4話 兄
ひょんな事でスキルアップした
勿論、完璧とはいかないと思う
でも、ルビーアイの可能性が……
未知の底知れぬ力
ソレを細かく操る事が出来た事は私にとっての進化だといえる
そういう意味ではナンパ野郎達に感謝するべきなのかも知れない
結局のところ、状況が理解出来ていないエリスは私に何事かと聞いてきたが、あまり深くまで説明しても解らないだろうしルビーアイを話すわけにもいかない
だから私はそれ以上の話をはぐらかした
またエリスとの会話を続けるが、チラチラと視線を感じて話に集中出来ない
あっさりと私に追い遣られる様を見せ付けられたナンパ目的の男達は、結論として視線を向けるだけで、実行には移せずに居た様だった
ま、それだけで上々だ
そんな安心の中、エリスが話し掛けてきた
「泉…… ソンナ男性二頑ナデ…… ボーイフレンド出来ルノ?」
丁度良くカフェラテを啜った私は、危うく噴き出しそうになった心を無理矢理整える
「ちょ! エリス!! そんなつもりでアメリカ来たんじゃないよ!?」
「解ッテルヨ~♪ デモサ? イツカハ結婚モ考エテルデショ?」
「そりゃ…… いつかは、ね?」
「ウンウン♪ ネェ、泉……」
「ん?」
そう言って私はカフェラテを啜った
「アーサーナンテ…… ドウ?」
「ゲハッ!!!」
あまりの唐突な質問に、私は今度こそ堪え切れず吐き出した
エリスには【兄】が2人居る
アーサーと、ライ
似た服装のセンス
同じ髪型
何より、同じ顔
そう……
彼女の兄は双子だ
彼らは1つ年上の上級生
鼻が高く、キレイな顔立ちはアメリカ人でも美しさを隠す事は出来ない
まぁ、エリスがこれだけ美人なんだ
当たり前といえば、当たり前
隠れファンクラブもある程の人気
そしてそのファンクラブは、アーサーとライ、2人の物だ
整った顔だけでは無く、オーシャンブルーを彷彿とさせる透き通った美しい蒼い瞳に魅せられた女性は多いだろう
私だって何度も会っているが、本当に綺麗な男性達だと思う
憧れの様な物はあるが、ソコまで望んでは居ない
好きとかじゃ無い
あくまでも憧れだ
たまに会えば話を掛けてくれもする
彼等の妹、エリスと私が仲が良いから……
ついでに仲良くしてくれてるのだろう
私はそんなに誇大妄想の強い方では無い
現実は知っている
「大丈夫!?」
カフェラテを噴き出した私を、エリスが心配そうにハンカチを私にくれたが、彼女の物を汚したく無い私は、
「大丈夫、大丈夫♪」
そう言って、ハンカチをお断りし、息を整えた
「でもエリス…… 茶化すのは止めてよぉーーー……」
「エ? 茶化シテナイヨ?」
「どゆこと??」
「アーサー…… 多分マンザラデモ無イヨ?」
まんざらでも無いって……
そんな訳ないでしょ……
あんなにモテる人だ
私なんかじゃ無くても、ガールフレンドならいくらでも出来るだろう
「でもさ…… アーサーは…… ライもだけど、顔が良いからガールフレンドなんて沢山居るでしょ?」
「居無イヨ?」
「そりゃ気付いて無いダケじゃん……?」
「本当ダヨ! ソウイウノ解ルモン♪」
「ふーーーん…… だったら何で作らないの?」
「ソリャ解ルカラジャ無イ?」
「解るって?」
「私ノ家、言ッタデショ?」
「うん……」
「顔モソウダケド、オ金二寄ッテ来ルノモ…… 何トナク解ルカラ……」
そうか……
だから交際とはいっても全面的に信用ならない
そういう事か……
「ダカラネ……」
彼女は話を続けた
「彼等ハ、優先順位ガ【心】ナンダヨ♪」
心か……
あまり多く話した事の無い私の事を解って居るとは思えないが……
まぁ、そう評価してくれているのは嬉しい事だ
「ダカラネ、アーサー…… ドウ?」
彼女の眼差しは真摯に……
ただ、真っ直ぐに……
私を見ていた
でも、今の私の優先順位
それは恋人じゃ無い
私のアメリカに来た目的は、あくまでもルビーアイの解明
それが全てだ
だから私は……
「前向きに検討しておくよ……」
と、彼女に伝える
完全否定で無かった事が嬉しかったのか、エリスは笑顔を見せた
「良カッタ♪ ア…… ソレニ…… 何カ変ナ事モ言ッテタナァ……」
「変な事? アーサーが?」
「ウンウン…… 何カネ…… 【彼女ハ僕達ニ近イ】トカ…… ソンナ感ジノ事…… 言ッテタ」
僕達に近い?
どういう意味だろう……
私は女性だし、男性の気持ちは解らない
近い何かを持っているとは思えない
だから私は
「ふーーーん……」
とだけ、答えた