22話 ライナの決意
ゴーレムが激しい攻撃を二人に繰り出す。そしてゼルマンが吹き飛ばされて体勢を崩す。そんなゼルマンにゴーレムの激しい拳が飛んできた。
ゼルマンは攻撃を避けられない。もう駄目かと思った。すると強烈に激しい逆風がゴーレムの拳を振り払った。現れたのはアルト。
「ゼルマンさん!大丈夫ですか!?」
「はい。アルト君のおかげで命拾いをしました。でもどうしてアルト君がここに?」
「ミレオ様が教えてくれたんです。」
「ミレオ様が?」
ゼルマンはハッとして周囲を見渡す。すると少し離れた場所にはミレオの姿があった。
「ミレオ様!どうしてまた戻ってきたのですか!?あの男は王子のことを狙っているんですよ!」
「ゼルマンのことが心配だったんだ。一人で戦っていると思っていたから。」
ゼルマンはミレオを死守することを心に誓った。
再び戦闘が再開される。バサルトが召喚した大地覇神バル=ガノスは強かった。アルトが戦闘に加わっても状況は相変わらず劣勢だった。
ライナたちの肉体は損傷だけを蓄積していく。このまま戦闘を続けても勝ち目はなかった。実力の差がありすぎる。
ライナ、ゼルマン、アルトらが魔法を次々と連発する。ゼルマンは拘束魔法で補助に回った。アルトは遠距離魔法、ライナは肉弾戦でバサルトと戦った。しかし巨大なゴーレムが全ての攻撃を受け止めてしまう。
ライナは黒翼将の強さを改めて痛感した。それにバサルトはザイモンよりも強敵に感じられた。
「俺はさっさと王子を殺したいんだ。もう面倒だから終わらせる。」
ゴーレムが王子に向かう。誰も足止めができなかった。このままではミレオの命が危ない。
ライナは自問自答した。自分はミレオに約束したはずだ。この国を救うと。きっとノクトは今、六魔星と戦っている。ライナはノクトに頼まれて、ノクトを縛っていた鎖を解いた。だからここにはノクトの姿はない。今はきっとエリシアと一緒にザルベック城だ。あの二人の強さならもう六魔星を倒しているかもしれない。
自分も負けていられない。助けないといけないんだ。今この中でミレオを救えるのは自分だけだ。ゼルマンさんもアルトくんも無事に帰さないといけない。そのためには黒魔将と同等に戦える力が必ず必要だ。命に代えても勝ってみせる。
ライナは固い決意と共に莫大なマナが体中を溢れてくることを実感した。まずはあの巨大なゴーレムを倒さないといけない。ライナはイメージを膨らませた。あのゴーレムを破壊するパンチを想像する。
ライナは足元の砂を蹴る。瞬間、紅蓮の光が彼女の腕に走った。
「この拳、炎帝に通ず――烈焔轟拳‼︎」
炎が爆ぜた。ライナの拳が赤く輝き、熱で周囲の空気が歪む。突き出した瞬間、轟音が響いた――。
直撃。拳が岩の胸を貫き、内部で火花が咲く。
次の瞬間、爆炎。
ゴーレムの体内から光が漏れ、裂け目から炎が噴き出した。巨体は悲鳴のような地響きを上げ、崩れ落ちる。
崩れるゴーレムを見てライナ達はホッとした。だがすぐ様に崩れ落ちたゴーレムが再び修復されていく。そして元通りになった。
「そんなのありなの!?」
ライナが叫ぶ。するとアルトがライナに耳打ちをした。するとライナは彼の口にした作戦に感激した。
「アルトくん天才だね!やっぱりヴェルノア学園の首席は凄い!」
すぐさま作戦は実行される。復活したゴーレムが先ほどよりも激しい動きで暴れ回った。するとゼルマンはゴーレムの足元に大きな渦を出現させる。その魔法によってゴーレムは一瞬だけ体勢を崩した。その隙を見計らってライナが動く。
ライナは紅蓮爆装を唱えて全身を炎の鎧で装う。そして更に紅蓮獅霊を召喚する。ライナは紅蓮の獅子に跨ってゴーレムに突進した。獅子は高く飛ぶ。そしてゴーレムに近づいたとき、ライナは獅子を踏み台にしてゴーレムに更に接近した。ライナの拳に炎が宿る。
「灼魂連砕――ッ‼︎」
ライナの叫び声と同時に、爆ぜるような連撃が走った。炎の獅子も共に連撃を喰らわす。そしてライナの拳が触れるたびに火花が咲き、最後の一撃で轟音と共にゴーレムが爆散した。
「アルト!今だよ!」
アルトは巨大な竜巻を発生させた。そして粉々になったゴーレムを四方八方に吹き飛ばした。大きなハリケーンはもう二度とゴーレムが復活しないほどに、粉砕したゴーレムを吹き飛ばしたのだった。
バサルトは呆気に取られた。まさか自分が発動できる中の最強魔法が破られるとは思わなかったからだ。
ライナはすぐさまバサルトに向かう。バサルトは近距離戦ではライナに勝てないと悟って、彼女から距離を取ろうとした。しかしライナの動きが余りにも早くバサルトはライナのパンチで吹き飛ぶ。ライナが次の一撃で仕留めようと更に接近した。するとバサルトが土の球体に閉じ籠った。
ライナはその球体に何度も攻撃するが球体は壊れない。更に球体はどんどん膨らんでいった。そしてある程度の時間が経つと、球体が突如一本の鋭い刃に変じながら物凄いスピードで動き出した。絶対防御に使われていた土の全部が物凄い速度で攻撃呪文に変わる。そしてその矢は誰もが反応できないスピードでミレオに向かった。
バサルトは任務であるミレオの殺害だけはどうしても遂行したかった。そのために全魔力をミレオに向けたのだった。アルトが風魔法で軌道をずらそうとするが、余りにも矢の威力が強すぎた。するとゼルマンがミレオを庇う。ミレオを突き飛ばして自らの水魔法で矢を防ごうとするが、矢はその魔法を貫いてゼルマンを貫通したのだった。




