シナリオⅣ 2 後章 第2話
シナリオⅣ 2.12 〈愛は約束、愛は思い出の品。一度与えられると、忘れ去られることはない。決して愛を失くしてしまわぬように〉
Love is a promise, love is a souvenir, once given never forgotten,never let it disappear
草創歴0449年8月(8/11)
リョーガ・アベミグラトリアはその日、1人の男と遭遇し、言い知れぬ憧れ抱いた。
「…お願いしますっ!僕を弟子にしてくださいっ!!」
参ったなぁと言いたげな表情で、彼は自らの力の片鱗を披露したことが失敗であったと悟った…。
頃合いと思い、生死不明を装い戦場を離れ、久方振りにリア域を訪れてみれば、この青年に始終、付き纏われる羽目になってしまったのだ。
柄の悪い連中から助けたのが運の尽き。まあ、悪い子ではないようだし、この情熱はついぞ無くして久しく羨ましくもあるが。
私の名前?一つ前までは「ハウル」を名乗っていた。
…良い名が見つかるまでは、とりあえず、サーガイア…と呼んでくれ。
南部内陸リア域は、「アルピュタス聖不可侵域」の南に位置し、イストリア海に通じているコンクュエ(孔雀)湾に面した区域である。
「ゾンシン・リア(追放王の中央集権国家)」を中心とした5つの都市からなる、この発祥は草創歴68年、小国同盟による「中央騎士団」設立にまで遡る。
母体となった第三封都を中心に、フィデース・レグヌム(教皇國)キアを危険視するヨハナス王国、イラウス帝都、ライラティティア(幸運の街)が共同設立したこの騎士団は、草創歴92年「南大陸覇権戦争」に敗退し、南部内陸を追われ、この地に逃れた。
当時、この地方に存在するのは水底門の街、現在の「デウアンダヤン・リア(追放王の湾岸都市)」のみであり、この都市に保護された経緯を持つ。
後に、「聖ラムサ王國」(ハインリッヒ・ラムサ・ケーニクライヒ)の援助を受けて、草創歴100年、ゾンシン・リア(追放王の中央集権国家)を建国。
近代化と共に、リア域の俗称を得て、海輸都市国家としての流通を司るようになる。
即ち、中央大陸北部への最も安全な航路を有する玄関口でもある。
…リョーガがこの地を訪れたのは、無論、南部内陸を離れ、北部へ出国する術を探す為であった。
無期限国外への武者修行を理由に放逐された身である。
もはや、国外で華々しい成果をあげねば、「百人委員会」も認めてはくれまい。
マチュア・フリードニッヒ・エルの身は心配ではあったが、もはや己一つの身に出来る事も限られている。
だが、草創歴443年に旧ソルティア公国が帝国を名乗り蜂起して以来、全国の海域に海賊の出現が頻繁に見られるようになった。
特に航路アジスタ近郊の海域に出没するそれは規模が大きく、一般人の渡航は教皇会により自粛令が発せられていたのだ。
そんな折、故國を追われた若きレグルス(王太子)「ソウマ・ヴァストック・キア」が中心となり、対帝国同盟「カイト」を結成したとの喧伝を聴き、それは心強く、また羨望をも覚えるリョーガであった…。
そもそも「カイト」とは何だ?と聞かれても、皆は憶えてなくても、彼は確かに存在していたのだ。忘れもしない我が親友の名だ。
あれから30日が経過し、都市ライラに活動拠点を移し、クリシュナ派と共にソウマは日々忙しく交渉活動を行っていた。
隣接都市カルラでは、テオ・スティーリア・タクナリを長とした「巡検士機関」による、南部内陸ギルド再編成設立の協力関係にある。
対帝国同盟「カイト」所属国は…。
「大ハルゴニア王国 (バリショーイ・ハルゴニア・ツァールストヴォ)」
「ザンマルコ自治区 (セルフ-ガバニング・ザンマルコテリトリー)」
「アルカサンドリア(砂漠の民)」
所属同盟都市。
ライラ
カルラ
協力団体。
巡検士機関
クリシュナ派
「星寳」
現在交渉中の「モディアブル騎士団領」(オルデン・デ・カバリュア・ドミニオ)とフィデース・レグヌム(教皇國)キアを除けば、南部内陸に残す独立国家はリア域のみである。
タマウガード・スパエラの判断により、次の交渉相手はリア域と確定した。
既に義兄レン・スラスト・ヴァストックは単独先行し、現地で情報収集に当たっている。
今すぐにも出立は可能ではあったが、事後の処理を元モディアブル評議会「百人委員会」所属のディオニージ・アベデラピニャに任せる事とし、アベミグラトリア卿に対する恩赦嘆願の書状を書き上げ、持参するよう指示をする。
「では、ディオニージ殿、これをお持ち下さい。」
「はっ。確かにお預かりします。」
恭しく受け取るディオニージ・アベデラピニャ。事がこれで上手く運べばと、切に願うソウマの姿がそこにあった。
そうとも知らず、当のリョーガ・アベミグラトリアは、サーガイアと名乗る男に師事し、剣の修行に打ち込んでいた。
ゾンシン・リア(追放王の中央集権国家)にほど近いシャオメン(扉)海岸は人目につかず、砂地で足場の悪さを養うにはうってつけだと言うが、何を教えるでも無く、延々と素振りを繰り返させるばかり。
「サーガイア先生っ!本当に僕はこれで強くなれるんですかっ!?」
「疑うなリョーガ!どのような強者も、すぐにすぐ強くなった訳ではない。日々の鍛錬あるのみだ!」
「僕は先生を信じますっ!!」
何と単純で良い子だろう…間違った、素直な子だろう。
素地が未完成である分、教えがいもある。
ふと、異質な気配を察し、サーガイアはリョーガを呼び寄せた。
「水のざわめきに呼ばれた気がしたが…そなたらか?」
まるで陽炎のごとく現れ出で、その少年は悠然と佇んでいた。
その探る眼差しを察するに、先日、この海岸で拾った女性に由来する件か?とサーガイアは直感的に思う。
水のざわめきとは言い得て妙。
自分もそれに呼ばれた気がしたのだ。
「さあ、何の事かな?」
知らぬ存ぜぬを通すが吉か…。
人ならざる者、極めて危険な存在と肌が感じる。
「ほほぅ…そなた、これは珍しい。この時代に超帝国「帝」のプリムムモーヴェンス(超闘士)が存在しているとは…な?」
「はあ?」
まじまじとサーガイアを見やると、興味本位に少年は微笑んだ。
「こんな時代に復活させられた儂も何かの因果か…それも悪くなかろう。」
途端に饒舌になったのは、サーガイアの血の中に古き仲間の幻影を見た為か?
だが俺は言う程、年寄りなわけじゃないし、そんな知り合いはいないぞ、ジジイ。
「そう言うな。あやつに命じられて様子を見に来ただけよ。何もなかったと報告しておくさ…。」
俺の思考を読んだな。
厄介な相手だぞ、この爺さん。
第弍帝国総軍総統麾下「八蓮門」邩のシュルベルトと名乗るその存在は、どうやらサーガイア一行にいたく興味を抱いたようで、これ以降、付かず離れず付き纏う事となる。
もっとも、リョーガにとっては、剣の先生と魔道の師匠を同時に手に入れた瞬間でもあった…。




