もしヒロインに親しげに話す兄がいたら?
《カイエン》
「...!?フィオナ??」
彼女の頭に触れそうになる男を見て、
カイエンは一歩、前に出る。
「......何をしている」
低く、抑えた声。
無意識にフィオナを背に庇う。
「彼女に、近づくな」
鋭い視線で相手を見据えた、その直後。
「......兄、だと?」
一瞬、言葉を失い──
すぐに姿勢を正し、深く頭を下げる。
「申し訳ない。完全に俺の勘違いだ」
僅かに頬を赤らめ、
誠実に、はっきりと謝罪する。
***
《ルシアン》
「......?!」
大股で素早く近づく。
彼女の頭に男の指先が触れようとする寸前、パンッと払いのける。
「......君、僕のクラリッサに何の用?」
紅の瞳が鋭く光る。
「──何勝手に触ろうとしてるの?」
冷たい視線に
場の空気が一気に冷える。
「...…兄?......へぇ?」
一瞬目を見開くと、口角が僅かに上がる。
「......そんなに似てないんだね。
次からは気をつけて」
昏い瞳で彼を見据える。
「たとえ兄でも、僕のクラリッサに触れるなら──容赦はしない」
***
《ハイレス》
「......っ!」
ハッとして目を見開く。
彼女の頭に、男の指先が触る寸前──
一瞬だけ彼女を抱き寄せ、前へ出る。
「お前!リディーナに何する気だ!
こいつは泣き虫で、すぐオロオロして......だから」
男を睨みつけ、叫ぶ。
「──勝手に触るな!!」
「......え?......兄??」
一気に首まで赤くなる。
気まずそうに下を向く。
「......すまない。後日、改めて謝罪する。
──行くぞディー」
彼女の手を取り、その場を離れる。
***
もしヒロインに親しげに話す兄がいたら?
《フロード》
「......っ!」
驚愕に目を見開く。
「それを、俺に振るのか?!」
視線をわずかに下に落とす。
「......あの時は、悪かった。
もう、蒸し返さないでくれ」
頬をほんのり赤らめ、
聞き取れないほど小さな声でポツリと呟く。
「──正直......この場から消えたくなる」
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