「みんな私をたっぷり儲けさせてね」2
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朝食の後、いつもは自由時間で解散となるのだが、何と言うことも告げられずともそのまま食卓に残されていると、子供達はいよいよ来るべき日が来たのだとどんよりとしていた。
「えぇ〜っ〜あ〜、、、う〜んと」
リコは助けを求めてリュコスを見るが、リュコスはいつものようにスンと澄ました能面で、パハン先輩はうつむいている。
援軍はないようだ。
「ぐぬぬっ」
リコは、批難するように2人をみくらべる。
シロがニヤニヤしながら、そんなリコをみているが、誰も何も言葉を発しない時間が流れる。
と、口火を切ったのはアマルだった。
「リコ、見て」
アマルは椅子から降りると、しずしずと食卓の周りを一周し、ピョンピョンと飛び跳ねて、リコの元までやってきて、ニパっと笑顔を向け手を伸ばした。
「私、歩けるようになった!」
「うん。うん」
リコがはうなずいて向けられたアマルの手をとる。
「ありがとうリコ! 本当にありがとう!」
アマルの大きな瞳から、バタタタタと涙がこぼれ落ちる。
子供達は立ち上がって、リコに駆け寄った。
「「「「「ありがとうございました!」」」」
膝をちょこんと曲げ、跳ねるようにお礼の言葉を述べている。
うつむき口を尖らせる1人を除いて。
イナバはリコの手をとって額に当てると、リコの手の甲に口付けた。
「年長者を代表して謝辞を述べます。私達は、リコ様に忠誠を誓います。このご恩を、生涯かけてお返しいたします」
その姿に、リコも堪えきれずに ボタボタ と涙をこぼしてしまった。
「フグぅっ! ご恩など! 忘れてくれて結構!」
リコは立ち上がり、イナバの頭を撫でる。
「みんなよく聞いて。子供が、大人に恩を感じてもそれを返す必要はない! 大人にはその行動を選択する権利がある。主体性のある行動の選択は大人の特権! 私はその権利を行使しただけ。私は私が褒められるためにみんなにご飯を作り、自分が好きな物を愛でる為に服を着せ替えただけで、返される恩を売った覚えはない!」
胸に手を当てドヤ顔を決めると胸を張って言い切った。
メソメソと泣きながらなのは変わらないのでいまいち締まらない。
「あえて言うなら! 私の作ったご飯はおいしかっただろうっ! それを褒め称え、もっと崇め敬え!」
「わぁ。突然の早口ぃ。ぶれないねぇリコ」
シロは首を振りながら未だひざまずくイナバを立たせる。
「感謝の言葉を述べるのは自由だが、まだ終わったわけではない。とリコ様は仰っているのです」
リュコスがため息をついて、涙と鼻水でメチョメチョのリコの顔をタオルで拭う。
「皆がしてもらった事は、ここでもうお終いにしてしまえるほど安くはないと言うとだ。リコはぼったくり店の店主なのですから」
パハンは、1人椅子から動かないナカツをみた。
「それでは、私とリュコスがダンジョンから出るために、皆にしてもらおうと思ってる事を話すね」
リコはグスグスと鼻をすすると、隣で動かず拳を握りしめていたナカツの耳を撫でた。
「これからも、私に力を貸して、ナカツ」
「!!」
ナカツはリコに縋りつき声をあげて泣いた。
「俺、俺、もう会えないのかなって! また、またリコに会えないって! もう会いにきちゃいけないって、そう思って! わぁぁぁぁっ!」
「そんなわけないでしょっ」
リコもまたボロボロと泣く。
リュコスが目を細めてリコをみる。
「みんなには、『ここでの暮らしがズンダの街でもできるようになる』よう協力してもらうからね」
ズビズビ鼻をすすりながら[企画計画書]と書かれた小冊子を渡した。
・金という名の権力にも勝る力を増やす。
・皆の居場所になる広い土地を街壁の中に買う。
・共通の価値観を持つ仲間を増やす。
邪魔する敵を打ち払うため、暴力に抗う力を育て養う。そして、今1番手っ取り早く手に入れられる力、それが金の力なのだ。大まかに言えなこんなところだ。とのリコの説明にヤツノが「こんなことが可能なのでしょうか?」と涙を拭ってリコに聞く。
「あくまで、これを踏まえてって事。これは大人がやるから良いの。じゃぁお子様達は具体的どうするかっていう作戦を教えるね。おかしなとこがあったら質問して」
リコは話を進める。
①回収屋の見習い希望者全員を19階に1人でも来れるようにする。
「希望者全員に19階のゴーレムを討伐してもらうわ。コレはリュコスも、パハン先輩も協力してくれるから安心して。勿論私も」
「リコも?」
「リコは非戦闘員って」
「錬成モンスター相手ならここにいる中で最強よ?」
リコはドヤァと胸をはる。
ナカツがリュコスを見ると、リュコスは目を細めて頷いた。
「本当!?」
「どうゆう意味よぅ?」
リコは、ナカツの耳をグリグリと強めにもみしだきながら言った。
「でも、これはあくまで緊急時の対策。それでも1人で来て良いのは19階のお店だけだよ?」
リコは、皆に言い聞かせるように説明を続ける。
これは[雑貨屋ぼったくり本店]が移動魔法陣のある19階にあって、私とリュコスがいつもそこにいるからだ。
当然1人で来れるようになっても、絶対に勝手にダンジョンの中に入ってはダメ。
必ずパハン先輩に許可を貰うこと。
私達は常に連絡が取れるから、嘘ついても無駄だ。
約束を守れない子とは2度と会えなくなちゃうから気をつけて。
1人で勝手にダンジョン内をウロウロするなんて厳禁。
初めからある回収屋のルールには絶対に従う事。
「必ずよ?」
リコは、真剣な眼差しでナカツを見る。
「私、2度とナカツの耳をモフれなくなるなんて嫌だよ? ナカツは約束守れる? 守ってくれる?」
ナカツは鼻をすすって「わかった」と頷いた。
②回収屋見習いのダンジョンでの生存率の向上。
他の回収屋見習いの子供達の希望者全員に[回収屋見習いランドセル ダンジョンダイブセット]を支給する。
その為に16階での[ズンダガマの皮]の5枚採取を義務付ける。
コレにも勿論私達とパハン先輩が同行する。
ただしゴーレムと違って、皮は必ず自力で5枚採取してもらう。
それをできるようにサポートするのが私達大人の役目。
みんながどうすれば戦いやすいのか、敵から逃げやすいのか、それを大人が見極めるための訓練をさせて欲しい。
「だから、その時にはもう1人、大人の回収屋の同行が望ましいと思うんだけど」
「良いのですか?」
驚くパハンに、リコは頷いて答えた。
「その時に、必要なものがあれば随時提供します。ポーションでも、武器でも、防具でも」
「リコ様」
リュコスが諌めるように答えを遮る。
「目的は子供の生存率の向上だよ。連れてくる大人は、パハン先輩とギルド長で相談して吟味してくれるよね?」
リコはパハンをみる。
「・・・っ」
リコは、返事に詰まり、うつむくパハンのそばに、アマルを連れて歩み寄る。
「私、パハン先輩にも死んだり、怪我したりして欲しくないんだよ?」
そう言って、アマルの手を取り2人で頭を撫で、声を大きくして宣言した。
「コレからはー、パハン先輩が地面に顔を向けてー、頭頂部に隙ができたらー、みんなは頭を撫でて良いことにしまーす!」
「「「えっ!?」」」
「そうゆう訓練でーす! そうゆう約束をしていまーす!」
「っえ!? はっ!?」
パハンが赤面して慌てて顔を上げる。
「ンムゥ!」
アマルが頬を膨らませてパハンの頭を抱き込むと「なんか、なんかそれはイァヤだ」とパハンの頭を隠した。
「・・・ハハっアハハハハっ」
以前、「兄を守る」と言ったアマルを思い出し、泣きながら口を覆ってパハンが爆笑する。
「アマル、アマルありがとう、フハッありがとうアマル」
パハンはアマルを抱きかかえ「ありがとうアマル。俺、もっと強い兄ちゃんになるな。アマルが、もっと、もっと」パハンは、ボロボロと涙をこぼしながらアマルを抱きしめる。
「・・・お兄ちゃんっ」
アマルもパハンを抱きしめ兄妹でしっかりと抱き合う。こんなに泣いたことなどないのでは無いかと思うほど、パハンは泣いた。
「尊死するわっ!!!」
リコが悶えながら床に突っ伏すとバタバタと足を動かした。
レトが「ダメ! 死なないで! 生きて!」とリコに抱きつくと「そうだった! 死んでられない! 生きる!」と、レトに抱きつき返す。
「ハぁー、、、寂しい。みんなと一緒にいられなくなるの、寂しいっ! 寂しすぎて死んじゃったらどうしよう!」
リコは仰向けになり、両手で顔を押さえて嘆くように本音を吐き出した。
よもや自分がこんなふうに、他者との別れを惜しむようになるなど、考えたこともなかった。
「いつでも会えるって言ったじゃん〜」
ナカツも抱きついてきた。
「またすぐ会いにきます」
イナバも隣に寝転んだ。
「まだまだ教えてもらわなければならないことがたくさんあります」
ヤツノもそっと寄り添う。
「私ももっといろんなお料理教えてもらいたい」
サラもリコに手を伸ばした。
ピオニが、モゾモゾとリュコスに抱きつく。
リュコスは、ピオニを抱き上げ膝に乗せると、テトもくっついてもう片方の膝の上に座った。
レトの耳が、リコの首元でパタパタと揺れる。
守りたいこのモフモフを。
そうだ。確かにそう思ったんだった。
「はぁ〜ダメだ〜! 私が1番ダメだったぁ! しかっりしないと! ねぇ!?」
そう言って気合を入れてリコは起き上がる。
③回収屋見習いの生産技術の向上。
「もちろん、回収屋としても仕事も大事だけど、選択肢は増やしたい。何かを作りだすことで恒久的に生活費を得られるのなら、危険な仕事をしなくても済む獣人が、減っても、、、良いかな? パハン先輩?」
リコはパハンに向き直る。
「もとより、それが獣人達の願いでもあります。街の中で安全に、家族と過ごせるのなら、それに勝ることはありません」
パハンは、ギュッと膝の上のアマルを抱いて、リコとリュコスを見て、下げた頭をすぐ上げた。
「是非もなし。よろしくお願いします」
「ヨシ!」リコは小さくガッツポーズをする。
「まずはこの8人から順番で他のみんなのお手本になろう。パハン先輩、しばらくこれでなんとかできる?」
リコは大金貨を一枚差し出した。
「・・・可能です」
「ヨシ! イナバとレトとヤツノは、他の子供達の服を作ってあげて? サラは食事を。できる?」
「「「「できます」」」」
「ヨシ! ナカツとテトはみんなを守ってあげて? アマルとピオニはパハン先輩の言う事をよく聞いて良い子に。できる?」
「「「できる。ます」」」
「ヨシ! そしてみんなでその技術を共有して。誰が何に向いてるかは、私の【鑑定】の結果を踏まえてパハン先輩とギルド長で精査して。必要な物資はこっちで全部サポートするから」
金や魔石、糸に生地、本やノート文房具に、布生地や衣類を、コレでもかと溢れんばかりに出し散らかす。
「オーブンやコンロ、ミシンも工具も持っていって。ベットや家具、他に個別に必要な物は、16階をクリアして、仮屋に住めるようになった子達から随時設えよう」
パハンは、出かけた言葉を飲み込んで「よろしくお願いしますっ」と頭を下げた。
「コレはね、先行投資って言う商人の正しいお金儲けの方法の1つなんだよ。こっちではまだ珍しいみたいだけど、私のいた国では普通。みんなやってる」
リコは、ズビッと鼻をすすって胸を張り言う。
「みんな私をたっぷり儲けさせてね。期待してるよ」




