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76話 ニュー高坂家という名の侵略基地

「凄いですね、こんなにクルマとやらが沢山」

「ユキたちの国はどれだけ人がおるのじゃろうな」


 ジュリエッタとユリアナは窓の外に流れる景色を飽きずに眺めている。高速に乗っているのでそれほど町は見えないがあちらからしたら十分人が多く見えるのだろう。これで都内とか行ったらどんな反応するか気になる所だが今日はひたすらに関越を北上だ。


 ユリアナはさっきまで張り切って片付けしていた疲れと、俺のそばにいる安心感からか俺の膝の上に頭を乗せて珍しく眠っていた。自然にこうなったのではなくうとうとしているので、ひざまくらして頭を撫でていたら寝てしまったのだ。

 深い藍色の髪を撫でてやると、もぞもぞと俺の膝の上で頭を動かす。がサンはもうこれくらいの接触では動揺もしないぜ。あ、自分で言ってダメージ受けた……



ここだ。と兄貴がクルマを止めたのはもうまっくらな森の中だ。街灯も少なくて昔だったらこえーって思ったかもしれないが、今の俺はかなり夜目が効く。

「へえ、建屋はそんなに広くないんだね」

「別荘だからな、敷地は由香里に聞いたと思うがかなり広い。で、そっちが倉庫だ。運輸会社と契約していてネットで頼めばそちらに納入してくれることになっている」

 別荘の脇に大きな倉庫が建てられていた。倉庫前にはトラックも止められそうな広さの駐車場も用意されている。倉庫と家屋は渡り廊下で繋がっていて、冬に雪が降っても中を通って行き来できるようだ。倉庫の中を覗いてみると、今はまだ一部しか使われていないが一つの棚にはお好み焼きの粉と業務用のでかいソースの缶がが大量に積まれていた。あっちに詰んであるのはお米かな?


「ここまで本格的だとは思わなかったけど、これで何するつもりなのさ」

「お前は世界を動かすんだろ? 今ある国とかの下で動くつもりがないなら、自分で今ある力とは別の力を持って動かせばいい。聞いた所そちらの文明レベルからすればどうとでもなるだろ」

「侵略する気ないからね?」


「なんか怖いこと話されてる気がします」

「都市同盟がユキ帝国になる人も近いようじゃな。皇帝の后か、想像もせんかったわ」

「私は亡国の囚われの姫ですね。あ、それもいい気がします」

ジュリエッタとリスティの話も突っ込みどころ満載だった。兄貴は、まあ冗談だ。と言ったけどどこまでが冗談なのか判ったもんじゃない。



家屋の中は、あまり家具とかは入っておらず、がらんとしていた。

「ゆっくんが帰ってきたから、もう引っ越し申し込んであるよ」

「俺達は2階を使うから、1階の部屋は好きに使え。まあまだ何も無いけどな」

必要な物は居間に置いてあるパソコンで通販で買えと。

「あ、こんなものとかもあるぞ」

と、テーブルの上にごとりとそれは置かれた。

「……こんなものってどこから手に入れたのさ」

「手に入れるだけなら金さえ出せばなんとでもなる。使ったりすれば足が付くかもしれないがそちらの世界までは捜査は及ばないだろ」

 それは黒光りする拳銃だった。ロシア製のやつかなグリップの所にある星マーク。無骨で、俺の小さい手にはちょっと余る感じ。


「ユキさん、これは何の道具なんですか?」

「俺らの世界の武器かな。人を殺すための」

「このような小さなものがですか……」

ジュリエッタは銃が気になるようで、俺と兄貴の会話に参加してきた。


「この穴から鉛の塊が飛び出して、敵を穿つんだ」

「……帝国でそのような武器が作られているというウワサがあります。真偽を探っているのですが、ようとしてわかってないんですが」

ちらっとユリアナの所在を確かめる。まだ先ほど横たえたソファの上で眠っていた。

「帝国の船で見たよ。これより大きいものだけど、鉄の玉を飛ばす兵器だ。ユリアナの住んでいた島もそれで襲われたらしい」

悲痛な顔を見せるリスティとジュリエッタ。兄貴にはもう話してあったので、表情は変えなかった。

まああの大砲のレベルからして、帝国にあるにしても火縄銃レベルだとは思うけどね。


「じゃあ俺は車を戻して元の家に帰るが、お前達はどうするんだ?」

と兄貴に聞かれ

「風呂入ってからあっちの世界に戻るよ」

俺がお風呂と口にしたら、むくっとユリアナが身体を起こした。ちょっと寝ぼけながらカバンの中を探り出した。いや今日は簡易風呂はいらないからね?

「そうか。由香里は……ああ判った。幸弘、由香里を頼む。あまり無茶するなよ?」

「え、由香里ねーさんもう来るつもりなの? 寝る所とか着替えとかは?」

というとしっかりと旅行カバンを持っておられた。もう想定済みだったらしい。引越しはいいの? と思ったがもう殆ど荷造りは終わっていたらしい。食器とかももう閉まってあるから最近はずっと使い捨ての食器で過ごしていたらしいよ、マジ遅くなってごめん。



「じゃーん、これがこのニュー高坂家自慢の大浴場だよっ」

ポンプで汲み上げる必要はあるが、源泉掛け流しの超贅沢お風呂だ。多分俺が入ると言い出すだろうと、ここに着いた段階で、温泉を汲み上げていてくれたらしい。広い浴槽になみなみとお湯があるのを見るだけでワクワクする。硫黄などは含まれていない単純泉らしく、お湯はさらさらとしている。

アンチエイジングとか美肌とか必要ないからそれで十分だ。

広い浴室に、大きな窓と天窓。電気を消したら星空を見ながら風呂に入れそうだ。屋内だけどかなり露天っぽい雰囲気はすばらしい。


「私は今日はいいから、ゆっくんごゆっくり」

と言って由香里ねーさんはフローリアを連れて脱衣場から出て行った。あの2人仲いいなあ。

そして残っているのは俺達4人。ユリアナはさっさと服を脱ぎ始めた。

「えっと、気恥ずかしいのうこれは……」

「私は二回目ですので……」

と、2人も服を脱ぎ始める。もしかしてと思ったけど、やっぱり一緒に入るつもりなのか。

普段無意識に拡げている空間認識を久しぶりにカットする。今日は肌色より、おれはこの温泉を楽しみたいんだよ……


 軽く湯を掛けて、まずは温泉にと思ったら洗う気まんまんのユリアナに捕まってしまう。髪は湯に入ってからと上にまとめ上げられ、用意されていたスポンジの柔らかさを確かめたあと石鹸をつけて俺の身体を洗い始めた。

リスティや、ジュリエッタもそのユリアナのやり方を見てスポンジで身体を洗い始めた。チラチラとこちらを意識しながら洗っているので、なんかエロちっくな感じだ。

「七日ぶりですけど、ご主人様ってぜんぜん汚れないんですね」

一応毎日、タオルで身体は拭いてたけどね。それでも旅が続いていたから流石にいつもよりは汚れていると思うんだが。

 

 今までのお風呂だと絶対洗わせなかったし、触らせなかったのだがあのルエラとの朝からルールは崩壊したようだ…… 

 制限解除がされたと判断しているユリアナは隅から隅まで洗ってくれる。本当に優しく壊れ物を扱うように。

ちらちらとその様子を横目でみながら身体を洗い、どこか赤くなっている2人。温泉に入る前にみんなのぼせてしまいそうだな…… ユリアナ以外。

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