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随分間が開いてしまい、申し訳ありません。
とりあえず2話。近いうちにこの章の残り分上げます。
いつだって、神は悪戯で、そして残酷だ。
ミアたちルーマの者たちの手助けやランスロットの機転でなんとか追ってから逃れた俺たちは、英雄平原の北端、覗き込めばたちまち真っ逆さまに落ちちそうなゴツゴツとした岩肌の崖の手前で、馬たちを放ち、その身をその岩壁の向こうへと間髪入れずに放り出した。
追手を一時的に巻けたとは言え、急いで身を隠さないければまた見つかるだろう。
今の俺とランスロットでは、逃げることはできてもあの白金隊を倒すことはできない。
それには閉ざされた森、かつてテヤンたち狼牙族も住み着いていた北の森は絶好の隠れ蓑であり、昔、追手に追い込まれてその森へとに突き落とされた丁度その場所にたどり着いたのはとてつもない幸運と言える。
「チッ……おい、他にルートあっただろう絶対に。」
俺にほぼ突き落とされるのに近い形で深い雪の中へとダイブしたランスロットが物凄い形相で睨んでくる以外は、本当に上手くいっている…はず。
「仕方ないだろ〜。俺、他の道知らないし。何故かテヤンいないとこの森迷うし、出られないんだよ。」
「…はぁ?」
俺の発言に何やら嫌な予感を覚えたように、ランスロットの顔がより一層歪んだ。
眉尻をピクピクと痙攣させ、周りに電磁波を帯び始めるその様子は、ランスロットが癇癪のように起こりだす一歩手前だともうこの1週間ですっかり理解している。
「…間違っても雷起こすなよ?ここの魔物は異様に強い。そんな奴らにゾロゾロとつけ狙われるのはごめんだからな?」
一応のための念押し。
でも、そんな俺の言葉も虚しく、それが全く耳に入ってないらしいランスロット様はさらにバチバチと激しい音を立てながら、口をワナワナと震わせている。
「赤髪てめぇ…道がわからないくせにこんな変テコな森に俺を突き落としやがったのか?」
「変テコってなぁ〜。いや、だって。逃げるにはうってつけだっただろ?それに多分、テヤンたちが次の湖を目指すならここの可能性が高い。」
その名を口に出したことで不安が過った。
果たして、テヤンは無事だろうか?
身体的には無事だろう。殺しても死ななさそうな、強靱な肉体を持っていることは俺が誰よりも知っている。
初めてテヤンと出会った明らかに血塗れで、ズタズタで、死にかけのような状態だったときだって、次の晩にはアイツは何事もないように歩き回っていた。
当時まだあれは10歳にもなってなかった子供…人間の常識では考えられない生命力に身の毛がよだつと同時に、底知れない薄暗い歓喜を覚えたこと、今でも鮮明に思い出せる。
テヤンの寝ぐらまでその身体を引きずっていったことを"助けてやった"と大袈裟に恩に着せ、この閉ざされた冬の大地からアイツを引き摺り出してはや10年。
それまで、テヤンに流れる"オオカミ"の血を疑ったことは一度もない。
心配なのはそちらでなく。
-あんな事実を知った後でシレーヌと2人きりだったとしたら…嫌でも自覚してしまうんじゃないかアイツ。
遅すぎる春といえば聞こえがいいが、今まで他人に無頓着なテヤンが初めて抱いたその感情は、執着となればそれはそれは厄介なものと変わるだろう。
恋は簡単に人を狂わせる。
それが愚かな行為だと分かっていても抑えられず、正常な判断力を失わさせる。
相手がそこらの平凡な町娘なら別に良かった。
でも、テヤンが惹かれたのはよりによって死ぬことを運命づけられた姫巫女だ。
下手したらアイツは…
「世界を犠牲にしてもあの子を取ると言い出しかねないな…」
思わず口に出てしまった最悪な結末。
でもそれが容易く起こってしまいそうだから笑えない。
別に世界が滅ぼうが何しようが、俺には至極どうでもいい。
だが、それがすぐ起こりうる未来であるのははっきり言って頂けない。
「急に理解不能な言葉を吐いてどうした?当に狂っていた気が、とうとう崩壊したか?」
「…独り言だ。ほっとけ。」
苛立ちを嫌味にしてぶつけてくるランスロットの言葉を適当に躱しながら、頭にこびりつきそうになるその未来を振り払う。
「まぁ、安心しろよ。ここから"安全地帯"への道だけはどうやらまだ覚えてるみたいだからな。」
そんな誤魔化すような言葉を呟きながら、俺はひたすらに雪に覆われた道なき道をかき分け、前へ前へと進んでいった。
そして、10年前と変わらぬ洞穴でテヤンとシレーヌの姿を見た時、事態は最悪の結末へと向かっていることを悟ったのだった。
久しぶりすぎて書き方変わってたらごめんなさい。(土下座)




