38話 血
いつも通りの授業を受けている最中、私は、私のルビーアイの事を考えていた
本当に私のルビーアイが、あの血なのか、生物なのか…… アレに対する影響を及ぼすのか……
その事がグルグルと頭を巡る
教授が私のルビーアイを知ってるとは思え無いものの、何かしらの影響は有りそうにも感じてしまう私が居た
その考えに至るには理由もある
アノ血から少々感じる、ルビーの残り香だ
アノ血は私にどこか近い……
そう、感じていたのだ
私は授業をこなすと生物学研究室の無菌室を目指す
ルビーアイよりもまず、試したい事が残っていた
ルビーアイは大切な時以外、極力使わないと心に決めていたからこそ、やれるべき事は皆と同じように、一般人と同じ様に頑張ってみたい
研究員としての私はルビーアイに頼ってはならないと、どこかそう、思えていた
研究として、成果が有るとしても、アレはむしろ反則行為にも感じていたのだ
だからこそ試したかったのは、今まで実行していなかった、物理的接触だった
むしろなぜ今まで試みなかったのか、そう感じてしまう
私は完成密閉されたアノ血をシャーレに移す
移すと同時に、コレはいつもの様に宿主を目指した
私はガラス管を取り出す
そしてシャーレの縁から、またも這い出ようと試みるソノ血を、軽く、軽くだ……
突き刺した
ソノ血は動きを止め……
平たく、平面に……
形を変える
それは私達が知っている、ありきたりな姿
飲み物を溢した時に見る、一般的な形
私は少しソレを観察する
平たく形を変えた、元、血はその外側が反り返っていた
表面張力では無い
上に、反り返っていた
ピザを焼いた時の様な、重力に逆らった姿
それは、死んだふりの様にも見える…… まだ感情か何か…… 行動理由を持っているのかも知れない
そして、その感情らしき物が爆発した瞬間を、私の目は捉えた
ソノ血が……
私を目掛けて飛びかかる!!!
コレは殺気……!!!!!!
私は本能的にルビーアイを発動させた
この血を倒そうなど、ましてや消そうなど微塵も思わず、ただ、ルビーアイで叩き落とした
叩き落とし方に美学は無い
だが、ソノ血は
パチュン!!!
そう、音を鳴らし、床に叩き付けられた
私は数歩、後退りをして、ソレを見る
うねりと共に、元の、無重力に浮かぶ液体の様に……
丸みを帯びたソノ血は移動を開始する
ウネウネと……
宿主に、マインラットに近づいて……
いなかった
近付く先は…… 私……?
私は更に数歩下がる
私に向かう血……
私は回りこみ、また少し、下がる
ソレも向きを変え、私に移動を始める
恐れよりも、冷静が優った時、私は足を止めた
ソノ血には先ほどのような殺気が無かった
私の内履きにソノ血が付く
汚れも無く、ただ……
寄り添って居るように見えた
私の体を這い上がって来るわけでも無く
ただ、寄り添っていたのだ
瞬間、視線を感じた私は振り向いた
そこには、いつもの様に厚着をして車椅子に乗り、その手を震わせて居る、高田教授が居た
私が声を掛ける間もなく、彼は口を開く
「そうか…… そうだったのか…… ククククククク……… それが答えか……カカカカ…… 一瞬か…… 一瞬の発動…… それが従順の………… ハッ…… ハハハハッッッ…… アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
顔を両手で覆い
口元だけが見える
今も笑い続ける彼は
ソレと思われる笑いを止めない
恐れ以上の何もかもが考えに至らない
私は逃げる様に彼へ一礼をすると無菌室を出た
研究室への戸を開けると、ゲシュと藍の不毛な掛け合いを今日も見つめ、私は仮眠室でまた今日も夜を過ごした
ただ、アノ教授の笑い声が頭から離れず……
私は眠ることが出来なかった
そう……
両手で顔を覆い……
その笑いを吐き続ける、その口元は……
ディアブロの様に……
悪魔そのものに…… 見えた……




