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優しい灯  作者: 豆大豆
1章
22/145

夏休みの手前

期末テストも、中間テストのときと同じように、ふたりで一緒に勉強した。

返ってきた答案を見て、ふたりは小さく笑った。

それは、がんばった日々が、ほんの少し報われたような笑顔だった。


そうして迎えた、終業式を終えた日の午後だった。


教室には、少し浮ついた空気が流れていた。

通知表を机に置いて、バツが悪そうに見つめている男子。

その隣で笑いながら、「まあ、そんなもんだよ」と言う声。


窓から入り込む風は、夏の匂いを運んでいた。

その中で生徒たちは、ノートやプリントを鞄に押し込んでいた。



図書室には、普段よりも生徒が多く訪れていた。

普段は「5冊まで」と書かれている貸出案内が、今は「10冊まで」と手書きで書かれた紙が貼り付けられていた。


図書室のカウンターでは、司書教諭でもある秋が貸出業務をこなしていた。

カウンターの前には夏休みを前にした生徒たちの列ができ、中には両腕で本を抱える姿も見られた。


咲もまた、詩集、エッセイ、小説などを手にして並んでいた。

すぐ後ろには、文庫本を数冊持った悠の姿があった。


「藤音さんも結構借りるんだね」


悠が小声で言うと、咲は肩越しに少しだけ笑う。


「うん。全部読むかは分からないけど……とりあえず借りちゃおっかなって」


そのとき、咲の順番が回ってきた。

カウンターにいた秋に咲が本を差し出すと、秋はそれを受け取りながら言った。


「夏休みは読む時間がたくさんありますからね。ごゆっくり」


「はい。ありがとうございます」


それから後ろにいた悠の順番になり、本を差し出すと、秋はその背表紙を眺めながら言った。


「日向さん、良いチョイスですね」


「はい。なんとなく、気になっていたシリーズを選びました」


悠がそう答えると、秋は貸し出し処理をして、悠へと渡した。


貸し出しを終えたふたりは図書室を出て、夏休み前の弾んだ雰囲気の校内を並んで歩いた。


楽しそうに歩いている生徒たちとすれ違うたびに、

「海、どこ行く?」

「カラオケ行きたいな」

「免許取りに行くの楽しみだね」

と、夏休みの予定と思わしき会話が、楽しそうな声色で聞こえてきていた。


昇降口を抜けて外へ出ると、まだ日差しは高く、空は透き通るような青さだった。

はるか遠くに入道雲がそびえ立ち、夏の本格的な始まりを伝えていた。


帰り道を並んで歩くふたりに、夏の風が吹きつける。

熱気が、咲の体をわずかに汗ばませた。


「日向くんは夏休み、何か予定あるの?」


「ちょっとバイトする予定。それ以外はあんまり出かけないかも。藤音さんは?」


「ううん、私は特に……。いろいろ読んでみようかなって思ってた」


悠は「そっか」とだけ答えると、帰り道を歩き始めた。

咲もその横に並んだ。


なんてことのない会話と、帰り道。それが、いつの間にかいつも通りになっていた。


夏休みはすぐそこだった。

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