実験
おまたせしました
「見つけた」
白露の眼前に脊髄と一体化した極小の端末を近付けた。白露がゴキブリを発見したかのような顔で端末を見ている。かわいい。
端末といえばいいのか、肉の塊と言えばいいのか、時空の歪みというべきか、とにかく異様な物質だ。
「形が不安定な極小の物体、ですか」
「これだ、多分これが擬人共のDNAに何かしらしている可能性は捨てきれない」
「なるほど、これを弄るわけですね」
「そういうことだ」
さっきから擬人がうるさい。猿ぐつわだけでは足りなかったか?いや、反応は実験には大切だ。我慢するしないか……。
「黙れ……貴様が生きているのは偶然にすぎないんだぞ。立場を自覚し、私達に協力しろ。代わりはいくらでも居るんだぞ」
「んぅうっ!!んーーー!!んーーーーっ!!」
「このクソ害虫がっ!!一旦死ぬか?」
「白露……実験動物を殺すのは良くない。死ぬなら実験してからだ。いいだろう?」
危なかった……丁度女とふたなりが揃っていたのに殺されては実験動物が揃わなくなるところだった。
白露が信じられないような顔をして、やがて複雑な顔になって拳を下ろした。気持ちは分かりすぎるほど分かる。
「どうせ中毒になって死ぬ。そこまで抑えてくれ……な?」
「……ええ、分かっています。分かっていますとも。続けましょう」
「あぁ……早く終わらせよう」
「んーーーっ!!んーーーーっ!!」
本当にうるさい……やはり黙らせるべきだったか?いや実験体を無駄にするわけにはいかない。我慢だ……。
しかし、この端末はどういった働きをしているんだろうか。叩いてみるか。何かしら起動するかもしれない。
「ん゛ーーーっ゛!!」
「なんだ?様子が……」
「んぐっ!んぐっ!!むーーーーっ!!」
叩く箇所によって反応が微妙に違う。感覚器官に影響を与えているのか?思った以上に重要な器官のようだ。
突く場所と反応を詳細に記録に残しておく必要がある……長丁場になりそうだ。
「白露……メモを頼んでもいいか?」
「もちろんです。今の部位は?」
「10nm,5nm。痛覚」
「了解です。次は──」
──数時間後──
「0.5nm,6nm。快感」
「……っ!!記録しました!!」
「ここが作動しているうに誤魔化す。やることは多い」
「頑張りましょう!!」
──さらに数時間後──
「出来た……投与実験を開始する!白露、抑えは頼んだぞ」
「任されました!」
快楽変換部位を刺激されたかのような錯覚を引き起こさせる波長の魔力を特別な媒体を用いて経口接種させる。
「……素晴らしいっ!!素晴らしい!!」
「まさか全身の穴という穴から体液を吹き出すとは……最ッッッッ高ですね」
想像以上にあの器官が脳内物質を操作しているようだ。擬人が見せるあの異様な信仰もこれの賜物か?
いや、違うな。だとすればあの二人は脳に深刻な異常をきたしていたはず……いや、両親ならなんとかできたのか?
なんにしてもこんな事をするような存在を神と認めることは到底出来ない。神は、いずこに居られるのだろうか。
「この端末を誤魔化せたはいいが、人間のの魔力を直に流した場合も試さなければ……」
「そうですね。魔力変換機能を停止させる必要があります……流してみましょうか」
「そうだな」
「んぅぅぅうぅぅぅう!!」
──3時間後──
「……出来た。これで奴等を徐々に崩壊させられるはず!!」
「早く!早く試してみましょう!!」
「あぁ……!!」
擬人に糸塊で出来た丸薬を飲ませると、体に真っ青な線が走り始め、体中の血管という血管から血が吹き出した。
そして、体中から骨が折れる音が響き渡り心臓から魔力が吹き出し、生命活動が完全に停止した。
「「おぉ……!!」」
「この純度を下げるとどうなりますかねぇ。くくくくくく、くかかかかかか!!」
そう……これは高純度だからこうなっただけのこと。ばら撒くのは低純度の物。だから仕組みに気付く奴らもその時には手遅れ。
「さぁて……付き合ってもらいますよ。代わりはいくらでも居ますからねぇ……」
「んーーっ!んーーーっ!!」
──朝日が登る頃──
「渡してくれっ、それっ、それがないとっ!!どうにかっ!!あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「いい感じに仕上がりましたね」
「あぁ……依存性も十分だ。流石はドーパミンとでも言うべきか、いやもしかしたら違う科学物質かもしれないが」
「ささいなことですよ」
こちらを覗く白露の目に隈が出来ている。疲れたんだろう。俺も疲れた。白露が優しく橙色に輝いている。
もう朝か……徹夜がこんなに辛いのはいつ以来だろう。泥のように眠りこけたい。ベッド……ベッドは……?
「はい、大丈夫ですよ〜」
「眠気、眠気がっ……!?」
「飛ばしました。正確に言うと、脳と体に8時間程度の疲労回復をさせました。大丈夫、膨張した脳細胞にかかる負担も飛んでます」
「そうか……そうかぁ……」
次は一週間後です




