23.異世界クッキング
…さて何を作ろうかな…。
食材は色々あるが、調味料が限られたものしかないのでやれることに限界がある。
トレント達が作ってくれた木のテーブルに食材を広げていく。
味噌も醤油もないとなると、和食は難しいよね…。
小麦はあるけど、粉になってないから、粉にするところから始めないとだし…。
「…ねぇルノ、風魔法でこの小麦を粉々にすることってできる?」
『うーん、やってみないとわかんないけど、なんかかるくてこまかいのだと、周りに"わぁ!"ってとびちっちゃうかも〜。』
ルノがわぁっ!って言いながら両手を広げているのが可愛くて、何を話してたか一瞬忘れそうになったが、やはり流石にそこまで上手い話はなかったようだ。
チーズがあるから、小麦粉さえあればピザでも作れるんじゃないかと思ったんだけど…。
あ、そうだ!
ピザで思い出したが、そういえば前にジャガイモを使ってガレットを作ったことがあった気がする。
ガレットの上に具材を乗せれば、ピザ風ガレットができるのではないかと思い立った。
早速準備に取り掛かる。
まずはジャガイモを千切りにする作業だが、これなら風魔法でもできるかもとルノが名乗り出てくれたので、千切りはルノにお願いすることにした。
次に上に載せる具材だが、ガーリックバターをベースの味にしようと思っているのでそれに合いそうなものを見繕う。
タマネギと、とうもろこしと…あと干し肉をちぎって乗せればいいかな。
『あかね〜できたよ〜。』
ちょうどトッピングを選び終えたところで、ジャガイモの千切りが終わったらしい。
包丁で切ったものに比べると多少不揃いではあるものの、ガレットにするなら全く問題ない出来だ。
「ありがとう〜!助かったよ〜!」
フライパンにたっぷりとバターを入れて、サランに火魔法で溶かしてもらう。
実は先ほど、ピザを焼くために甘味料を煮詰めた鍋とは別で平らな部分が多いフライパン(のようなもの)も作ってもらっていたのだ。
バターが全て溶け切ったところで、中にじゃがいもを敷き詰めていく。
そのままでもデンプンでくっつくはずではあるが、念の為チーズをつなぎとして少し乗せることにした。
チーズはよくある丸い形をしていてそのままでは使えないので、風魔法で半分に切ってもらい、表面を火で炙って溶かし、溶けた部分をヘラで削り落としていく。
動画でよくこんなシーン見たなぁ。一回ぐらいやってみたかったんだよね。
ガレットを揚げ焼きにしている間、トッピングの下準備をしていく。
タマネギは皮を剥いて、一口大に切ってもらう。
とうもろこしは手で身を剥いでいくのだが、ちょっとコツがあって、一列だけ先に剥いだら、あとは列ごと空いたところに横向きで倒していくとすんなり身が剥けるだ。
おばあちゃん家で教わった豆知識がこんなところで役に立つなんて…コーンの缶詰は便利だったな…。
干し肉も細かく割いておいたら、次はソースの準備に取り掛かる。
実は先ほど、ガレットを焼く前に鍋の方でバターとニンニクも火にかけておいていたのだ。
見たところニンニクもいい感じに柔らかくなっているので、ヘラで潰してみる。
あまり力を入れなくても潰れるくらい柔らかくなっているので、もう大丈夫そうだ。
鍋を火からおろして、ヘラでニンニクをどんどん潰してペースト状にしていく。
そこに塩、胡椒、シロップを少し入れて、混ぜたら完成だ。
ぺろっ
…うん、美味しい!本当はパセリとかあったらもっと美味しんだろうけど、これでも全然おけ!
『ご主人様、ガレットが焼き上がりそうです。一度見ていただけませんか?』
ソースやトッピングの準備をしている間、ガレットはレナが見てくれていた。
もう両面こんがり焼けたようなので、声をかけてくれた。
「うん、完璧!ありがとうレナ!」
焼けたガレットは、油を切るため一度木製のお皿に取り出す。
フライパンに残っているバターは一度お椀に避けておく。
ガレットをもう一度フライパンに戻し、ガーリックソースを満遍なく塗ってからタマネギ、とうもろこし、干し肉を散りばめる。
今度はフライパンの底だけじゃなく、上からも火で炙ってもらう。
全体的にこんがり焼けてきたら、仕上げにチーズを溶かしてガレットの上にかけたら完成だ。
「よし!出来上がり!」
甘味料を作り始めてからトータルで3時間ほど経っただろうか、ようやくピザ風ガレットが完成した。
最初はこの場にいる人数にガレット一枚で足りるのかと心配したが、トレント、サラマンダー達は人間の食物を取り込む必要がないうえに、味覚を感じる器官もないのでいらないらしい。
シルフ達は体が小さいのでみんなで一切れ食べれば十分だそう。
ミルクは鼻が効くせいであんまりニンニクが得意じゃないらしく、ニンニクを焼き始めたあたりからどこかへ避難してしまった。
…今度ニンニクの入ってないチーズガレットを作ってあげよう。
トレントとサラマンダーには、あとで食事とは別に何かして欲しいことないか聞いてみることにした。
ピザを人数分にカットして、1人ずつ渡していく。
「んん〜!美味しい!」
地球の調味料がふんだんに使われた料理に比べれば少し物足りないところはあるけど、それでも数日ぶりの油物は体に染みわたる。
これでケチャップとかマヨネーズとかウィンナーとかあれば最高なのになぁ〜!
レニのいる貿易都市ならもっと色々あるだろうから、帰ってくる時色々買って来てもらお!
みんなでピザ風ガレットを平らげたところで、ちょうど地下室の乾燥も終わったらしい。
食材が傷まないうちにさっさと地下室へ運び入れてしまおう。
食材を地下室へ運ぼうとしたら、自分達がやるからとトレント達に止められてしまったので、運搬は任せてその間に使った食器類を泉で洗ってこようと、フライパンやお皿を重ねていく。
『ご主人様は調理してくれたので、後片付けは任せてください。』
レナはそう言いながら、お皿を全て取っていってしまった。
隣で様子見していたレオナとシルフ達を引き連れて、颯爽と泉の方角へ消えていく。
…急に暇になってしまった。
近くにあるトレントお手製の椅子に腰をかけて、ふぅと一息つく。
そう言えばレニはそろそろ貿易都市についたのかな。次に使う召喚素材とか、他の種類の野菜やお肉とかサイドポートで色々集まるといいのだけど…。
せっせと働くトレント達の姿を眺めながら、ぼーっとそんなことを考えていく…ーーー。




