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「みんな私をたっぷり儲けさせてね」2

2/2




 朝食の後、いつもは自由時間で解散となるのだが、何と言うことも告げられずともそのまま食卓に残されていると、子供達はいよいよ来るべき日が来たのだとどんよりとしていた。


「えぇ〜っ〜あ〜、、、う〜んと」


 リコは助けを求めてリュコスを見るが、リュコスはいつものようにスンと澄ました能面で、パハン先輩はうつむいている。

 援軍はないようだ。


「ぐぬぬっ」


 リコは、批難するように2人をみくらべる。

 シロがニヤニヤしながら、そんなリコをみているが、誰も何も言葉を発しない時間が流れる。

 と、口火を切ったのはアマルだった。


「リコ、見て」


 アマルは椅子から降りると、しずしずと食卓の周りを一周し、ピョンピョンと飛び跳ねて、リコの元までやってきて、ニパっと笑顔を向け手を伸ばした。


「私、歩けるようになった!」

「うん。うん」


 リコがはうなずいて向けられたアマルの手をとる。


「ありがとうリコ! 本当にありがとう!」


 アマルの大きな瞳から、バタタタタと涙がこぼれ落ちる。

 子供達は立ち上がって、リコに駆け寄った。


「「「「「ありがとうございました!」」」」


 膝をちょこんと曲げ、跳ねるようにお礼の言葉を述べている。

 うつむき口を尖らせる1人を除いて。


 イナバはリコの手をとって額に当てると、リコの手の甲に口付けた。


「年長者を代表して謝辞を述べます。私達は、リコ様に忠誠を誓います。このご恩を、生涯かけてお返しいたします」


 その姿に、リコも堪えきれずに ボタボタ と涙をこぼしてしまった。


「フグぅっ! ご恩など! 忘れてくれて結構!」


 リコは立ち上がり、イナバの頭を撫でる。


「みんなよく聞いて。子供が、大人に恩を感じてもそれを返す必要はない! 大人にはその行動を選択する権利がある。主体性のある行動の選択は大人の特権! 私はその権利を行使しただけ。私は私が褒められるためにみんなにご飯を作り、自分が好きな物を愛でる為に服を着せ替えただけで、返される恩を売った覚えはない!」


 胸に手を当てドヤ顔を決めると胸を張って言い切った。

 メソメソと泣きながらなのは変わらないのでいまいち締まらない。


「あえて言うなら! 私の作ったご飯はおいしかっただろうっ! それを褒め称え、もっと崇め敬え!」

「わぁ。突然の早口ぃ。ぶれないねぇリコ」


 シロは首を振りながら未だひざまずくイナバを立たせる。


「感謝の言葉を述べるのは自由だが、まだ終わったわけではない。とリコ様は仰っているのです」


 リュコスがため息をついて、涙と鼻水でメチョメチョのリコの顔をタオルで拭う。


「皆がしてもらった事は、ここでもうお終いにしてしまえるほど安くはないと言うとだ。リコはぼったくり店の店主なのですから」


 パハンは、1人椅子から動かないナカツをみた。


「それでは、私とリュコスがダンジョンから出るために、皆にしてもらおうと思ってる事を話すね」


 リコはグスグスと鼻をすすると、隣で動かず拳を握りしめていたナカツの耳を撫でた。


「これからも、私に力を貸して、ナカツ」

「!!」


 ナカツはリコに縋りつき声をあげて泣いた。


「俺、俺、もう会えないのかなって! また、またリコに会えないって! もう会いにきちゃいけないって、そう思って! わぁぁぁぁっ!」

「そんなわけないでしょっ」


 リコもまたボロボロと泣く。

 リュコスが目を細めてリコをみる。


「みんなには、『ここでの暮らしがズンダの街でもできるようになる』よう協力してもらうからね」


 ズビズビ鼻をすすりながら[企画計画書]と書かれた小冊子を渡した。


 ・(カネ)という名の権力にも勝る力を増やす。

 ・皆の居場所になる広い土地を街壁の中に買う。

 ・共通の価値観を持つ仲間を増やす。


 邪魔する敵を打ち払うため、暴力に抗う力を育て養う。そして、今1番手っ取り早く手に入れられる力、それが(かね)の力なのだ。大まかに言えなこんなところだ。とのリコの説明にヤツノが「こんなことが可能なのでしょうか?」と涙を拭ってリコに聞く。


「あくまで、これを踏まえてって事。これは大人がやるから良いの。じゃぁお子様達は具体的どうするかっていう作戦を教えるね。おかしなとこがあったら質問して」


 リコは話を進める。


 ①回収屋の見習い希望者全員を19階に1人でも来れるようにする。


「希望者全員に19階のゴーレムを討伐してもらうわ。コレはリュコスも、パハン先輩も協力してくれるから安心して。勿論私も」

「リコも?」

「リコは非戦闘員って」

「錬成モンスター相手ならここにいる中で最強よ?」


 リコはドヤァと胸をはる。

 ナカツがリュコスを見ると、リュコスは目を細めて頷いた。


「本当!?」

「どうゆう意味よぅ?」


 リコは、ナカツの耳をグリグリと強めにもみしだきながら言った。


「でも、これはあくまで緊急時の対策。それでも1人で来て良いのは19階のお店だけだよ?」


 リコは、皆に言い聞かせるように説明を続ける。


 これは[雑貨屋ぼったくり本店]が移動魔法陣のある19階にあって、私とリュコスがいつもそこにいるからだ。

 当然1人で来れるようになっても、絶対に勝手にダンジョンの中に入ってはダメ。

 必ずパハン先輩に許可を貰うこと。

 私達は常に連絡が取れるから、嘘ついても無駄だ。

 約束を守れない子とは2度と会えなくなちゃうから気をつけて。

 1人で勝手にダンジョン内をウロウロするなんて厳禁。

 初めからある回収屋のルールには絶対に従う事。


「必ずよ?」


 リコは、真剣な眼差しでナカツを見る。


「私、2度とナカツの耳をモフれなくなるなんて嫌だよ? ナカツは約束守れる? 守ってくれる?」


 ナカツは鼻をすすって「わかった」と頷いた。



 ②回収屋見習いのダンジョンでの生存率の向上。


 他の回収屋見習いの子供達の希望者全員に[回収屋見習いランドセル ダンジョンダイブセット]を支給する。

 その為に16階での[ズンダガマの皮]の5枚採取を義務付ける。

 コレにも勿論私達とパハン先輩が同行する。

 ただしゴーレムと違って、皮は必ず自力で5枚採取してもらう。

 それをできるようにサポートするのが私達大人の役目。

 みんながどうすれば戦いやすいのか、敵から逃げやすいのか、それを大人が見極めるための訓練をさせて欲しい。



「だから、その時にはもう1人、大人の回収屋の同行が望ましいと思うんだけど」

「良いのですか?」


 驚くパハンに、リコは頷いて答えた。


「その時に、必要なものがあれば随時提供します。ポーションでも、武器でも、防具でも」

「リコ様」


 リュコスが諌めるように答えを遮る。


「目的は子供の生存率の向上だよ。連れてくる大人は、パハン先輩とギルド長で相談して吟味してくれるよね?」


 リコはパハンをみる。


「・・・っ」


 リコは、返事に詰まり、うつむくパハンのそばに、アマルを連れて歩み寄る。


「私、パハン先輩にも死んだり、怪我したりして欲しくないんだよ?」


 そう言って、アマルの手を取り2人で頭を撫で、声を大きくして宣言した。


「コレからはー、パハン先輩が地面に顔を向けてー、頭頂部に隙ができたらー、みんなは頭を撫でて良いことにしまーす!」

「「「えっ!?」」」

「そうゆう訓練でーす! そうゆう約束をしていまーす!」

「っえ!? はっ!?」


 パハンが赤面して慌てて顔を上げる。


「ンムゥ!」


 アマルが頬を膨らませてパハンの頭を抱き込むと「なんか、なんかそれはイァヤだ」とパハンの頭を隠した。


「・・・ハハっアハハハハっ」


 以前、「兄を守る」と言ったアマルを思い出し、泣きながら口を覆ってパハンが爆笑する。


「アマル、アマルありがとう、フハッありがとうアマル」


 パハンはアマルを抱きかかえ「ありがとうアマル。俺、もっと強い兄ちゃんになるな。アマルが、もっと、もっと」パハンは、ボロボロと涙をこぼしながらアマルを抱きしめる。


「・・・お兄ちゃんっ」


 アマルもパハンを抱きしめ兄妹でしっかりと抱き合う。こんなに泣いたことなどないのでは無いかと思うほど、パハンは泣いた。


「尊死するわっ!!!」


 リコが悶えながら床に突っ伏すとバタバタと足を動かした。

 レトが「ダメ! 死なないで! 生きて!」とリコに抱きつくと「そうだった! 死んでられない! 生きる!」と、レトに抱きつき返す。


「ハぁー、、、寂しい。みんなと一緒にいられなくなるの、寂しいっ! 寂しすぎて死んじゃったらどうしよう!」


 リコは仰向けになり、両手で顔を押さえて嘆くように本音を吐き出した。

 よもや自分がこんなふうに、他者との別れを惜しむようになるなど、考えたこともなかった。


「いつでも会えるって言ったじゃん〜」


 ナカツも抱きついてきた。


「またすぐ会いにきます」


 イナバも隣に寝転んだ。


「まだまだ教えてもらわなければならないことがたくさんあります」


 ヤツノもそっと寄り添う。


「私ももっといろんなお料理教えてもらいたい」


 サラもリコに手を伸ばした。

 ピオニが、モゾモゾとリュコスに抱きつく。

 リュコスは、ピオニを抱き上げ膝に乗せると、テトもくっついてもう片方の膝の上に座った。


 レトの耳が、リコの首元でパタパタと揺れる。

 守りたいこのモフモフを。

 そうだ。確かにそう思ったんだった。


「はぁ〜ダメだ〜! 私が1番ダメだったぁ! しかっりしないと! ねぇ!?」


 そう言って気合を入れてリコは起き上がる。




 ③回収屋見習いの生産技術の向上。


「もちろん、回収屋としても仕事も大事だけど、選択肢は増やしたい。何かを作りだすことで恒久的に生活費を得られるのなら、危険な仕事をしなくても済む獣人が、減っても、、、良いかな? パハン先輩?」


 リコはパハンに向き直る。


「もとより、それが獣人達の願いでもあります。街の中で安全に、家族と過ごせるのなら、それに勝ることはありません」


 パハンは、ギュッと膝の上のアマルを抱いて、リコとリュコスを見て、下げた頭をすぐ上げた。


「是非もなし。よろしくお願いします」


「ヨシ!」リコは小さくガッツポーズをする。

「まずはこの8人から順番で他のみんなのお手本になろう。パハン先輩、しばらくこれでなんとかできる?」


 リコは大金貨を一枚差し出した。


「・・・可能です」


「ヨシ! イナバとレトとヤツノは、他の子供達の服を作ってあげて? サラは食事を。できる?」

「「「「できます」」」」


「ヨシ! ナカツとテトはみんなを守ってあげて? アマルとピオニはパハン先輩の言う事をよく聞いて良い子に。できる?」

「「「できる。ます」」」


「ヨシ! そしてみんなでその技術を共有して。誰が何に向いてるかは、私の【鑑定】の結果を踏まえてパハン先輩とギルド長で精査して。必要な物資はこっちで全部サポートするから」


 金や魔石、糸に生地、本やノート文房具に、布生地や衣類を、コレでもかと溢れんばかりに出し散らかす。


「オーブンやコンロ、ミシンも工具も持っていって。ベットや家具、他に個別に必要な物は、16階をクリアして、仮屋に住めるようになった子達から随時設えよう」


 パハンは、出かけた言葉を飲み込んで「よろしくお願いしますっ」と頭を下げた。


「コレはね、先行投資って言う商人の正しいお金儲けの方法の1つなんだよ。こっちではまだ珍しいみたいだけど、私のいた国では普通。みんなやってる」


 リコは、ズビッと鼻をすすって胸を張り言う。


「みんな私をたっぷり儲けさせてね。期待してるよ」

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