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救世の闇魔法  作者: なまけもの先生
冒険の始まり編
18/40

18話 ノクトとヴァルグランの戦い

 ノクトはヴァルグランを睨み続ける。


「実の父を殺めるとはとんでもない小僧だな。」


「俺は母さんと約束したんだ。優しい世界を作るって。魔王がこの世に存在する以上、この世界に平穏は訪れない。だから殺した。」


「お前の口にする優しい世界っていったいなんなんだ?」


「誰もが悲しまなくていい世界のことだ。」


「甘ったるいことを言いやがって。仮に魔王軍がこの世からなくなったとしても、悲しむ人は五万と出てくるだろう。お前の母だって魔王軍に殺されたわけではないんだろう?」


「そんなこと分かってるんだ。でも魔王軍がなくなれば、理不尽な暴力で悲しむ人はたくさん減るはずだ。」


「でもな、ノクト。魔王軍はなくならない。何故ならば、その圧倒的な力に世界の人たちはひれ伏すしかないからだ。」


 ノクトはヴァルグランを力強く睨んだ。


「俺が魔王軍を滅ぼしてみせる。」


「お前じゃ俺にすら勝てないだろう。ひよっこが大口を叩くもんじゃない。」


「もうあんたに教えて貰っていたときの俺じゃない。分からせてやるよ。」



 ノクトは漆黒の杖をヴァルグランに向けた。


黒焔葬こくえんそう!」


 低く這う黒い炎の帯が一直線に伸びる。ヴァルグランは指を伏せて一言。


白焔天びゃくえんてん。」


 薄い白焔の壁。黒が触れた先から音もなく欠け、互いに相殺。床だけがさらさらと砂化して崩れた。


黒焔旋獄こくえんせんごく!」


 黒い炎が螺旋柱になって昇り、天蓋へ。ヴァルグランは炎の壁を出現させるが打破。そして彼の肩布をかすめ、焦げ跡が走る。


 ヴァルグランの口元がわずかに緩む。


「悪くない。」


そして彼の掌がひらいた。


炎鎖皇掌えんさこうしょう。」


 赤銅色の炎鎖が虚空から伸び、ノクトの腰と足を絡め取る。焼き締める熱。


 ノクトは杖元に黒い火花を一点だけ弾く。結び目だけがパチンと弾け、鎖が落ちた。


 間を置かず、天井が白く点る。


熾天焦雷してんしょうらい。」


 直径三メートルの白い雷柱が真上から落下。ノクトは黒炎を傘のように展開して受けるが、衝撃波で二歩、三歩と押し下げられた。


 ノクトとヴァルグランの戦いはほぼ互角だった。ヴァルグランの強力な火属性魔法さえもノクトの黒焔は燃やし尽くした。しかし徐々にノクトの体は闇魔法に蝕まれていく。それでもノクトは戦いを続けたが、とうとう肉体に限界がきてしまった。


「やはり魔王様の力がないと、お前はろくに魔法も使えないじゃないか。」


 ノクトの肉体は強力な闇属性の魔法を放つのに適していなかった。そのために魔法を使うのに限界があったのだ。そのために父である魔王に、いつも闇属性の魔力を充分に発揮できるように、特別な力をいつも与えて貰っていたのだった。魔王亡き今は、闇属性の魔法を満足に使うことができずにいた。


「もう勝負の行方は時間の問題だな。もう降参してもいいんだぞ。殺しはしないから安心しろ。俺の配下として黒翼将になれるように、俺から魔王様に頼んでやる。」


「魔王軍に戻るならば殺された方がマシだ。」


「そうか。なら仕方ない。俺がここで殺すとしよう。」



 ヴァルグランが呪文を詠唱する。


熾印点火しいんてんか――紅蓮炎龍ぐれんえんりゅう招来しょうらい。」


 大きな炎が巻き上がり、それらが鱗の形に固まっていく。頭が持ち上がった瞬間、玉座の間じゅうの空気が燃えた。そして床石は溶けて、ガラスみたいに波打つ。


 ヴァルグランの紅蓮炎龍ぐれんえんりゅうは、真っ赤な炎で形成された超巨大な竜。


目の奥が白く燃え、口を開くと炉みたいな熱が漏れる。一歩で床石が溶けてガラスみたいに固まる。翼をあおげば熱風が爆ぜ、尾を振れば火の雨が散る。咆哮ひとつで視界が赤く染まり、前にあるものをまとめて焼き払う。



 炎龍がノクトに襲い掛かる。ノクトもヴァルグランに対抗して強力な魔法を唱えようとした。しかし強力な魔法は、それを発動すること自体に懸念があった。もし体が強大な闇のマナに耐えれなくて魔法が発動できなかったら‥‥‥


 ノクトは巨大な闇の炎で龍を飲み込んだ。龍は黒焔で燃える。しかし巨大な龍の体を黒焔で燃やし尽くすには限界があった。ノクトは黒焔の威力を増大させる。


 巨大な炎龍の全身を闇の黒焔が燃やし尽くす。その威力は絶大だった。しかしノクトはすぐさま体勢を崩して膝をつく。


 闇魔法に体は蝕まれてもう限界だった。ヴァルグランの発した炎龍がノクトに向かって突進する。


 ノクトはすぐに体勢を立て直せない。そんな状況を見て、エリシアがすぐさまに呪文を詠唱した。


熾祈連環しきれんかん聖印合致せいいんがっち――天輝護将てんきごしょう降臨こうりん。」


 エリシアが胸前で指を組むと、掌の前に小さな光輪が連なって走る。


 足元と頭上に現れた印章が「カチッ」と重なり、細い光柱が伸びる。

 柱の内側で輪が組み上がり、剣と盾を持つ光の巨像が形になる。すると神々しく輝く光の戦士が降臨した。その両手の聖剣と盾は眩しいほどに輝いている。


 光の戦士がエリシアとノクトの前に立つ。そして黒焔で燃え上がる焔の龍に聖剣の一撃。黒焔で元々弱っていた炎龍は力尽きた。


 光の戦士はそのままヴァルグランに向かう。するとヴァルグランは焔の魔神を召喚した。そして紅蓮界域ぐれんかいいきも発動。


 ヴァルグランは焔の壁に囲まれて姿が消える。炎の魔人と光の戦士が衝突する。魔人は光の戦士によって斬り裂かれた。だが光の戦士の魔力もだいぶ弱まっていた。


 光の戦士がヴァルグランを囲む焔の巨壁に連撃を与えて消える。巨壁も光の魔法によって霧のように消えていった。


 エリシアはすぐさまノクトを見た。ノクトは倒れていた。エリシアは倒れるノクトの両肩をゆすった。すると驚くことにノクトの顔にある紫色のアザが薄くなっていく。


 エリシアはまさかと思った。闇の魔力と光の魔力は相反的な関係にある。まさか自分の光の魔力が、ノクトの体を蝕む闇の力を浄化しているのかもしれない。


 エリシアはノクトの両手を握り続けた。するとノクトの体にあるアザがどんどんと薄くなる。エリシアは自分にノクトを救える力があることを理解したのだった。

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