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わたしは平穏無事の生活を送りたいの!!

 カレーはエルフから。うどんはダークエルフから。

 世界樹であり精霊樹の近くに集まって、それぞれ持ち寄った料理で宴会を開く。

 目を合わせた途端またいがみ合いを始めていたけど、カレーを使った料理となるとあちらも妥協を許さないらしい。

 うどんにカレーを掛けること自体はめっちゃ嫌そうだったけど。

 そしてわたしたちは出来上がったカレーうどんを啜った。


「懐かしいこの味……。けどスパイスが効きすぎなのがね」


「カレーうどん……なにこれ美味しいじゃないの!」


「カレーとうどん。二つが組み合わさっただけなのになんて美味しさでありますか!!」


「はっ! やはりカレーが美味しいな。うどんはまぁまぁだ」


「なんだこの風味。うどんの触感とよく合うな」


 わたしが話したカレーうどんは、ガーリックとラオウさんからも概ね良い反応を貰えた。

 お互い死者を出さなかったことがこうして歩み寄れるきっかけとなったのだろう。

 カレーうどんのように。

 これからエルフとダークエルフは手を取り合って歩いていくのだろう。


「やはりカレーはナンだ! ナンこそ至高なのだ!」


「少し良いと思ってしまった俺は情けない! うどん! うどん! うどん!」


「はっ、やはりダークエルフとは分かり合えぬ! 今ここに再臨させてやろう! 我がゲート・オープン・ナンスローを!」


「うどんの底力見せてやるわエルフ共ォォ!!」


 そうだった。

 エルフはそもそもナンとご飯で対立していたのだった。

 ここで新たにうどんが入ってきても、敵の食べ物だからこうなるのは必然なのかもしれない。

 ガーリックとラオウさんもそれぞれバトルに加勢しに行く。

 取り残されるわたしとミリアとメンマ。

 こっちに攻撃が飛んでこないのと実弾を使用していないのを見るに、もうただじゃれ合っているだけだろう。

 わたしはミリアの横顔を見て、ちょっと照れくさくて頬を掻く。

 けれど、伝えたいことを口にするのは今しかないと思い直して勇気を持つ。


「ミリア。……我儘って案外受け入れられるんだね」


 ミリアは生意気そうに口元を歪め、指さしてくる。


「そうよ。大体あんた、前世の年齢足しても子どもじゃないの」


「本当にね。今もこうして目の前でいい大人がくだらないことで争っているわけだし」


「大人が子どもで何が悪いのよ。大人だから我儘を言っちゃいけないって、その考え方自体がおかしいのよ」


「そうはいかないのが大人の意固地って奴」


 ラオウさんに言われてわたしも気づいた。

 わたしもただ、意固地になっていただけだって。

 今はただ、カレーうどんの美味しさを嚙み締めよう。


「カレー美味しい」


「うどんも中々よ?」


「どっちも美味しいでありますよ!!」


 近くで全面戦争をしているけどすんごい平和だ。

 ラオウさんがエルフにお湯を注ぎながら言ってくる。


「おいキリシマ! カグツチ! カグツチ貸せ!」


「そこのご飯エルフ! 何ダークエルフと談笑している! 早く加勢せんか!」


 わたしとミリアは同時にフォークを置いた。

 お互い考えていることは一緒らしい。

 ほぼほぼ同時に立ち上がり、晴れ裂けんばかりに叫ぶ。


「ナンといいカレーといい! きみらエルフは」


「塩とか小麦粉、お湯といい! あんたらダークエルフ共は」


「「同族嫌悪が過ぎるのよ!」」


  *  *  *


 あのお湯やら塩やらナンやらカレーやらが飛び交うふざけた戦争から数年後。

 わたしの生活は劇的に変わった……わけでもなく前と同じ日常を送っている。

 人はそう簡単に変わらない。

 変わったとしたら、わたしは少し我儘を通せるようになったことくらいかな。

 わたしは果実を採りに出かけようとする。


「お姉ちゃぁぁぁんん!!  私も!! 私も一緒に行きたいでありますぅぅぅ!!」


「メンマさん! 私をこんな身体に調教しておいて逃げようなんて酷いです! 今日も特訓行きますよ!」


 などと泣き言を口にするメンマはエルフの子どもに引き摺られていく。

 たははと苦笑しながら、わたしは手を振って見送った。

 ひとりで籠を持って森へ出かけに行く。

 ミリアは本当にこの森から出て外の世界へと旅立っていった。

 自由だった。

 昔は憧れて、今はもうできないあの生き方。

 憧れるだけであって、やりたいとは思えないその気高さ。

 ミリアはエルフやダークエルフの村に収まるような娘じゃなかった。

 寂しくないといえば嘘になる。

 本当に……。本当にね……。

 生き方には憧れるし、寂しくないといえば嘘になるの。

 うん、だからね。


 明るい木漏れ日が差し込む森の中、一匹のエルフがわたしを防壁にして魔物と対峙していた。

 ……だからなんで?

 わたしは盾にしてくるエルフに文句を垂れる。


「どうしていきなりわたしを盾にするのかな? ミリア」


「再会の挨拶」


 ミリアはニヒヒと無邪気な笑みを浮かべた。

 とりあえずわたしは魔物をカグツチで追い払った。

 少し落ち着いた雰囲気のミリアはわたしから手を放し、くるりと回る。


「思ったのよ。やっぱりキリシマのカグツチをここで腐らせるのって勿体ないじゃない? って」


「わたしは嫌だよ」


 ミリアは後ろで手を組んで、見上げるようにわたしを覗いた。


「だからじっくりと外堀を埋めていくわ。そしてキリシマ、あんたをもっともっともっと我儘にして、外へ連れ出してやるんだから!」


「もう十分我儘だよ。外に出たいとか思ってないよ、わたし!」


 この神装はあくまで神から勝手に与えられただけでわたしが欲したわけじゃないし……。

 わたしにはもう英雄願望だとかこの森から出て冒険したいだとか、そんな思いはないの!

 だから、だから!


「またよろしくね。大好きよ、キリシマ!」


 エルフのミリアと転生ダークエルフのわたし。

 異世界での再会はまた、奇妙な運命を記し続けるのだろう。

 けど、けど!

 顔が赤くなっていくのを感じながらも、わたしは叫ぶ。


「わたしは平穏無事な生活を送りたいの!」

この物語は十割この要素で作られています。(頭ちゃらんぽらん)

本当はこの内容でシリアス風味に書くつもりでした。しかし友人からはどう読んでもフリにしか見えないとのことで振り切りました。

……真面目にナンで苦しむ戦闘シーンを書いたのに。

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