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先輩の困惑

前作の続きを先輩視点で。

シリアスなのか、ギャグなのか、書いているうちに、だんだんわからなくなってきました。とほ。

私は、三度の飯より恋愛小説が好きな以外普通のOL川崎朱美。

ある時、後輩である麻生くんにキャッキャウフフな小説を読んでいる所を見られてしまった。

きっとドン引きしただろうと思ったのだが、逆に好きだと言ってきた。

意味がわからない。


「麻生くん?」

「何ですか?」


ここは給湯室。

現在の状況、私が壁に追いやられ、顔の横に後輩の手がある。所謂壁ドンだ。

端整な顔が近くにあり、ヒロインなら顔を赤らめてドキドキする所だろう。そして、ヒーローの顔が近づき………。

だがヒロインポジションにいるのは、職場から堅苦しいお局様と呼ばれる私だ。

そんな私にこんな事をして、何が楽しいのだろう。

そして、益々後輩の目の色がおかしい。普通の彼じゃない。

私を閉じ込めたり抱き付いたりする時にだけ見せる目でみられると、正直居心地が悪い。


「あの……そろそろどいてくれない? お茶が冷めるし」

「嫌です。 先輩も嫌なら力付くで逃げればいい」


2次元にしか言わなさそうなセリフを吐く後輩は、違和感がない。耳元で言われると、こそばゆいからやめて欲しいのだけど。

あと、力付くでって言ったら後輩に触れないといけない。でも触れたら逆セクハラでパワハラにならないかなぁ。


「触ったら逆セクハラで辞めさせられるから、断りたいんだけど」

「先輩には触れられたいから、逆セクハラにもパワハラにもなりませんよ」

「本当かなぁ?」

「逆に問いますが、先輩は俺のしてる事をセクハラと思いますか?」


セクハラと問われたら、むしろご褒美じゃないだろうか、と思う。

吐息混じりに囁かれるのだって、気絶ものだろう。

それが私でなければの話。

これが秘書課の若山さんならときめく。そのまま愛の巣になっても、眼福と言えよう。

それなのに、どうしてここにいるのが私なんだろう。判らない。


「嫌、ですか?」


頼りなさげな声と共に、額に柔らかいものが触れる。否、触れかけた。間に後輩の指がかかり、ちゅ、とリップ音がする。

全くこの後輩は!どこまでサービス精神旺盛なんだか!萌えるじゃないか!


「本当は触れたいです」


触ればいいじゃない。

つい口に出しかけて、やめる。言ったら大変な事になりそうな気がしたからだ。

しかし、どうしてこう構ってくるのかしら。

そうか、他の女子なら自分の事が好きだと思ってしまうからか。なんて罪作りな。


「好きです」

「はいはい有難う」


少なくとも、私はイケメンに釣り合わないとか、自分は地味だからとか、卑下している訳ではない。

好きになったら認めるし、もしからかってましたとか言われても、失恋に涙して立ち直れる自信はある。

もし万が一、本気なら彼に釣り合えるようがむしゃらに頑張る。ダイエットもエステもオシャレも。

ただ、本当に観賞対象なのだ。こうして壁ドンされていても、冷静に胸キュンできるくらいに。


  







そう思っていたのは、いつまでだろうか。

多分きっかけは、日頃のお礼に誘った喫茶店。

後輩のスマホにあった恋人写りの私と後輩の画像を見て、案外悪くないかなって思った。ゆるふわ可愛い服を着て、大人可愛い髪型にセットされた私は、正直誰だってくらいに錯覚した。

きっと、写っていた後輩の表情が恋人に向けるように見えたからかもしれない。

ああ、物語みたいに愛されてるなぁ、写真の私。

思わず記念に送って欲しいとお願いした。

やや画面が小さくなっている夢の写真を時々見返しては、口元を緩める自分に気づく。

そう、鼠テーマパークや映画テーマパークに行ったような、夢の写真。


「………ん?」


ふわふわとした感覚と、視覚が戻る。

ああ、いつの間にかデスクで仮眠をとっていたみたいだ。

でも、なんだかスッキリして頭が冴えてくる。仕事もはかどりそうだ……と周りを見渡したら、誰もいない。

日も落ちていて、廊下の電気が暗がりを照らしている。


「誰か起こしてくれてもいいのに」


ぼやいて、んーと伸びをすると、何かが背中から落ちた。

足元を見ると、誰かのスーツの上着があった。


「風邪引かないように、かけてくれたのかな? 親切な人だ」


スーツの名前を見なくても、誰か判った。この匂いに最近やけに包まれているからだ。

それでも、と名前を確認すると、やはりそうだった。


「だからあんな夢を見たのか」


恥ずかしい話だが、夢の中で私はエプロンを着けていた。

帰宅したお疲れの旦那さまに、お帰りのハグをされて、額にキスをされる。


「お帰りなさい、ご飯にする? お風呂にする? それとも…」


結婚したら1度は言いたいテンプレ台詞に、旦那さまは色気混じりの笑みを見せるのだ。

問題は、その旦那さまが後輩の麻生くんだという事だ。

いくらなんでも、後輩で自己満足の妄想をするなんて、先輩として最低だろう。

とても言えやしない。

言ったとしても、面白い夢を見ましたね、と笑われるのがオチだろうけど。

優しいから、嫌悪を表には出さない。


「そろそろ、本気でキツいな」


冗談でかわすには、私の中で後輩の存在感は大きくなりすぎていた。

もし拒否られたら、立ち直れない。

お姉さんに甘えたい弟なのだ、きっと。

私はスーツを軽く畳んで、後輩のデスクに置いた。電気をつけて仕事に取りかかる。

そこで、ふとキーボードからキラリと光るものが目にはいった。よりによって左薬指についたシンプルな指輪。色違いの小さい石が、寄り添うようについている。


「私、こんな指輪持ってた? しかも薬指って! 寝ぼけるのにも程があるわ」

「あれ、先輩起きてましたか。 ちょうどいいですし、一息つきませんか?」


扉の開く音に、体がびくつく。夢の内容がフラッシュバックして、私は一瞬で顔を赤くした。

正直、今無性に会いたくないNo.1だ。


「そ、そうね…少し顔洗ってくる」

「ん、行ってらっしゃい」


にこり、と後輩が笑う。

可哀想な後輩。いまや貴方はこの如何わしい先輩の妄想に強制出演させられているというのに。

とにかく、誰のか判らないから最低限指輪は外せない。

顔の火照りが収まって、着け直す。中指に入らないので、仕方なく薬指にして。恋人もいないのに、薬指用に指輪をはめるなんてこんなに恥ずかしいとは思わなかった。


「お待たせ」


別に待ってないだろ、と心にツッコミつつ、声をかける。

左手は、ポケットの中だ。


「おにぎりにサンドイッチ、唐揚げにポテト…カフェオレで良かったですか?」


そういう後輩は、無糖コーヒーだ。カフェオレ好きじゃなかったのかな。


「うん有難う……」


しまった!

封を開けるには、禁じられた左手を使わなければならない!

いや、中2なあれじゃないけど!

仕方なく、さっと椅子を回しこそこそおにぎりや缶を開けると、向き直って左手を隠した。

うん、見られてない、セーフ。


「左手、どうかしましたか?」

「ちょ、ちょっとねー! 左腕が疼くーみたいな?」

「なんですか、それ」


くすくすと、後輩が笑う。よかった誤魔化せた。

そう安堵した私は、後輩の左手を見た。確か仮眠する前まで何もなかったはずなのに、何かが光っている。ああ、そうか。


「あ、そう…くん?」

「はい?」


後輩は、左手を隠そうとせずコーヒー缶を持っている。その姿がさまになるのが、なんとも言えない。


「指輪」

「はい」

「彼女、出来たんだ? そっか、良かったねぇ…」


そこから先は続かなかった。祝いの言葉も、どんな子なのかも。先輩として、親しかった友人として、これじゃあダメだ。

目に熱が集中しているかのように、顔が熱い。

目がヒリヒリする。

視界がぼやける。

ダメだ、言うんだ。頑張れ私。


「せんぱ…」

「今度、彼女教えてね」


全てが決壊する。

笑えたかな?まだ泣いてないよね?

何を思ったのか、後輩が私を抱き締める。

ダメだよ、彼女に誤解されちゃう。けれど、私はその暖かさに喜びを感じていた。

ああ、もう本格的に最低な上司だ。

でも、甘やかす君も悪いんだよ?


「泣かせるつもりじゃ、なかったんです」

「……っ」

「寝てる間に、取るつもりだったんです。 誰もいないし、夫婦みたいだなって、嬉しくて。 ついそのまま買い出しに行っちゃって」


見て?


と、重なる互いの左手に、見えるのは揃いの指輪。


「誕生日と指のサイズを調べて、互いの誕生石をはめこんで。 そしたら、先輩に着けてもらいたくなって……」


差し出したスマホには、寝ているだろう私の手と、寄り添うように後輩の手が写っている。薬指には指輪。まるでエンゲージリングの広告のようだった。


「嫌がられて泣かせるなんて………思わなくて」

「じゃあ……彼女は?」

「先輩以外いるわけないじゃないですか。 こんな戯れも、先輩以外にしたいとは思わない」


ぎゅ、と指と指が絡まって結ばれる。

ああ、だめだ。これ以上逃げられない。


「好きなんです」


絞るように紡がれるこの言葉が、今までどうして流せたのだろう。

気づいてしまったら、もう流せない。


「私も、好きよ」


口に出したら、ストンと気持ちが収まった。

すると、後輩は顔を歪めて困ったように笑う。


「先輩と俺の好きは、違いますよ。でも、嬉しいです」


後輩は、私の言葉に何度傷ついたのだろう。

おそらく一緒なのに、疑うくらいに。


「貴方と新婚生活する夢を、みるくらいに好きよ?」


恥は書き捨てだ。

こうなったら、夢で晒したテンプレまでつけてやろう。


「お帰りなさい旦那さま。ご飯にします?お風呂にします?それとも」







この先は、後輩に阻まれて声に出せなかった。


お読みいただきありがとうございます!


後輩と先輩、ようやくくっつきました。一区切りです。

最近、後輩と先輩の年の差ラブ設定の長編小説を拝見しまして、それに引っ張られそうになりました。

だから続きかいて、二人をくっつけようとしたのかもしれませんが。

しかし、勝手に人に指輪つけて悦に浸るとか、問答無用で壁ドンとか…みなさんドン引きされてないか心配です。


次は同僚×元同僚、課長夫婦編へ入ります。

それで完結かな、と。


うん、これから先の話って…需要あります?ひったすら糖度高めでイチャイチャするだけなんですが。

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