↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来息子ヒーローたちに聞いてみた  作者: *ほたる*


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/6

もしヒロインが猫になったら?②

「聞いたか? 

 ハイレスのやつ、無事に猫になったリディーナ嬢を見つけて抱き上げたあと、部下に『陛下にはどう説明しましょう?』って言われて固まったらしいぞ」


 アレクシスの言葉に、エリアスが頷く。


「ああ。第二王子だしな。城の全面封鎖なんて、勝手にできる権限はないだろうな。

 ……どうしたんだろうな」


「さあな。そこまでは聞いてない」


「……怒られたんじゃないか?」


「まあ、怒られただろうな」


 一瞬、沈黙が落ちる。


「でも……」


 セシルが、遠慮がちに口を開いた。


「気持ちは分かります。もしキャリーさんが猫になったら、僕も必死に探すと思うので……」


 エリアスがぱちりと瞬く。

 アレクシスも小さく息を吐いた。


「まあ、そうだな。

 俺もセレスが猫になったら、冷静ではいられないだろう」


「……確かに。そう考えると仕方ないのかもな」


 エリアスが言った、その時だった。

 ノックとほぼ同時に、勢いよく扉が開く。


「歓談中に失礼します!」


 研究員の男が、息を切らして飛び込んできた。


「セシル! キャリアーナさんが研究室の薬品を誤って被って、猫になった!」


「……え?」


「そのまま逃げちまって、研究所は大混乱だ!」


 セシルが固まった。

 だが、次の瞬間には、口元に手を当てて考え込む。


「……猫になったとしても、人間の時と同じ魔力反応が残っている可能性があります」


 琥珀色の瞳が、すっと細められた。


「研究室に戻ります。反応を追える薬剤があるはずです」


「あ、ああ」


「それと、外へ出た形跡はありますか?」


「今のところない」


「なら、まだ研究所の敷地内にいる可能性が高いですね」


 セシルは少し考え、


「この時間なら……厨房か、温室でしょうか。キャリーさんは寒いところがあまり得意ではありませんから」


 そう続けた。


「研究所の皆さんにも、手分けして探してもらえますか?」


「もちろんだ!」


 セシルはアレクシスたちへ向き直る。


「すみません。少し失礼します」


 軽く頭を下げる。


「行ってこい」


 アレクシスが短く返す。


 扉が閉まった。

 廊下の向こうから、すぐに声が聞こえてくる。


「門番にも確認してください。外へ出る猫を見ていないか聞いてみましょう」


「分かった!」


「温室は僕が見ます」


 足音が、遠ざかっていく。


 しばしの沈黙。


「……あいつ、十三歳だよな?」


 エリアスがぽつりと呟いた。


「ああ」


 アレクシスも閉じた扉を見つめたまま頷いた。


 ――しばらくして。


「突然退出して、すみませんでした」


 扉が開く。


 戻ってきたセシルの腕には、小さな黒猫が収まっていた。


「見つかったのか?」


「はい」


 セシルがほっとしたように微笑む。


「温室の植木鉢の陰に隠れていました。元に戻す薬も注射したので、時間が経てば戻るはずです」


「へえ」


 エリアスが一歩近づき、黒猫を覗き込む。


 艶のある黒い毛。

 小さな耳に、丸い蜂蜜色の瞳。

 セシルの腕の中で、ぴたりと身を寄せている。


「可愛らしい猫じゃないか」


「はい」


 即答だった。


 琥珀色の瞳が、愛おしそうに黒猫へ落ちる。


 セシルが指先でそっと頭を撫でると、キャリアーナは安心したように目を細めた。


「皆さんには随分ご迷惑をかけましたから。あとでお礼をしておきます」


 そう言って、ふんわりと笑う。


「無事に見つかって、本当に良かったです」


 エリアスがセシルを見つめる。

 猫を見る。

 もう一度、セシルを見る。


「……ほんとに十三歳か、お前」


「しっかりしてるな……」


 アレクシスも感心したように息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。