シナリオⅣ 4 前章 第1話〈前編〉
(^ー^)ノ場所は変わって南東諸島群…ヒビヤの物語の開始ですw
プロローグ(序の4)
草創歴0449年5月(5/13)
…まず始まりに御霊がありき。
遠き東方辺境より「日弓の巫女」と称する女行者が訪れ、これを鎮め奉った。
大洪水の後、御霊山にて鬼道院が興る。
これが冬歴2000年の事である。
刻は流れ、草創歴62年、名を法王院と改め独立国を宣言し、今に至りて「ケルーナー法治国家」を標榜す。
されど、その法は「法王院」の定める法律に則り、絶対君主として君臨せし。
長らく「ケルーナー法治国家」(ファズペイゴジャ)は他と隔絶し、隣接国「摩皇軍」との小競り合いに終始してきた。
しかしながら、荒天の風が吹き荒び、中央大陸南東諸島群と呼称される島々にも風雲急を告げる。
本来は温暖な風土であり、この異常寒波は北部「アン・ノウン海域」上空にて反時計回りに渦巻くジェット気流が原因であった。
極地渦と呼ばれ、通常はこの流れが海域に寒気を閉じ込める役割を果たしている。
しかし流れが弱まると、ジェット気流が蛇行して中緯度の地域まで下りてくるため、この地域に寒気が進入していた。
こうした変動を極地振動と呼ぶも、依然として、その原因は究明されていない…。
第参帝国総軍は極地渦と共に来りて、寒気と共に南東諸島群を席巻するものかと思われた。
しかし、これを率いる肆(四)大総統の一人、仮面の女傑「ハーリィー・ハーピーズ」は、ケルーナー法治国家を目前に捉える孤島スジャンに居を定めたまま、不穏なる沈黙を貫く。
中央大陸北西部に於ける帝国の進軍は著しく、法王院は交渉の場を作ろうと譲歩の構え。
この時期、交戦を回避する為の様々な伝手を探っていた。
ボサボサに伸びた前髪をかきあげ、付着した霜を払い、溜め息をつく。
この6月の最中だと言うのに、この地域には極めて稀な雪が降り始めている。
噂には聞いてはいたが、よもやの気象兵器と思しい。
この規模の魔道術式を人の手で創り出すには、維持する為の触媒も常軌を逸すると予測される。
錬金道を併用しているにせよ、だ。
それ以外となれば、記憶媒体と符合し、思い当たるのは霊子機関「ティアマトの瞳」ぐらいか…。
それはラーマス族の残せし遺構。
法王院に請われ、「北極の学問の塔」(コネサンストゥール)から派遣され、調査を開始してから約2週間。
疎らに伸びた顎髭を撫であげ、塔の学者であるレーヴ・ソムニウムは独り言ちた。
…ここが退き際か。
立ち去るのは容易い。
だが、レーヴ・ソムニウムの足を止めさせたものは、荒天の空に開いた「扉」の軌跡であった。
「…扉が開き、時代が動き出すか…塔主エノイキアン・ダイダロス大老の星見通りだな。」
その場所も、ここより程近いようだ。
今しばらく付き合うのも面白ろかろう、と。
シナリオⅣ 4.1〈僕らには皆運命があるのか、それとも風に乗ってただ彷徨ってるのか?
たぶんその両方だろう。両方が同時に起こっているんだ〉
I don’t know if we each have a destiny, or if we’re all just floating around accidental-like on a breeze. But I think maybe it’s both.Maybe both are happening at the same time
草創歴0449年5月(5/12)〈前篇〉
例えようならば、それは海と海との境界線の狭間か?
彼方にあると伝わる魂の故郷…「ニライカナイ」かと錯覚する。
それは古くから南東諸島群に伝わる、精霊達が産まれる聖域の名称。
先程までの景色が一変し、傍らにあった友の姿も今や定かではない…。
耳にあるのは、脆弱なるさざ波が繰り返し響き渡るだけ。
しかしこれは、霊子の流れが形造る可視化された仮想現実に等しい。
恐らくは、霊子機関によって形成された空間に紛れ込んだと思しい。
いや、送り込まれたと言った方が正しいか。
不安が脳裏を過る…。
私の推論が確かであるのなら、彼女が何かを目論んでいるのはまず間違い無い。
かの女傑、ハーリィー・ハーピーズ。
仮面で素顔を隠そうとも、その素性が想像通りならば、私達をここへ送り込んだ思惑も察しがつく。
恐らく、彼女は始めるつもりなのだ…「天都の郷」(ディウム)との戦争を。
シナリオⅣ 4 前章 序説
此度、「ケルーナー法治国家」側の名代として参列する旨となった「ヒカル・マデュスティック・リユセ」。
国家当主「キースヴェルヌ・スウイツエ・シピン」の代任権威官としての参内である。
会談の場として設えられた小島は、ケルーナー法治国家本州島アイゾンゲウアイスオ島を構成する島群、レンユにほど近き島の末端。
ハーリィー・ハーピーズ率いる第参帝国総軍が鎮座するスジャン半島である。
無論、ケルーナー法治国家の領域内不法占拠である事は言うまでもない。
胸中たるや憤慨やるせないまま、素顔を仮面で覆い臨んだ交渉の場である。
ヒカル・マデュスティック・リユセの苛立ちは手に取るように判った。
この地方独特の強い陽射しと潮に焼かれ、小麦色の肌色が一般的な中にあって、彼の透き通る程の青い肌色は極めて人目を引く。
尚且つ、端正ここに極まれりな眉目秀麗さに、異彩を放つ幻想的なエメラルド色の瞳。
人を引きつけ魅了する相貌も、当の本人は至っての堅物。
武骨者とは、ここ南東諸島群の武者を蔑称する呼称ではあるが、反骨精神をも象徴する言葉だ。
言うなれば、見た目に反してヒカル・マデュスティック・リユセは、まさに無骨武者の代表格であると言えよう。
神秘感が漂う伝統的な東洋風甲冑を身に纏い、重厚な金属の重なりが擦れ合い、猛々(たけだけ)しい反響を廊下に生み出している。
粗くも大胆な色彩の装飾が映える武骨な形状。
それはケルーナー法治国家が擁する最強の戦闘集団「法王院棺護軍」の証である。
「まあ、交渉役は私が引き受けるから、君はリラックスしたまえ。」
苦虫を噛み締めるかのような表情のヒカルを横目に、回廊を進む黒貌の鎧騎士らに囲まれ、緊迫感 漂う中にて自信過剰にも私は言い放つ。
飄々(ひょうひょう)として掴み所が無い者だと評されるが、その評価は不本意この上無い。
サフィナノフ島のホスアン家と言えば、長らく当主シピン家を支え立つ分家筆頭の家系。
尚且つ歴代に於いて、多くの摂政官を生んできた。ましてやこの私は「学術院」出身首席である。
毛色は珍しくもケルーナー法治国家、鎮政府付きの筆頭摂政官にて、国家当主「キースヴェルヌ・スウイツエ・シピン」直属の宮廷魔術士が私である。
本来、宮廷魔術士と言う役職は風習としてこの地に存在しない。
魔道が疎んじられているせいもあるが、土着の民は外部放出系魔道の資質を持ち得ず、戦技に特化した内部錬成型魔道「六世奥義」の血筋を強めていった。
それが武骨なりし武者の風習とも言える発展を遂げた。
なれば、その役職名はヒビヤが独善的に名乗っているに過ぎない。
とは言え、本人はその名称を大いに気に入っていたし、他者が何を言おうと知った事では無い。
国家当主もまた、良い興じ事だとそれに乗っている。
だが、このヒビヤ・ホスアン、その思慮策謀にかけては右に出る者無しと自認する。
元より、縁深きとは言え、堅物のヒカル殿に交渉が務まる筈も無く、私を副官として選択するのも妥当なところか。
頓に付けても、第参帝国総軍の不穏な動き。
ここに来ての、突如に秘密裏な会談の提案と合意。
腑に落ちぬ所は多々あるが…。
「何も心配する事はないぞ。いざとなれば、このヒカル・マデュスティック・リユセ、一命を賭して敵大将の身印を上げ、宮廷魔術士殿だけでも脱出させるに厭わぬ所存。」
「…相変わらず、怖い事をさらりと言う男だな。ヒカル殿は余計な事を言わなくていいからね。」
敵懐の内にあって、そう断言してしまう心の持ちようは大胆不敵なれども、手綱の握りようによっては破滅一直線。
こんな男が「法王院棺護軍」大将にて最強の男、「緑光石のリユセ」と称されるわけであり、女子供の羨望の的であるわけだ…。
幼少期より剣の才能無しと見限られた身としては、そんな単細胞達を尻目に勉学に励んできた訳であるが、何故か彼とは馬が合うと言う始末。
「はっはっはっ…何を言う!生憎、我が誉高き法王院を侮辱する輩ときく口を持ち合わせておらん。」
「こらこら、声が大きい。思った事をそのまま口にするんじゃありませんよ。」
切れ長の瞳で一瞥し、窘めたところで効果なしと諦めているのか、ヒビヤ・ホスアンの歩調に淀みはない。
そうは言いつつも、その道のりに至る構造をつぶさに観察し、記憶してゆく。
残念ながらも我が友は、憂慮の事態を想定していても、猪突猛進で切り抜ける気であろうな…。
それにつけても、僅かに数週間で、この規模の館を築き上げたと言うのは驚嘆に値する。
木造建築が常たる南東諸島群に於いて、大理石を用いた石造りの重厚感に目を奪われる。
我らが国家当主の鎮座せし鎮政府に匹敵する巨大な西洋城塞だ。
しかしながらも、黒髪の宮廷魔道士は困惑する。
どうも嫌な予感はしていたものの、回廊の配置からして、確かに中心部へと向かいはすれども、内部構造的に脱出経路が狭まってゆく。
即ち岐路が乏しい迷路のようで…。
謁見の間に続くと思われた扉が軋みを立てて開かれた。
ギギギィィィ…。
思わぬ陽光が目を突き、ヒカルは目を細める。
「おお、中庭か!こんな場所で会談を開くとは風流であるな。」
大迎にも進み出たヒカルの足元の地に、進路を妨げるかのように弓矢が突き刺さる。
「貴様ら、どう言うつもりかっ!?」
カッと目を見開き、睨み上げるヒカル。
鎮政府にも、それは美しき情景を形どった庭園がある。
侘びと寂びとを渾然一体に体現する憂愁の美よ。
されど、さも珍しき平面幾何学式庭園に目を奪われ、取り囲まれていたとは失念の至り。
「ぬうっ!このヒカル・マデュスティック・リユセ、一生の不覚っ!」
既に退路は絶たれている。
庭園に配された伏兵を見抜けなかったのは、ヒビヤ・ホスアンも同じであった…。
(^ー^)ノしょっぱなから前後編でごめんなさいっ。




