異世界ご飯は、食べ慣れた味。
Ep.3pまで毎日朝7時に更新!
リビングはきちんと片付いていて、生活感がある。
棚にはガラス製の瓶や薬草の容器がきれいに並んでいて、
ほのかに草の香りがする。
部屋の中央にはソファーと低めのテーブル、
その下にはネイティブ柄のラグが敷かれていた。
リリサ(エプロンをつけながら)
「ソファーに座ってて、すぐ用意するわ。」
ティナ
「は~い。」
そう言い残し、キッチンへ向かうリリサ。
ティナ(小声で)
「どっこいしょっと……ふぅ。」
ティナ(部屋を見渡す)
「(思ってたより、ちゃんとした“家感”あるな……」
部屋の片隅には、ブラウン管テレビのような物、昔ながらの黒電話のような物もある。
ティナ
「(なんか、わたしん家にちょっと似てる気がする……
じいちゃん、『壊れてねぇのに、買い替える必要なんかねぇ!』って古い家電ずっと使ってたもんなぁ)」
ぐぅ~……
ティナ(お腹をさすりながら)
「お腹すいた……朝からなんも食べれてないんだもん……」
ティナ(ハッとして)
「……いや、ちょっと待って。」
ティナ
「“異世界のご飯”ってどんなのが出てくるんだ……?」
ティナ(想像中)
「(魔物の肉とか……?
いや、あのリリサって人、エルフだよね。
エルフは肉食べないイメージ……)」
ティナ
「(ってなるとキノコ料理とか、サラダとかかな……
あ、この前読んだ漫画、“異世界ムカデ”とか“異世界カエル”食べてたな……)」
……
ティナ(背筋がゾッとする)
「無理無理無理ッ!! さすがにムカデは無理だって!!
でもじいちゃん、カエルは鶏肉みたいで美味いって言ってたような……」
ティナ
「(せめて……せめてカエルとキノコのスープとかにしてください……!)」
キッチンから、甘く香ばしい匂いが流れてくる。
ティナ(くんくん)
「あ、めっちゃいい匂い。
でもなんか、嗅ぎ慣れてるような……?」
---
しばらくするとリリサがお盆を持って、リビングに現れる。
リリサ
「お待たせ! さぁ、早速いただきましょう。」
ティナ
「(来たッ!初異世界飯! どうか、虫だけは勘弁して……ッ)」
リリサ
「口に合うといいのだけれど……」
本日の献立。
・お赤飯
・尾頭付き鯛の姿煮
・はまぐりのお吸い物
・タコの酢の物
……
ティナ
「……え?和食ッ!?」
ティナ
「そして祝い膳ッ!?
わたし今日、七五三だった?」
リリサ
「この世界ではね、お祝いに小豆ともち米を一緒に炊いた物を食べるの。」
ティナ
「こっちの世界もだよ!!
リリサさんが作った料理、わたしの世界での祝い膳フルコースだから!!」
リリサ
「あら、そうなの?
だって今日は、ティナがこの世界に来てくれたお祝いの日じゃない♪」
ティナ
「そうかもしれないけどさぁ……わたしのドキドキを返してよぉ……」
リリサ
「何を緊張してたの?」
ティナ
「だって異世界だよ!?よくわかんない魔物の肉とか、
ムカデとかカエルとか出てきそうじゃん!」
リリサ
「……失礼ね。
うちは普通の食事しかしないわ。」
……
リリサ
「ムカデは、非常食。」
ティナ
「ヒェッ!?」
リリサ
「冗談よ♪さぁ、冷める前にいただきましょう。」
ティナ
「心臓に悪い冗談はやめてください!!
(まぁ、普通の料理が出てきて良かった……のかな)」
ティナ&リリサ
「「いただきます。」」
……
ティナ、背筋良くピシッと正座。
リリサ
「あら……」
鯛の煮付けを丁寧にほぐす。
ヒレを取り
中骨に沿って身に箸を入れると
骨から白い身がほろりと離れる。
リリサ
「(この子、とてもお行儀よく綺麗に食べるのね。素晴らしいわ!)」
ティナ(煮付けをひと口)
「……なにこれ!? この煮付け、めちゃくちゃおいしいんだけど!?」
リリサ
「口に合ったみたいで良かったわ。」
ティナ
「このお吸い物も出汁が効いてるし……
わたしの大好物だったじいちゃん手作り“肉じゃが”を超えた……!」
リリサ
「ふふっ、それは良かった。
それよりあなた、お行儀よく食べるのね。箸の持ち方も完璧だし、魚のほぐし方も綺麗。」
ティナ
「あー。わたし、じいちゃん子なんで。
ご飯の食べ方とか、お残しとかすっごいうるさかったんですよ。」
リリサ
「なるほどね。教育熱心で良いおじい様だったのね。」
ティナ
「ですかね?食以外は割と適当でしたよ。」
---
食後。
ティナ&リリサ
「「ごちそうさまでした。」」
ティナ(ご満悦)
「ふぅ〜。お腹いっぱいで幸せ〜。」
リリサ(食器を片付けながら)
「食後の一服はコーヒー?それとも紅茶が良い?」
ティナ
「あ、緑茶はないんですか?」
リリサ
「ごめんなさい。うちにはコーヒーか紅茶しかないの。」
ティナ
「そっかぁ……じゃぁ、熱い紅茶で!」
リリサ
「はい、じゃぁちょっと待っててね。」
---
数分後。
リリサが湯気の立つ2つのティーカップを持ってくる。
リリサ
「はい、どうぞ。」
ティナ
「いただきます。」
――ズズズッ……!
ティナ
「はぁ〜、やっぱ食後のお茶はあっついのじゃないと!」
リリサ「……え?」
――ズズズッ……!
リリサ
「……あなた、紅茶をそんな音立てて飲むのね。」
ティナ
「え?だめなんですか?」
リリサ(小さくため息)
「いいえ、なんでもないわ……
(さっきまでお行儀よくご飯食べてた子と同一人物よね……?)」
ティナ
「???」
リリサ
「ねぇティナ、そろそろお風呂入りましょうか?」
ティナ
「あ、お風呂あるんですか!?
てっきり異世界だから川とか井戸で水浴びとか……」
リリサ(ピクっ)
「……この家には、ちゃんとお風呂もあるわよ。」
リリサ、キッチンの壁の方を指差す。
見覚えのあるデジタル表示の給湯器リモコン。
「運転」
「浴室優先」
「41℃」
「お湯はり」
「追い炊き」
――どこかで見たことあるボタン配置。
ティナ
「しかも全自動!!
わたしん家、まだレバーガチャガチャするタイプなのに!!」
リリサ
「さっき沸かしておいたから、すぐ入れるわよ。
先に行ってらっしゃい。」
ティナ
「完全に負けてる。うちより進んでる……」




