シナリオⅣ 3 前章 第1話
プロローグ(序の3)
草創歴0449年6月(6/28)
文明の中心地、隆盛を誇る中央大陸に於いて、草創歴成立の刻より四百余年が過ぎ去りし凋落の兆し。
大小入り乱れた国家は長らく覇権を競い合ったものの、約38年前の「英雄戦争」以来、その戦火は鎮静化を経ていた。
これを乱すは、中央大陸北西部に位置する旧ソルティア公国。
ラシュア・エクナスが公爵位を継承し、草創歴443年に「帝国」を名乗りて蜂起した事に端を発する。
まず手始めに隣接するラ・ウル公国、マイルウェスト公国、アスハダルト公国の三国へと進軍を果たし、圧倒的な手腕によって、これを同時期に降して見せた。
恐るべきは、周辺国を遥かに凌駕する高度な錬金道(科学)に特化した軍事力にあり。
その象徴が、天蓋を覆い尽くすかのごとき「帝国領 壇上伽藍」。
それは浮遊する山のごとき移動城塞である。
この力を以ってして、草創歴449年4月16日、中央大陸北東に位置するジ・ハド煌王國を陥落せしめた。
それは、如何なる場所であろうとも、その脅威から逃れる術は無いとの標榜となり、多くの大国を震撼させた。
そんな暗雲渦巻く中央大陸へと、この呪われた海域を越えてまで、命からがら辿り着いた者たちの姿があった…。
中央大陸の外周海域を覆う暴風雨は、次元間の捻れ現象から産み出された半永久的に続く現象である。
この中にあっては、耐久力の低い通常の人種(魔道の加護の無い者)は精神力を蝕まれ、思考を停止した廃人と化すに1時間とかからない…。
これが世に伝わる、原因不明の「渡海死人病」である。
だが、彼等は全くそのような現象には縁が無いと言わんばかりに、東方辺境と称される大陸からの密航を成し遂げていた。
飾り気も無い一枚横帆による、東方辺境特有の一般的な和船で…である。
全くもって自殺行為に等しい。
ふぁ〜っと欠伸声を上げて、横たえた身を起き上がらせた青年は、その陸地を目の端に捉えるや、喜び勇んだ。
「おい、リンベルっ!リュー!見ろよ、あれが中央大陸だぞっ!!」
いても立っても居られぬとばかり、潮を切る船縁にしがみ付き、期待に胸躍らせる。
まるで子供のような笑顔だ。
やれやれとばかりに、まさに武人と言うべき姿身の青年が帆柱から離れた。
帆柱を背に腕組みをしたまま、昼夜絶え間無く警戒を怠らぬ静寂な面持ちの偉丈夫である。
一方、独特の和装の着物を身に付けた少年は、この憂鬱な船酔いからやっと解放されるのかと、眩い陽光を見上げた。
三者三様、各々の思いを胸に抱いたまま、彼等を乗せた帆船は漂着する。
その先にあるものは夢か希望か、はたまた悪夢か?
それは「大いなる円環」(アルス・マグナ)のみぞ知るところであった…。
シナリオⅣ 3.1〈光の中を1人で歩むよりも、闇の中を友と一緒に歩むほうがいい〉
I would rather walk with a friend in the dark, than alone in the light
草創歴0449年5月(5/8)
天を焦がす戦火の柱。
飛び交う怒号に、逃げ惑う人影。
そこはカルムヴィル(静謐なる都市)に隣接する姉妹都市「星見台」。
冬歴4436年、約450年前にトゥト・クリシュナにより設立された「黄金宮」を運営する為に建設され、旧議会都市群では最も新しい都市である。
黄金宮は中央大陸に於ける、全ての職種ギルドを統括する組織であり、依頼窓口たる「金眼の社」及び、ギルド間の仲裁を司る「巡検士機関」を内包する。
帝国にとっては大いに目障りな存在に違い無く、次なる標的とされるに時間は掛からなかった。
シナリオⅣ 3 前章 序説
帝国の軍勢は、第壱から第肆(四)総軍に分割され、それぞれが肆(四)大総統によって率いられている。
現在、各総軍は残るロン・タオ公国及びレイアーン公王国、その背後の「賢者の山」を同時侵攻の只中にあり、旧ソルティア公国首都「公領曼荼羅華」(現帝都)は後顧の憂いを断つべく、降伏勧告を迫った。
これに対して、黄金宮の総主「ゲレヒティカイト・クリシュナ・パトリ」は徹底抗戦の構えを崩さず。
各々が稀有な戦闘力を有する「調停騎士(ロゴス=シュヴァリエ)」を配し、籠城戦に備える。
とは言え、商業特化した行政区構想により建設された都市であり、包囲戦に不向きな低域外壁のみしか持ち得ていない。
都市内をクレットフロン(鶏の額)川が貫いており、この川の中州にある「占星術士の塔蓋」(アストロロジートゥール)を中心に、時計回りに20の行政区が並ぶ。故に、エスカルゴ市とも形容される。
「…市街地戦止むなし。」
ゲレヒティカイトは唱える。
歳経てはいたが、気高き佇まいは今も変わらず。
初老の威厳が加わり、より近寄り難き異彩を放つ。
それは実子でもある「ガチャトーレ・クリシュナ・ラ・ウル」にも明確に受け継がれている因子であった。
ウォルタン交易商会との物資供給の手筈を整え、ガチャトーレはやっとひと息をつく。
誰もが羨む美貌の青年。
だが、そんな彼に迫り来る悲劇を、今はまだ誰も知る由もない…。
「…ご苦労様。」
「金眼の社」の次期後継者にて、盟友でもある「ケンタ・ウルス・タングマアイ」が声を掛ける。
「ケンタ、この争いはどこまで続くのだろう…。」
年も近しい2人は友人でもあり、共に「黄金宮」を支えて行こうと誓い合った仲であった。
未来を憂う眼差しは同じ方向を見ていた。
「…大丈夫だよ。たった一つの国に、この世界が傾く程、俺達の世界は弱くはないさ。」
「ああ、ケンタ。そうだよね…。」
だが、そう思っていたのは錯覚でしかなかったのか?
…信じていたからこその絶望。
「馬鹿なっ!金眼の社が帝国の手引きをしているだと!?」
業火に彩られる「星見台」。
それはすべからず、内通者による調停騎士(ロゴス=シュヴァリエ)の召集妨害等、それを匂わす要素はあったものの、追及せぬゲレヒティカイトの落ち度でもあった。
…そして、その代償は、その命で贖われた。
「父さんっ!!」
ガチャトーレの悲痛な叫び声が木霊する。
彼の目の前で、無惨にも打ち捨てられる総主の骸。
ロビーに拡がる血潮の海。
占星術士の塔蓋 (アストロロジートゥール)の中も外も真紅に染まり、もはや何処に逃れようと言うのか。
「これより、占星術士の塔蓋 (アストロロジートゥール)の魔道回路を破壊する…。」
そう布告した、ケンタ・ウルス・タングマアイの「幽現の瞳」に宿る狂気を見た。
「なぜだ?そんな事をすれば、僕は…。」
そう、塔蓋と精神結合している「星見の因子」を有するガチャトーレにしてみれば、それを断たれる事は、自身の霊的存在の半分を剥奪されるに等しい。
その暴挙によって、何が起こるかも予測出来ない。
「…全ては、黄金宮を存続させる為だ。」
「ケンタ、本気で言っているのか?」
対峙するケンタの背後に、ひしめく刃の残光を纏いし軍勢の群れ。
どれも照り返す炎と、血潮を浴びて狂気に歪む。
騎士と呼ぶにはあまりにも不粋で、戦士と呼ぶにはあまりにも無骨で荒々しい。
まるで野盗かと見紛う集団だ…。
「何をしているっ!帝国に忠誠を誓うのならば、行動で示せっ!!」
人垣を割り、威圧的で大仰な風体の男はそう言うと、ケンタに詰め寄った。
野卑ではあったが、精悍な面持ちの男であり、オッドアイが印象的である。
彼等は帝国軍「豹牙」新設奇兵隊。
黄金宮攻略に当たり、急遽設けられたこの軍勢の母体は、言わずもがな、南ソルティア領内近郊で幅を利かせる山賊である。
山賊「白豹」。
その首領は「白豹の瞳のライ・ム」と称される。
その右眼は底知れぬ闇を孕む金の虹彩。対しての左は美しく透き通る白眼。
「ライ・ムよ、指図は辞めてもらおうか?これは私の役目だ…。」
睨むケンタの両眼が金眼虹色の虹彩を露わにする。
「金眼相」と呼ばれる、幽冥山女系の血筋と、黄道宮男系の血筋の交わりし一族、その純血種である証「幽現の瞳」。
その瞳はライ・ムの右眼と同一のものと見受けられる。
それを遮るかのように、黄道宮総主の命を奪ったその長刀「クロチェ・デル・スッド」を携え、己が間合いに進み出るは、黑装の若き剣士だ。
「彼はラ・ウルの公子の資格もある…禍根を残すよりも、今ここで命を獲るが早いのではないか?」
白豹の幹部が1人、タリズマーナ・ニア・アスハダルトであった。
戦慣れし荒くれ共に慣れども、その生来の気品は隠し切れていない。
何の因果か、既に墜ちたアスハダルト公国の公子でもある。
「…余計な事は辞めてもらおうか?これは私がお前達と、帝国に協力する為の、唯一無二の条件。その為に、私は親も兄弟も売ったのだっ!!」
一歩も引く気はあらず。
ここで約束を違えば、白豹と帝国との盟約も破棄されよう。
有無を言わせぬ。
彼だけは俺が守る…例え、逆賊と罵られようとも。
この後、帝国の支配に反旗を翻す民間組織「クリシュナ派」が台頭する。
それは草創歴449年6月初旬頃より活動が頻発化し始めていた。
これを先導するのは「賢者の山」に出自を有し、「賢者の称号」(ハイ・ダァト)を持つタマウガード・スパエラなる人物とされる。
だが、その名の由来も含めて、真の指導者が居るとの噂が絶え間なく広まりつつあった。
彼等が漂着を果たした6月28日現在、ガチャトーレ・クリシュナ・ラ・ウルの行方は杳として知れないままである…。
(^ー^)ノ主人公ヤマさんと、リンベル君とリュー君の絡みが中心の3章です。
準主人公はガチャさんかなw
3章のキャラも大半がtwitterの人を元にしてます。
また後半から前後編になります。文章量が多いもので〜。




