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転生はかすり傷に入りますか?――エルフJK、好物は干し芋。  作者: ひなゆづ
転生直後編

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ガサツJK、美少女エルフに転生する。


毎週 月・水・金 更新! 小ネタは不定期に更新!


湖畔の街。

エルフの家。


ティナ

「うちのじいちゃん、口癖で“死ななきゃ、かすり傷”ってよく言ってたんですけど……」


リリサ

「良い格言ね。」


ティナ

「転生ってかすり傷に入りますか?」


リリサ

「……1回死んでるじゃない。」


ティナ

「でも、魂は生きてますよ?」


……


リリサ (涙目)

「……ごめん、わかんない……」


ティナ

「“あなた”が“わたし”を転生させたんですよ?」


リリサ

「だ、だって……

私は妹が欲しくて……」


---


――数時間前。


春の朝。薄いカーテン越しに、やけに元気な太陽。


早野ソラ (15歳彼氏無し)は、布団の上で仰向けになったまま、スマホで動画を見ていた。


ソラ

「……あと、この動画だけ……」


5分経過。


ソラ

「……もう1個……いけるか?」


さらに5分。


ソラ(ハッとして)

「……やばくない?」


ガバッ、と上体を起こし、時計を見る。


8時15分。


ソラ

「うわッ!最悪!!」


布団から飛び起き、

そのままダボダボのジャージ姿で部屋を見渡す。


散らかった机。

読みかけの漫画。

脱ぎっぱなしの上着。

飲みかけの缶ジュース。


女子力をどこかに投棄したような部屋。


ソラ

「(帰ってから片付けるか……やる気があれば……)」


ジャージを脱ぎ捨て、いつものセーラー服に着替える。

洗面所で歯を磨き、顔を洗う。

鏡を見るといつもの天パーのボサボサ頭。


ソラ

「うん、これなら寝癖はバレないな。」


……鏡を凝視……


ソラ

「てか、わたし自身“どこから”が寝癖かわからん。」


ドタドタと廊下を走ると、台所から声が飛んでくる。


祖父

「ソラ〜、朝飯〜!」


ソラ

「無理!遅刻する!!」


祖父

「コラッ!!

飯を無駄にするんじゃねぇ!!」


食卓には、おにぎりと緑茶。


ソラ

「わかったよ!!  

おにぎりは持ってくから!!

ラップに包んで!」


祖父

「忘れずに、ちゃんと持ってけよ。」


ソラ(お茶を一気飲み)

「はいはい、そういえばさ、今日テストあるんだよ。」


祖父

「ほー。」


ソラ

「全然勉強してない☆」


祖父

「いつも通りじゃねぇか。」


ソラ

「うん。否定しない!」


……


祖父

「まぁ、大丈夫だ。死ぬわけじゃない。」


ソラ

「雑すぎない!?」


玄関まで早歩き。


ソラ(靴を履きながら)

「もうちょい真面目に心配してくれてもよくない?」


祖父

「いいか、ソラ。」


ソラ

「ん?」


祖父

「死ななきゃ、全部かすり傷だ。」


ソラ

「……またそれ?」


祖父

「テストで赤点取ろうが、生きてりゃ儲けもんよ。」


ソラ

「はいはい。」


ソラ(手を振りながら)

「じゃ! 

行ってきまーす!」


祖父

「気ぃつけてけよー。」


ソラ

「(まぁ、なんとかなるっしょ。

だいたい、今までもそうだったし。)」


---


ソラ、おにぎりを頬張りながら駆け足で通学中。


角を曲がる。

横断歩道。

信号無視のトラック。


――パァァァァァンッ!!


ソラ

「えッ!?

なんでこっち青信号――!」


――ドンッ!!!


ソラ、盛大に空中に投げ出される。


ソラ

「……ッ!?!?」


――ドサッ!!


ソラ(瀕死)

「……うぅ……ッ

あ……おにぎり……

じいちゃんのおにぎりは……?」


おにぎり、現在も空中で放物線を描き中。


ソラ

「地面に……落ちても……

3秒ルールだ……か……ら…… (ガクッ)」


――視界が真っ白になった。


---


――目を覚ます。

ふかふかのベッド。

木とハーブのような香りが鼻をくすぐる。


ソラ

「ん……?」


天井が木目。


ソラ

「ここ……どこ……?」


木造の部屋。

壁際には本棚と小さな机。

床は綺麗に磨かれていて、生活感はあるが――


ソラ

「……病院じゃないよね?」


窓の外は真っ暗。

部屋の中はランプの灯りで暖かみのある橙色に照らされていた。


ソラ

「……夜?

たしか、わたし学校に行こうとして……」


脳裏にフラッシュバック。

赤信号、トラック、けたたましいクラクション音と滑空おにぎり。


ソラ

「そっか……

あの時、わたし……」


ソラ

「まさか死んだ?」


ソラ

「……」


ソラ (真顔)

「いや、最後に見た景色が“空飛ぶおにぎり”ってどうなのよ。」


ソラ

「まぁ、しょうがないか。

つまり、ここは天国ってことかな……?」


ソラ (冷静に辺りを見回す)

「天国ってもっとこう……

雲の上の世界でふわふわポワポワなイメージだったんだけど。」


ソラ (感心)

「意外と庶民的なんだなぁ。」


ソラ

「……」


ソラ

「じいちゃん……ごめん……

“かすり傷”じゃ済まなかったっぽい……」


――ガチャッ。


突然、扉が開いた。


ソラ (ビクッ!)

「うわぁッ!?」


扉の向こうから栗毛の長髪の女性が現れる。


ソラ

「誰ッ!?

(めっちゃ美人な人来たッ!)」


女性

「✳︎△※♢✧……?」


ソラ

「……は? 

(何語?全然わかんないんだけど!)」


女性は困ったように首をかしげ、ポーチから小瓶を取り出す。

瓶の中には淡く光る液体。

女性は“飲む”ジェスチャーをしてソラに差し出した。


ソラ

「……飲めってこと? 

毒じゃないよね……?」


ソラ

「いや、毒でもいいか。

もう死んでるんだし。」


ソラ、女性から小瓶を受け取り蓋を開ける。


――ゴクリ。


甘い香り。喉を通った瞬間、視界がわずかに揺らぐ。


女性ドキドキ

「――どう? 

言葉、通じてる?」


ソラ

「えッ!? 

言葉がわかる!日本語みたいに……!」


女性(ほっとして微笑む)

「うん、よかった。効いたみたいね。」


ソラ

「効いたってなに?

どういうこと!?」


女性(嬉しそうに)

「成功ね!」


ソラ

「成功? 

あなたは一体何者なんですか?」


リリサ

「私はリリサ。この家でポーションの研究と開発をしているエルフよ。」


ソラ

「え?

エルフ……?」


よく見ると、彼女の長い髪の間から細く尖った耳が覗いている。


ソラ

「(まじで!? エルフ耳だ……

天国って普通、天使がラッパ吹いてるんじゃないの!?)」


ソラ

「え、えっと……

ここは天国じゃないんですか?」


リリサ(手を振り)

「天国?違う違う。

ここは魔王国。」


ソラ

「魔王国!?」


リリサ

「あなた、転生したの。

魔法であなたの"魂"を、この体に呼び寄せたのよ。」


ソラ

「転生……? 

って事は、わたしやっぱり死んだんですか?」


リリサ

「転生されたってことは、そういうことになるわね。」


ソラ

「魔王国ってことは……

魔王がいるんですか?」


リリサ

「ええ。いるわよ。」


ソラ

「そんな……

漫画やゲームみたいな世界にわたしが……?」


ソラ(ハッとして)

「って事は、あなたは“チュートリアルのお姉さん”!?」


リリサ (即答)

「違う。」


ソラ

「違うんかい!

てっきり今からこの世界のルールとか、

武器の装備の仕方とか説明してくれるのかと思ったのに!!」


リリサ

「武器の装備?

正当な理由が無い限り武器を持ち歩いたら“銃刀法違反”で捕まるわよ?」


ソラ

「え?

思ってた異世界と違う……!」


リリサ

「そんな事より、まずはこれを見てほしいの。」


リリサが鏡を差し出す。


ソラ

「鏡……? 

なんで……?」


おそるおそる覗き込むと――


ソラ

「!?!?」


金髪の少女。

絹のような髪。

大きな青い瞳。

整った顔立ち。

そして――長い耳。


ソラ

「はぁ!?

わ、わたしが……美少女エルフになってるぅ〜〜!?」


…数秒の沈黙…


ソラ

「ま、待って!!

鏡、バグってない!?

誰この可愛い生き物!?」


リリサ

「落ち着いて。説明するわ。」


ソラ

「落ち着けるかーー!!」


ソラ、自分の頬をつねる。


ソラ

「いだだだッ!! 

夢……じゃない……ッ!」


リリサ

「だから、落ち着いて?

はい、深呼吸。

吸って。」


ソラ

「スゥー……」


リリ

「吐いて。」


ソラ

「ハァー……」


リリサ

「落ち着いた?」


ソラ

「……はい。ちょっとだけ……」


リリサ

「じゃぁ説明するわね。

鏡に写ってるのは紛れもなくあなた自身。

とっても可愛いでしょ?」


ソラ

「はい。

まるで絵に描いたような可愛さで――」


リリサ (鼻息が荒くなる)

「でしょ!?

私の理想の全てを注ぎ込んだ体なの♪」


ソラ

「え?」


リリサ (説明スイッチON)

「まずねッ!?

その繊細でシルクのような髪質とその大きな青い瞳に長いまつ毛さらに小ぶりだけど筋の通った鼻筋とナチュラルに薄めのピンク色のくちびる――」


ソラ

「あなたも落ち着いてッ!?

どこで息継ぎするのか心配になったわッ!」


リリサ

「あ、私ったら……

ごめんなさい、興奮しすぎたわ。」


ソラ

「とりあえず、深呼吸してください。」


――スゥー、ハァー。


リリサ

「ようするに、転生魔法を使ったのは私。

呼び寄せられたのがあなた。」


ソラ

「なんでわたしが選ばれたんですか?」


リリサ

「転生魔法ってね、用意した体と相性の良い魂が呼び寄せられるの。

誰が来るかは魔法次第だけど。」


ソラ

「つまり、運ってことですか?」


リリサ

「そうね。

ちなみに、あなた何歳だった?」


ソラ

「え……

15歳ですけど……」


リリサ

「ってことは、学生さん?」


ソラ

「はい。今年から高校通ってました。」


リリサ

「ちゃんと女の子だった?」


ソラ

「JKでしたけどッ!?

見ればわかりますよね!?」


ソラ

「……って今は自分の体じゃなかったんだ……」


リリサ(ガッツポーズ)

「……大成功……ね!

長年の努力が報われたわッ!」


ソラ(ドン引き)

「なにこの人、いきなりガッツポーズ決めてきて怖いんだけど。」


リリサ

「正直ね、こんなに完璧に転生魔法が成功するなんて思ってなかったの!」


ソラ

「一か八かだったんですか?」


リリサ

「そうね!

もしかしたらあなたの魂とこの体の波長が合ったのかしらね♪」


ソラ

「波長って……

わたし、こんな可愛い姿に波長合う程、女子力高くなかったんですけど……

彼氏いない歴=年齢だったんですけどッ!?」


自分で言って少し悲しくなった。


リリサ

「でも魔法が成功したって事は、この美少女ボディと相性抜群だったって事よ。」


ソラ

「えっ、待って……

素直にちょっと嬉しいと思ってる自分がいるんだけど。」


リリサ

「あとね、新しい名前も、考えてあるの♪」


ソラ

「名前?」


リリサ

「そういえば、あなたの名前は?」


ソラ

「早野ソラです。」


リリサ

「ハヤ……ノ? ソラ……?

この世界には合わない名前ね。」


ソラ(ジト目)

「……」


リリサ

「あなたは今日から“ティナ”ね。」


ソラ

「ティナ……? 

なんか可愛すぎないですか?」


リリサ

「エルフ語で“小さな花”って意味よ。」


ティナ(ソラ)

「なんだ、キラキラネームかと思ったら……

エルフ族からしたら“花子”ってことですね?」


リリサ

「……急に年齢層高めになりそうな解釈やめて?

よろしくね、ティナ。」


ティナ

「えぇ〜……

ソラのままがいいなぁ……」


リリサ

「私が一生懸命考えた名前なのよ?」


ティナ

「う〜ん……まぁしょうがない……

この外見ならティナでも違和感ないか!」


リリサ

「ええ♪

とっても似合ってるわよ♪

それと今日から、私と一緒に暮らすことになるわ!」


ティナ

「え!? 

なんで!?」


リリサ

「なんでって…… 

異世界に来た15歳の女の子が、1人で暮らせると思う?

家の借り方とか、お金の稼ぎ方とか全部知らないでしょ?」


ティナ

「……たしかに……

ぐうの音も出ない……」


と言った瞬間、ティナの腹が“ぐぅ〜”と鳴った。


ティナ

「……ッ!?」


リリサ

「……」


リリサ (真顔)

「出たわね。ぐぅ〜って。」


ティナ (赤面)

「だって、おにぎり食べてる途中で事故ったんですよ!?

お腹空いてるんです……」


リリサ

「ふふっ。

じゃぁまずはご飯にしましょうか。」


ティナ

「……まぁ、こうなってしまった以上しょうがない……

なんとかなるっしょ!大体いつもなんとかなってたし!」


リリサ

「ふふっ。

じゃぁ今からご飯作るから。

ティナの為にちょっと“特別”なメニューを考えてるの♪

さ、リビングへ行きましょう♪」


ここまで読んでいただきありがとうございます。


以前までの1話、ギャグコメじゃなかったですよね?

って事で改稿しちゃいました。

面白かったら評価押して応援してほしいな♡

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