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優しい灯  作者: 豆大豆
1章
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テストの前に

二年になって最初の中間テストが近づいていた。


咲と悠は、自然と図書室で勉強するようになっていた。


席は図書室の奥。窓際の、静かな一角。

席を一つずれながらも、向かい合って座っている。


いつもなら、ふたりは文庫本を手にしていることが多い。

だけど今は、教科書と参考書が並んでいた。


「……藤音さん、ちょっといい?」


悠が、小さな声で尋ねる。


「うん?どうしたの?」


「国語のテスト範囲って、今日の授業したとこまでだっけ? それとも昨日まで?」


「昨日までのところだと思ったけど……ちょっと待ってね、確認してみる」


咲はノートを開き、パラパラとページをめくっていく。

そして、最後のページを開いて、悠に向けた。


「うん、昨日のところまでで大丈夫みたい」


そう言って咲がペンで指し示したのは、ノートの左上に小さく描かれた猫のイラスト。

吹き出しには、柔らかな手書き文字で「範囲はココマデ」と書かれている。

悠の目が、そこにくぎ付けになった。


「ありがとう……。ふふっ」


悠は礼を伝えたあと、少しだけ吹き出してしまった。


咲が首をかしげると、悠が続けた。


「ごめん、猫の絵がかわいくて、つい」


「あ……。変、かな?」


咲の声に、わずかな照れが混じっていた。


「ううん、可愛いと思う。ややカタコトで喋ってるのも、個人的に好き」


「そ、そう?……ありがとう」


“可愛い”と“好き”という率直な言葉。

男子から発されたそれに、咲はほんのり頬に熱を感じていた。


それ以上の会話はなく、ふたりとも自分のノートに向き合い、テスト範囲を必死に頭に詰め込んでいた。



やがて、下校のチャイムが鳴る。

周囲では、椅子を引く音と、帰り支度をする気配が伝わってくる。


悠も、軽く伸びをしてから、丁寧にノートと教科書を閉じ、リュックへとしまい込んだ。


「よし、帰ろっか」


「うん」


それから、ごく自然に、ふたりで図書室を出た。


いつもはひとりで過ごしていたテスト勉強の時間が、ふたりでいるだけで温かなものになっていた。

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