40話 小遣い稼ぎ
フローリアはミルちゃんと遊ばせておいて、俺は街に出ることにした。イルカ亭なら信頼できるので問題ないだろう。流石に今度別れたらしばらく逢えないだろうしな。
さて、まず金策を考えないとなあ、と部屋を見ようと思ったらテーブルの上に付箋が張ってある『ゆっくん、これお願いね』 その下にあったのはUSBの延長コードがつながれたWEBカメラだった。あー、なるほど。
『うわー、凄いねー。ファンタジー映画にない生ナマしさだね』
まあ、普通にみな生きてるしなあ。
『妖精ちゃんとか飛んでないのね?』
ああ、あれはレアモンだからねえ。
ポケットからコードを出して、ジャンパーの襟にカメラをつけて、今街を歩いている。由香里ねーさんはその映像を見て大興奮中だ。ネットで流したりしなきゃいいかと、適当にOKしたが。ねーさんがあれ見たい、これ見たいというので中々進めなかった。
『ゆっくん、次そっちのお店みたい、あ、違うそっちじゃなくて右』
すっかりねーさんのリモコンカメラと化した俺はまたこの前訪れた洋品店へ。いろいろな服や、生地など細かくチェックさせられる。いつかそっちに行った時用に、と下着の縫製など細かく調べさせられた。特にブラには納得がいってないらしく、これはダメねと一蹴。俺なんか女性下着経験値が低いので、よく判らないがねーさんにとってはアウトだったらしい。
『ゆっくん、多分女の人相手に下着は売れると思う』
とお勧めされたが、これは縫製の人とかの仕事を奪いそうだな、いや売ったらすぐにコピーされるか。なら高級品志向で売るか……。と、そこまで考えて、ちょっと落ち込んだ。以前だったら女性物の下着なんてムリムリカタツムリだったが、すっかり平気になってしまった。慣れていくのね……と仮面をつけた兄貴をつい思い浮かべた。あご割れてないけど。
『なんか、犬っぽい人とか時々歩いてるのを見なければ、銃持ってない西部劇って感じね』
まあ、そこまで文化の違いは無いしね。魔法も使う人が限られてて、ホウキで飛んでる人も居ないし。
『この街を歩いているゆっくん見れないのつまんない!!』
とか言われてもなあ、USBコードこれ以上伸びないし、って、はいこれって持ってこられても困る。自撮り棒みたいの持ってあるいたら流石に注目の的だろ。
……負けました。俺は今ゆかりねーさんから渡された、長い竹尺の先にUSBカメラをつけて一人でロケやってる一人取材班だ。バザーを回りに気をつけて歩いている。
つかマジ大変なんですけどゆかりお姉さん? かわいーかわいー言われても嬉しくないし、背の低い俺が長い棒もって、混雑するバザーを抜けるってかなり困難なんですけど。もう周りからはムダに注目の的だ。珍しい民族衣装を着た美少女が、謎の棒もってニコニコしながら歩いてるとか、もう見るなっていう方がムリだろう。
「……お前なにやってんだよ」
目の前にはあのストリートチルドレンのボスだった、ちょっと小奇麗な格好になってるな。
「人に説教たれて、街去っておきながら1日で戻ってくるとかありえねーだろ。しかも、バザーのお客のジャマになってるじゃねーか」
どうやら彼もバザーの手伝いを始めたらしい。商売でまずは力をつけるつもりなのだろうか。
「お前に借りを叩きつけなきゃならねえ、って皆で踏ん張ってんのに目の前で遊ぶんじゃねーよ」
遊んでねえ、と言い返したかったが、どう見ても遊んでるようなので困った。
「魔法……の実験」
と小さなウソをついた。
「へぇ、自分の姿を周りから見えるようにする魔法ねえ」
いや、それは本当に使える魔法なんだが、そんなに疑わしそうな顔で見られてもなあ。あ、そうだ。ポケットに口を寄せて、由香里ねーさんにアレを頼む。そうすりゃ誤魔化せる、あ、逃げてもよかったんだっけ。
それをポケットから取り出す。由香里ねーさんに頼んだライブカメラ画像のプリントアウトだ。
「う、スゲーな、こんな絵みたことねーぞ」
「信じてくれた、んじゃ……」
「ってちょっと待ってくれよ。これっていくらでも出来るのか?」
あー印画紙どれくらいあったっけなあ。街猫写真のプリントアウト用にけっこう買っておいたはずだが。
「んー。それなりにできるけど……、キミたちの絵姿でも撮る?」
「いや、そんな事より、……金儲けしねーか?」
とボスガキが切り出した。
まず、彼は俺を色街に引きずっていく、そして綺麗どころの姉ちゃんに声を掛けて俺に魔法を使わせた、というか実際はライブカメラだから写しっぱなしなんだけどね。
そして、プリントアウトした写真を溜めていった。お前の絵姿も出しとけ、と言われて、何枚か言われるままにポーズを取っていたら由香里ねーさんがもうノリノリでプリントアウトしてくれた。
そしてバザーの端で、簡素なテーブルを持ち出してきて小芝居が始まった。
「すげーこれいきてるみたいだね」「えとはおもえないぜ」「綺麗ー」
テーブルに並べられた、街の綺麗どころの写真が並べられ、その前に子供たちがサクラをやっている。なんて棒演技なんだ、と最後の俺の写真を見て本心から言ってる女の子以外。俺はテーブルの横に置かれた小さなイスに座らされている。すげー居づらいんですが、この雰囲気。
ガキどもがわらわら集まって棒演技をしていると、なんだかんだと注目を受けてきた。
「なんとこの姉さんが、いまだかつて無い天才魔法使いさまだ。ちょちょい、と姉さんが呪文を唱えりゃ、目の前にいるやつの姿が絵になるって寸法だ。たったの5銀貨だ、どうだ試してみないか?」
とサクラの少女に話しかける。
「えっと、じゃあお願い」
と俺が渡しておいた銀貨が俺に帰ってくる。そして、WEBカメラでサクラちゃんを写して、周りに見えないように渡す。そして
「すごーい、これ私なのね」
とか大きな声で喋り、周囲から覗き込めるようにしている。やるなあお前ら……。そして次々に、周囲のガキどもが、あ、じゃあ俺も、私もといい始め、釣られるように通りすがりの旅人が
「あ、じゃあ俺」
といったらじゃ先どーぞって左右に別れて旅人をうながした。ダチョウか!!
それからはしばらく暗くなるまで大繁盛だった。ひっきりなしに並ぶ列に興味を引かれた人が、その人が喜んでいるのを見て興味を引かれるという連鎖で列は尽きなかった。
「おっと、悪いが姉さんが疲れちまったからココまでで終了な」
WEBカメラはライトが無いと綺麗に映らんので、そう伝えたら列を打ち切って終了となった。目の前の大きなの皮袋には銀貨が数えきれない程つまっていた。群集心理ってコントロールできると凄いな、あのガキは流石にしたたかに生きてただけあったようだ。取れよと、銀貨の詰まった袋を示される。
「キミたちの取り分は?」
と聞くも、
「お前への借りを早く返したかっただけだ、さっさと持ってけ。じゃあな」
と彼らは去っていった。俺は、残された銀貨のずっしり入った袋を持ってイルカ亭に戻る。そんなデカい貸しを与えたつもりはないんだけどなあ。
『あのコ、ゆっくんのコト好きみたいね。最初の一枚ポケットに入れたまま行っちゃった』
と由香里ねーさんがそんな気になる事を言っていたが、まさかな。つか男に惚れられても困る。私は幻影だったとか言って汽車に乗って旅立たなくてはいけない。
『でも、いっぱい売れたねー。ゆっくんの写真一枚も残ってなかったし』
そうなのだ、サンプル用にいろんなポーズを撮らされて写した写真がいつの間にか欲しがる客に売りつけられていた……。
あの写真たちが、ヘンな事に使われませんように……。俺はひさびさに本気で神に祈った。エリアなんちゃら神のため息が聞こえた気がした。




