【プロローグ】
夕日が落ち、空がオレンジ色に染まった放課後。
まだ、学生たちが部活動を行っている時間にコンビニへ寄るのが俺の日課だった。
「何がいいかなぁ」
エナジードリンク——いや、コーラも捨て難いが、今日放映されるアニメの時間を考えれば、カフェインの入っているエナドリが最有力候補か。
「……待てよ?」
明日は金曜日——普通に学校だ。
もしここでエナドリを選べば、間違いなく寝られなくなり徹夜することになって……
これ以上、担任のチョップを食らうのはゴメンだ。
なら、ここはやっぱり。
「コーラだな」
冷蔵ショーケースから、購入するとジュースの無料券が貰えるコーラをカゴに入れる。
——さて、ようやく舞台は整った。
寿司で例えると、今まさにシャリが綺麗な長方形に形作られたところだ。
そうなると、次は何をするか——それは言わなくてもわかることだろう。
コンソメか塩か。はたまた、のり塩か。
……ダメだ。どれも魅力的なネタのせいで、すぐに決められない。
——その後も悩みに悩んだが、この究極の三択を決めきれず新たなネタを求め、その場を立ち去ろうとした時。
「ん?これは……」
商品棚の最下層——。
そこには、シルバー色に輝くコンソメ味のポテトチップスが。
「これにしよう」
決め手となったのは特別感。
特別感と言っても実際は、ナフサ不足によるコスト削減のためにパッケージの多色刷りをやめただけで、そこまで特別というわけでもない。
ただ、人間は身近な変化を好む。
そんな、小さな変化でも退屈を避けるために、人間は変化を求め続ける。
——そう、俺は退屈だった。
目指す夢も特になく、やりたいことも見つからない。
ずっと縦動画をスクロールして、スマホの光でたまに反射して映る、自分の顔を見て萎える人生。
別にそれでいいだろうって?
嫌だね。この世には、もっと楽しいことがあるはずだ。
そう願って、今日もコンビニをあとにする。
願わくばラノベ作品のように、ここで異世界転移してほしいものだが——
そんなことは現実じゃ起こりえない。
「いや、それはそれで面倒くさいか」
冷静に考えてみれば、異世界なんて行きたくないかもしれない。
今みたいにコーラやポテチを買って、アニメ鑑賞ができなくなる方が嫌だ。
「やっぱ、普通が一番か」
そうだ。俺——天海誠也という人間に、非日常という特別はいらない。
普通に生きていければそれでいい。
いい、はずだった。
——だが、ある少女との出会いで、その気持ちは一変する。




