そして彼らは城の庭園に出た。エリシアはノクトを見る。すると彼の顔面から紫色のアザは完全に消えていた。
「どうやら完全に回復したみたいね。」
「エリシアさんは凄い回復魔法を使うんだね。」
「エリシアでいいわ。それに私はあなたに回復魔法を使ったわけではないの。」
「え?ならどうして俺は回復してるんだ?」
「おそらく私の体を流れている光のマナが、あなたの体を蝕む闇魔法に作用しているのよ。だから私に触れていればあなたは大丈夫。」
ノクトは手の平にエリシアの体温を感じる。すると悪気もなく顔が少し赤くなるのが分かった。
「あなたさてはバカね。こんなときにそんな顔をして何のつもりなの。戦いに集中しなさいよ。バカ。」
「あ、ああ‥‥‥そうだな。」
ヴァルグランがノクト等を追って城から出てきた。
「何のつもりだ貴様ら。戦の途中に手を握り合って何をしてる?」
「あなたを倒すための作戦の一つよ。今に見てなさい。粛清するわ。」
ノクトとエリシアが目を合わせて頷き合う。彼らは一旦手を離した。
「闇魔法でしんどくなったときは私に触れて!どのタイミングできてくれても構わないから!」
「ああ。ありがとう!」
ノクトは漆黒の杖をヴァルグランに向ける。
「黒焔旋獄――ッ‼︎」
闇の焔が渦を巻き、竜巻のような黒螺旋となって相手を呑み込んだ。
その間にエリシアもヴァルグランに光の魔法を放つ。彼女は聖滅七光を唱えた。
七本の巨大な光矢が放たれてヴァルグランに向かう。するとヴァルグランは紅蓮界域を発動する。
足元から赤い陽炎の壁がぶわっと立ち上がった。半径二十メートルほどの空間がゆらゆらと赤く歪む。ノクトとエリシアの魔法は、触れたそばから熱に焼かれて弱まる。しかし二人の魔法はそれでも威力を完全に奪われはしなかった。
ヴァルグランが強力な火の渦を発生させる。エリシアの矢は飛び散ったが、ノクトの黒焔がヴァルグランを少し焼いた。
ノクトがエリシアの手を取る。彼は今までに使えなかった上級魔法を発動しようとしていた。ノクトは光のマナを更に求めた。エリシアをもっと近くに引き寄せる。エリシアはノクトの大胆な行動に驚いたが無言だった。
ノクトは杖を地に突き立てる。足元に黒い紋がじわりと広がり、影が不自然に膨らんだ。
「闇印解放――黒焔魔人、顕現。」
低く呟いた瞬間、ノクトの影から黒い炎の巨人がむくりと立ち上がる。赤く光る双眸だけが、闇の中でぎらりと灯った。
大きな闇の魔力がノクトを蝕む。しかしエリシアの魔力がすぐに闇のマナを浄化した。
エリシアも遠距離魔法でヴァルグランに攻撃を仕掛ける。ノクトは闇の魔人を操った。魔人の周囲はノクトの更なる魔法で闇の黒焔が渦巻いている。その炎が全てヴァルグランに向かった。
ノクトはかなりの魔力を使用していた。だがノクトを襲う闇のマナはエリシアの力でどんどんと浄化されていく。ノクトはエリシアを更に力強く自分に寄せた。するとノクトは体がスッと楽になった気がした。
自分の体を蝕む闇がどんどんとなくなっていく。ノクトはまだまだ魔法を発動できる気がしたのだった。
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