やっぱりなんて事の無い日常が一番安心できる
……なんでここに?
ミリアが縄で縛られたエルフと何か会話をしている。
それから少ししてミリアはエルフの懐を弄り、取り出したのは銀色の袋。
「はい、カグツチだして」
ミリアに促されるままわたしはカグツチの炎を手のひらから現出させる。
ナンといい神も形無しねぇなんて若干呆れかえりながら、ミリアの張った水にそつと入れる。
空に浮かべたお湯にミリアは銀袋を入れる。
それから五分くらい経った頃、ミリアは銀袋を取り出してわたしに突き出した。
「インスタントカレー! ほらっ、食べなさい!」
「じゃあ遠慮なく」
わたしは銀袋を受け取り、開けて中身をあおる。
何の変哲もないカレーと言われればカレーって感じの味。
即席で作れて時間が無い時とかは良くお世話になった懐かしい味でもある。
ちょっと辛い。
ミリアは目と口をまん丸と開いた。
というよりかは縄で縛られているエルフたちみんながこぞって同じ顔を晒していた。
「な、なんで普通に食べるのよ!」
「……うわぁ、カレーだ。よくも食べさせたなー。……満足?」
「どうよ、味は!」
「カレー。やらせたのに酷いね」
口を尖らせたミリアはつまらなさそうに地団太を踏む。
口を自由にされているエルフたちがざわつく。
別にこの場にダークエルフたちはいないし。
というか、ダークエルフにカレーを食べさせたことバレたら不利になるのミリアの方だし。
久しぶりにカレーを食べたせいかな。
「カレーうどんが恋しい」
「カレーなの? うどんなのそれ?」
「うどんにカレーを掛けた奴。両方だね」
そっか。
エルフとダークエルフは敵対同士だからカレーうどんが生まれないのね。
一応、ダークエルフもきつねうどんしか食べていないわけではないのだけど。
ミリアは感銘を受けたかのような表情になり、すぐに元のむすっとした表情に戻っていった。
「次!」
ミリアはわたしの手を掴んで再びどこかへと向かって行く。
どこへ引き摺られるのかなぁとか考えていたらついた先は魔物が現れる場所であった。
ミリアがまたもびしっとわたしを指さした。
「平和な生活が好きなあんたにとって、どうよこの場所は!」
「どうよと言われても」
わたしの平和な生活の中には狩りとかも含まれているわけで。
そうなるとねぇ。
この場所にいること三十分ほど、
「助けてぇぇ! ねぇ助けてよぉ!」
最初こそ和傘で対応できていたミリアだったけど、魔物は数こそ正義。
あっという間にミリアは魔物たちに包囲されて追い回されていた。
ここに連れてきたのミリアでしょうにと頬を掻いてわたしはミリアを助ける。
汗を地面に滴らせ、息も絶え絶えの状態でミリアは四つん這いになる。
「次!」
ミリアは立ち上がると同時に宣言する。
まだやるの? と思いながらもわたしはミリアにまた引き摺られていく。
今度連れて来られたのはわたしの部屋。
クローゼットを開けてわたしの持っている服を吟味しては地面に投げ捨てている。
投げ捨てられた服をたたみながらわたしはミリアを待つ。
最後の一着を投げ捨てたミリアがお腹から声を出した。
「なんで全部お腹が出ている服なのよ!!」
「服は親が作る物だから」
娘の魅力が隠れる服をそりゃ作らないよねってこと。
ダークエルフたちは基本野生児なので貞操観念とか薄い。
そのため野外で胸とか完全に出ていても気にしない節がある。
わたしの場合は中身男だったのでその辺りの適応は速かった。
「次!」
ミリアは次から次へとわたしを連れまわす。
子どもの体力というのはすごいものでダメでもすぐに再起する。
さっきからミリアが何をしたいのかさっぱり分からない。
けど、監視はわたしの仕事なので付き合う。
「あなたは知識に無い不定形の化け物に出会ってしまった。理性を保てるかどうかサイを振ってください」
「なんでよ! そんなの魔法で倒せるでしょ!」
「この世界、魔法も銃もありません」
「ナイフあるならそれで対抗できるでしょ!」
「弱点の無いスライムにナイフが効くとでも?」
最後の最後にテーブルトークRPGに行きついてしまった。
ミリアはまだうどんの仕分けもダークエルフの芸術性も完全に理解していないからね。
ルールを知っているのはわたしだけなので、即席で必要なものを揃えて知っているシナリオを読み上げる。
「じゃあ私は化け物にこう言うであります!! 君、処理道具に似ているであります!! 今夜から私の愛玩に使ってやるであります!!」
「メンマはナチュラルに狂いすぎ」
いつの間にか混じっていたメンマも加えてゲームは進行する。
メンマの発言的にこの化け物はこう行動しそうね。
「フッ、えーでは、その発言に怒った化け物にあなたは攻撃されます」
わたしはシナリオを読み上げてサイを握る。
今まさに振ろうとしたら、メンマとミリアがこっちの目を見てきているのに気づいた。
メンマとミリアが顔を見合わせて叫ぶ。
「やっとキリシマが笑った!」
「やっとお姉ちゃんが笑ったであります!!」
わたしだっておかしかったら笑うよ?
とにかくサイを振って……あっ、出目が走った。
「ナルトさん。あなたは死にました」
「まだ回避してないであります!!」
「不意打ちなので出来ません」
わたしはメンマのキャラシートにバツを付ける。
メンマが絶叫してミリアは「何やってんのよ」と冷やかす。
久しぶりにこうやって、心の底から誰かと遊んだような気がする。
もう一度わたしは笑みを溢してシナリオを進めていった。




