シナリオⅣ 4 前章 第10話〈後編〉
(^ー^)ノ前章最終話…後編です。
シナリオⅣ 4.10〈僕らには皆運命があるのか、それとも風に乗ってただ彷徨ってるのか?
たぶんその両方だろう。両方が同時に起こっているんだ〉
I don’t know if we each have a destiny, or if we’re all just floating around accidental-like on a breeze. But I think maybe it’s both.Maybe both are happening at the same time
草創歴0449年7月(7/15)〈後編〉
ヒカルがキースヴェルヌと相対した同刻、御霊の怒りがヒビヤの動きを妨たげていた。
にも関わらず「摩多羅號」から飛び出し、結界因子「太陽を統べる者」(ジ・ヘリオドムス)を顕現し、紅蓮の焔と化して空間を飛翔する。
それは「摩多羅號」に迫り寄る母体等を迎撃する為の決死行に等しい。
「式神」たる母体は、まさに無尽蔵のごとく現れ、船内への侵入を試みる。
そうはさせじと、相位空間を足場代わりにし、ヒビヤは遠距離からの狙撃に終始する。
ヒビヤの放つ火種の業火が、その肉体の核たる、内側の霊符へと転移し、その身を次々に焼き墜としてゆく。
「…この船を墜とすわけにはゆかぬっ!!」
だが、あまりにも数が多い。
現在、「摩多羅號」の「ソウティウス(星辰公)エンジン」の推進以外の余剰エネルギーは、「円盤型重力変成機関」に於ける「有の力学」(アクィジッシオ)の再充填に回され、迎撃能力を失っていたのだ。
ドカァァーーーンン!!
「摩多羅號」の第一外殻が大破した。
…撃ち洩らしたか。
だが、船体に取り付いた母体等が粉微塵に砕け散る。
『兄さんっ、こっちは任せておきなっ!!」
待ち受けていたウリュウ・テウスズウが侵入者を叩きのめす。
土蜘蛛が圧倒的な肉弾戦を披露して見せた。
「まだか、レーヴ殿!?」
守るはヒビヤとウリュウの二人のみ。
レーヴ・ソムニウムは「円盤型重力変成機関」と、「樺色の声院」(ヴァーバル)から持ち出した「夢改変機構」との接続処理に勤しんでいた。
彼等にとって、これが唯一無二の切り札にして、その中継人格としてレン・トゥス・セントマリアが瞑想の座に就く。
「微調整があっとちょっとなのですが…。」
このレン・トゥスを中心にして「御霊曼荼羅」が展開されていた。
「ソウティウス(星辰公)エンジン」が焼き切れる寸前まで、この「もっとも神に近しい者」との意識同調係数の安定維持を図らねばならない。
レーヴとて切迫していた。
『先生!第三区画が中破です。侵入者がありますっ!』
船体コントロールを任されたナウリが悲鳴を上げる。
ウリュウ殿が撃ち漏らした敵か?
否、その気配は知己の者。
…座するレン・トゥスに忍び寄る魔の手。
モタイ・メノウダイの「式神」と化した、「ドミュニエイティス・アミュレット」が闇より浮かび上がる。
かつての同胞が、その悪意に操られたままに、この「御霊曼荼羅」に介入を果たさんと踏み入ったのだ。
「ぐっ!?」
レーヴが制止する間もなく、レン・トゥスは弾き飛ばされ、もんどりうった。
「いかん!これを失えば、もはや打つ手が無くなるぞ!」
「御霊曼荼羅」を我が物にせんとするドミュニエイティス・アミュレットを、その男が中心で組み合い、対峙した。
レン・トゥスと入れ替わり、それを成さんとするはマカ・ロン・タオである。
彼の『多聞星』の血統因子により、鋼の障壁が付与され、ドミュニエイティス・アミュレットをジリジリと押し出してゆく。
『愚かな…貴様ごときに…この菩薩位の呪…受け切れると思うてか?』
「やるならやってみなっ!」
『臂釧・腕釧如意珠王…。』
「御霊曼荼羅」が変質する。
赤光が無数の腕を成し、マカ・ロン・タオの肉体を絡め取り、縛り上げる。
御霊の怒りを宿す禍々(まがまが)しき輝きだ。
「がっ…こ、これはっ…?」
苦鳴が口を突く。
肉体に残された鬼脈が吸い上げられてゆく。
血の気が引いてゆく。
「いかん…マカ・ロン、引け!」
フラつきながらも立ち上がったレン・トゥスの目の前で、マカ・ロン・タオが崩れ落ちた。
「マカ・ロンっ!!」
叫びざま、レン・トゥスは法具「硨譆羅胎蔵法輪」を放った。
赤き護法気を纏いし円輪の刃が無数に分裂し、ドミュニエイティス・アミュレットを切り裂いた。
『……。』
かに見えたが、鬼脈の力を逆に操られ、その刃が船体を内部から破壊する。
レン・トゥスもまた、反撃を受けて胸部に深い傷を負った。
「っっっ…おのれ…。」
もはやここまでか…そして今また、彼等の前に立ち塞がるべく現れし者あり。
今や「法王院棺護軍」大将となった背徳の将、「ミュウ・カトー・ジュスオ」。
冷酷無比なれど、仮面の女傑「ハーリィー・ハーピーズ」もとい、エポナロッド・キロペーに心酔する男である…。
「…御霊は既に、モタイ・メノウダイによって支配されたと言うのに、鬼脈の力を源とする護法天道(ディ-ヴァ)で対抗させようなどとは愚の骨頂よな。」
彼の言葉は冷ややかであった。
「 だが、ヒビヤ達に船を守らせたのは良き判断だ。鬼脈の力以外でなくば、彼等は討てぬ…このようにな。」
造作も無く、ミュウ・カトー・ジュスオは、その刃「倶利伽羅封剣」を用いて、「御霊曼荼羅」の中央に立つドミュニエイティス・アミュレットの眉間を貫いて見せた。
ドシュッッ!!
『!?』
抜き身の「切支刀」が、眉間に位置する霊符を的確に貫き、彼の『毘』が、その霊子の形成を無効化する。
呆気に取られたのはレーヴとレン・トゥスのみならず、討たれたドミュニエイティス・アミュレットと、それを支配するモタイ・メノウダイも同様であった…。
更には、その間接ダメージは本体にまでフィードバックし、御霊そのものが苦痛に蠢き、憎しみに打ち震えた…。
これは御霊と一体化したモタイ・メノウダイ故の盲点でもあり、この一瞬の間隙を産んだのは彼の『毘』あってこそだった。
「何をしている!!この場の守りは、このミュウ・カトー・ジュスオが受け持つ。一刻も早く、御霊曼荼羅を完成させよ!」
背徳の将の筈が、それこそが彼の待ち望んだものであったのか。
これを契機に、一時、母体等による攻勢の手が止み、ヒビヤは胸を撫で下ろす。
「摩多羅號」はその隙を突き、御霊の中心部へと加速する。
摩多羅號の周囲を、流れ行く歪んだ景色が過ぎ去っていった。
それに何の意味があったのかは定かではない。
おそらくは過去の情景か。
…ともあれ、前方に『阿羅漢呪宝』が浮かび上がる。
「種子」を中核とした『阿羅漢呪宝』を守護する最大の関門こそが、「海府の郷」(ニライカナイ)の長にして、エポナロッド・キロペーとして素顔を露わにした仮面の女傑であった。
『妾の願いを妨げんとする痴れ者よ…そのニライカナイの力で妾を止められる思うのならば、甚だ見当違いぞ。』
『阿羅漢呪宝』に降り立ったヒビヤとウリュウに警告を与えるエポナロッド・キロペー。
「…エポナロッドよ、元より私とあなたの力の出所は同じ…相殺するのが関の山よな?」
互いの力の源泉は、生体プラント「結界神殿」から引き出される「ニライカナイの力」。
「何故、そうまでして天都の郷 (ディウム)に歯向かおうとするのか?我々、綿津見までも巻き添えにし、何を得ようと言うのだっ!」
『ヒビヤよ…お前には判らぬ事よ。これは妾の悲願…いや、妾達、カインの娘に代々受け継がれる憎しみの連鎖を断ち切るが為の私憤。』
…「カインの娘」とは何なのか?
それは「結界神殿」を管理する為に造られた、記憶と因子を引き継ぐ調整体の総称であり、カインこそが「天都の郷」(ディウム)の始祖と伝わる。
『妾も含め、お前達、綿津見も然り、海府の郷 (ニライカナイ)は全てに於いて造られたもの。カインの造り上げた、滑稽なる模造品の箱庭…そんな物に何ら価値を見出せぬ。』
自由が欲しいのだと訴える。
だが、価値があるかどうかを決めるのは、個々の価値観によるところが大きい。
他人が決めるべき類いのものではあるまい。
それを一笑に伏し、エポナロッド・キロペーは、我が元に綿津見等を転移させる。
続々と現れ出でる綿津見達。
彼等の「ディヴァナガライ粒子砲」が火線を放つ。
『こいつらは俺様に任せな、兄さんっ!!』
火線を弾き返しながら土蜘蛛が笑った。
彼等を一手に引き受けるはウリュウ・テウスズウ。
今一人は「摩多羅號」から飛び出した、ミュウ・カトー・ジュスオである。
ミュウ・カトー・ジュスオの「切支刀」が綿津見達を蹴散らかす。
『…やはり、妾を裏切る為に懐に入り込んでいたか…その魂はかつての如来位ならば…致し方無い。』
対峙せしヒビヤを前に、彼女の余裕は感に触る。
「あなたのやっている事は、天都の郷 (ディウム)と何ら変わりがない!!我々、綿津見はあなたの玩具ではないっ!」
『知ったような事を…だが、だからこそ、誰かが変えねばならぬのだ!』
彼女の言葉には憂いと共に狂気が満ちている…。
『そうでなければ、我々の未来は閉ざされたも同然。遺伝子は劣化を余儀なくされ、子も産まれぬ。種としても我々は終わっているのだ。』
エポナロッド・キロペーの狂気の哄笑が空間を支配する。
だが、その哄笑が不意に途切れた。
綿津見達の火線が一斉にエポナロッド・キロペーを貫いていたのだ。
『……!?』
それは呆気ない幕切れであった。
誰も予測し得ない、凄惨な光景である。
エポナロッド・キロペーの肉体は紙切れのように弾け飛んだ。
…綿津見達を先導する者がヒビヤに歩み寄った。
「…ロム、お前か?」
ロム・テッド・ラーマス、その素顔は「カインの子」。
彼もまた、記憶と因子を代々引き継ぐ特殊変異体。
なれど、それは「天都の郷」(ディウム)からの刺客。
『ああ、私だ。』
その前身、「東海の鬼兵団」(オリエンス・ドウティアンス)の団将、シェイン・ティアンコンとは同体であり、彼の死を以って記憶を継承し、ここに覚醒を果たしたのだ。
その顔も瓜二つであった。
予備となる肉体を複数確保する調整体であったが、それはエポナロッド・キロペーとて知る術の無きこと。
『さあ、ヒビヤよ。御霊を封じるが良い。今を逃しては好機はないぞ。』
「ロム…お前は一体?」
助言を残し、ロム・テッド・ラーマスは振り返る事もなく姿を消した。
綿津見達もそれに続いた…。
言わずもがなと、レン・トゥスは「御霊曼荼羅」を発現させる。
そして、ミュウ・カトー・ジュスオが「種子」を切り裂いた。
キィィィ………ィィィン!!
種子が砕け散り、「ノレアの霊位」が解き放たれ、輝きが迸り、空間を光が満たしてゆく。
…ヒビヤは見た。
皇女陛下「セラフィン・オルド・ハナ」の哀しき微笑みが御霊を押し包んでゆく様を…。
交差してゆく魂とそれぞれの思い。
刻と場所を超え、セラフィンの手がテリオの手を繋ぎ止めた。
我が姉の手の感触を、確とテリオは感じ取っていた。
…我々は何処で道を間違えたのであろうか?
シピン家とは「法王院」を監視するべく送り込まれた造られし一族であった。
それに反旗を翻した制裁として、植え付けられた劣化遺伝子。
その結果、一族は長じても二十代半ばまでの限られたテメロア(寿命)を持つ。
憎むべきは「海府の郷」(ニライカナイ)なれども、「天都の郷」(ディウム)の技術がなくば、これを治療する術も無いと判明した。
故に、エポナロッド・キロペーの野望を利用してでもと、その誘いに乗ったのだ。
その思いに触れ、ヒカルの心の動揺は天地を揺るがす程であった…。
キースヴェルヌの魂の慟哭は我が妹、オリファ・シピンだけでもと…その思いからの行動原理であると知れた。
ああ、既にキースヴェルヌの死期は到達していたのだ。
その為に、帝国から技術提供を得て、永劫種の血をオリファと共に移植し、その死期を延ばす為の処置まで行っていた。
…そのオリファを抱き締めたまま、ヒカルは流転する。
キースヴェルヌの願いに触れ、一方のテリオは反感を募らせた。
レオは同情に傾き、ヒビヤは狼狽える。
互いの思いが交わり、混沌とした最中に崩れゆく本州島アイゾンゲウアイスオ島。
「何をする気だ!?」
止めようとするレン・トゥスを顧みず、ヒカルは「ティアマトの瞳」を再起動せんと手を伸ばす。
それが大地の崩壊を加速させた。
崩壊しながら、急激に浮力を失い降下してゆく大地。
「やめるんだ、ヒカル殿っ!!」
…だが、ヒビヤの声はヒカルに届かず。
鬼脈を断たれた「ティアマトの瞳」は、その持てる霊子のみで大地を支えるに不十分であった。
結果、オルカイ区を残し、大地に亀裂が走り、他の区画が切り離され空中で分解してゆく。
ゴゴゴ…ゴゴゴゴォォォ…ゴゴゴゴォォォンンン!!!
多くの民を飲み込み、悲鳴が木霊する。
それはまさに、阿鼻叫喚の地獄絵図と言えた。
消えゆく記憶の中で、エポナロッド・キロペーは我が身を「結界神殿」に捧げんと願った。
この身を以って、この大地の災いを如何ばかりか鎮めようと。
それが我が贖罪とばかりに…。
心なしか、幾分落下のスピードが弱まったかに思えた。
それが「ニライカナイの力」かは知る由も無い。
シナリオⅣ 4 前章 完
(^ー^)ノ後章ではガラリと舞台を変えまして…学園編になります(?)
ヒビヤはどこへ…??




