テストの後で
中間テストが終わった日の午後の図書室。
ふたりはテストの前と同じ席に座っていた。
今日ふたりが手にしているのは文庫本だった。
教科書と参考書は、カバンの中で静かに眠っていた。
ふと、悠が本から顔を上げて咲に話しかけた。
「藤音さん。テスト、どうだった?」
咲も本から目を離し、少しだけ考えてから答えた。
「うん。まあまあ、かな。手ごたえは悪くなかったかも……日向くんは?」
「そっか。俺も、たぶん、なんとか。前より手ごたえあり」
ふたりは顔を見合わせて、わずかに笑った。
「……なんか、今回は、いつもより勉強がやりやすかったかも」
咲は机の夕陽と影の境目を見ながら、ぽつりと言った。
「……うん、俺も」
ひとりじゃなかったから、と言う言葉をどちらも形にしないまま、ふたりともまた読書の時間に戻っていった。
外の光は、いつのまにか傾きはじめ、
木々の影が図書室の床に静かに揺れていた。
途中、悠は下校時間まで時間があるにも関わらず、荷物をまとめていた。
「藤音さん、俺、今日は先に帰るね。ちょっと買いたい本があって」
「あ、うん。……珍しいね。図書室に入るのを待ってみたら?」
「いや、漫画だから……。ほら、有名な長期休載作品あるじゃん、あれの新刊が出るから、楽しみでさ」
「あー……タイトル、わかっちゃった。人気だよね」
咲はなんの漫画かわかった。少しだけ目を通したことがある。
……凄惨なシーンが多くて、読むのをやめてしまったけど。
立ち上がった悠は咲に声をかけながら、小さく手を振った。
「じゃ、そういうことで。また明日」
「うん。また明日ね」
咲も小さく手を振り返した。
いそいそと図書室から出て行く悠の背中を、咲は見送った。
それから咲はしばらく本を読んでいたけど、空いた斜め向かいの席が少しだけ物足りなく感じ、早く帰ることにした。
帰り道、悠の話していた漫画を、そのうちちゃんと読んでみようかなと考えながら帰路に着いた。




