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Procursator   作者: 来栖れな
第8章 全ての思惑は交わり、嵐と化す
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8-4

前の話と区切るとこ調節したので、文字数少なすぎ問題は解決された…はず。


いつも文字数安定せず申し訳ない。


目覚めたのは冷え切った金属の床の上のようだった。


「ようやくお目覚めか?」


聞き慣れたテヤンの声が、すぐ近くから降ってくる。

ゆっくりと起こした全身から痛みを訴える身体。

手は手枷で固定されているのか、背中の後ろで自由を奪われている。

頭部がぐわんぐわんして少し視界が揺れる。

目に入るのは見慣れたテヤンの顔、その後ろに鉄格子。

ぐるりと見回してようやくここは煤けた牢屋の中で、俺はテヤンとそこに入れられているのだと理解する。


「…何日だ?」


「丸2日だ。お前もシレーヌもよく寝ていた。」


「…シレーヌは?」


「貴賓室だ。曲がりなりにも帝国のお姫様だからな。」


言葉少なな俺の質問に、テヤンは淡々と答えていく。


「……何故俺は死んでない?」


俺が自失状態となり呆然と立ち尽くしていたあの油断に斬り込まれた一撃。

奴の俺への憎しみの深さを思えばそのまま殺されるのが必然に思えた。

なのに、俺は生きている。

俺が殺されても、それでテヤンとシレーヌが生き延びればとか頭の端で冷静に計算したりもしたのに…


「俺が大人しく捕まることを条件に取引をした。」


「…なるほどな。」


予想外の発言。

アイツがそんなことを言い出すとは思えないし、テヤンから言い出すにしても違和感を覚える取引だ。

だが、そのおかげかそのせいか、俺はまだ生かされている。

ガチャガチャと、俺らが入れられた牢屋からすこし離れた位置にある入り口のドアが音を立て、乱暴な手つきで開けられる。

入ってきたのは白色に銀縁の王国騎士の軍服2人。

1人が俺たちの牢屋の前に立ちまたガチャガチャと鍵を弄り始めた。

それで何か察したのか、テヤンが俺に手を貸し立ち上がらせる。

その時、テヤンは手が縛られてないこと、そして俺の傷全てに一応手当がされていることに遅ればせながらぼんやりと気がついた。


「出ろっ!」


鍵を外し終わった男が俺たちにそう短く命じる。

大人しく外に出るテヤンに続いて、俺も痛みに悲鳴をあげる身体をノロノロとそれに続かせた。



***


王国騎士の先導で連れていかれたのは真っ白な長い廊下をずっと進んだ奥の奥にある、自分の身の丈の5倍はありそうな巨大な白い扉。

両脇に控える別の騎士とその王国騎士が何かやりとりをすると、その両開きの扉が重々しい音を響かせ、ゆっくりと開かれる。


扉からまっすぐ伸びる赤い絨毯は、白い大理石の床の上でよく目立っていた。

玉座へと続く数段の階段の手前、扉がと同じくかなりの面積を占める部屋の奥に、白銀の髪が見えた。

天井の全てがガラス張りになったこの部屋で、存分に陽の光を反射させるそれがふわりっと振り返りながら、小さな瞬きを幾重にも繰り返している。

クリーム色のシンプルながら上質なドレスに身を包むシレーヌが、俺たちの顔を見て泣きそうな顔のままくしゃりと笑う。

-無事だな。

わかっていたけれど、その姿をこの目で確認できたことで、ようやく確かな安堵を抱くことができた。

騎士に連れられ部屋の奥へと進む俺たちに走り寄ろうとするシレーヌを、その隣に立つ男が肩に手を乗せ抑えている。


リヒター卿、

王国近衛騎士でありながら、王国随一の実力を誇る特務実動部隊である白金隊隊長だ。

騎士然とした鍛えられた身体に、隙のない鋭い眼光、戦いでできたのであろう左頬の刀傷、赤髪に金の瞳というアベルと同じ色味を持ちながら、全く違う雰囲気を纏う男。

アベルの宿敵であり、刺客を送ってくるのは彼だとゼクスから聞いていたのだが…

この男こそ、アベルを助けることを条件に交渉してきた張本人である。


「テヤンっ!!アベルっ!!!」


「恐れながら、帝国の"来賓"である貴方様が、一国の反逆者とその仲間に駆け寄るのはおやめください。」


必死に俺らに手を伸ばすシレーヌを片手1つでやすやすと静止するリヒター卿を、少し距離をあけた冷たい石の床に座らされながらジッと観察してみる。

-何故なのだろう?

決して友好的とは言えない鉄仮面。

その割に、その瞳に映るのはたぶん…


「"国賓"に、騎士ごときが気安く触っていいのかよ、」


「…黙ってろこの罪人が。」


いつもより随分威勢の足りないアベルの挑発に、リヒター卿は語気の強い声で冷静に言い返す。


その瞬間、


ズドォーーンッ!!!

地響きを伴う激しい揺れと玉座の真ん前に落ちた鋭い閃光。

広すぎる室内全てを白く染め上げる勢いの眩しさに目が眩めば、だんだんと慣れた視界に異質なものが目に入る。

無残に横に蹴り倒されているのは間違いなく赤い天鵞絨で作られた金の装飾がされていたはずの立派な玉座。

代わりにそこに居座るのは1つの小さな人型の影…


「…こ、子供?」


隣のアベルから、言葉にするはずのなかったそれがこぼれ落ち、予想外にこの広い空間に響いた。

俺らより数段高いその場所に立っていたのは、あまりに年若すぎる少年だった。

見たところ年頃は10にいったかいってないかぐらい、黒く胸元のゆったりとしたシャツに、黒くゆったりとしたズボン、フワリと肩にかかった長い丈の上着も黒で、そこには金と銀の美しい刺繍が施されている。

顔の輪郭や体つきがまだあどけない。

鮮やかな金髪の下にあるペリドットの瞳が、王都人特有の褐色肌のせいか、やけに目立って見える。

勝気さが前面に現れた顔立ちは、凛々しくもあり、それなのに作り物めいて感じがして、あまり人間らしさがない。

しかし、子供らしからぬ不敵で傲慢な笑顔、そして真実を見抜こうとする瞳はどこか生き生きとしていて、とてもアンバランスな印象を受けた。


「クククッ、あの耄碌じじいの方が良かったか?」


少年はそう楽しそうに俺らを観察すると、そのまま一歩、一歩と、天と地を隔てる階段をゆっくり降りてくる。

まだそんなに重くないはずのその足音が、妙にこの部屋に響いている。

少年はその足取りをアベルの前、階段が2つほど上のそこにひたと留める。


「ダニエルと違ってよく表情が変わる。お前、素直で面白いなぁ〜。…だが、」


子供のものとは思えない低いテノールが歌うように言葉を紡ぐ。

しかしその楽しそうな笑みは一瞬にして消え失せ、男の顔が蔑むような無に変わった瞬間、奴はアベルの髪をひっ掴み、そのまま力任せに床へとぶん投げた。

唐突に訪れたその衝撃に、既にボロボロな上拘束されたアベルの身体は、受け身も取れず、派手に床へと叩きつけられた。


「ここでは俺様が上だ。目上に子供(ガキ)とはいい度胸しやがるなぁ?」


「アベルっ!!」


「殿下っ!!」


男の無慈悲な行動に、シレーヌとリヒター卿の悲鳴が大きく響いた。

ようやくメインキャスト全て揃った〜〜泣

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