四十七 鋼鉄の荒鷲
敵機を撃墜した旨や、地上目標を破壊した報告が、無線に音声の嵐となってざらつく雑音混じりに飛び交う。
電子戦機による広域の電子妨害は、いまだ続いている。
電子戦機の排除が予定より六分おくれている。
許容しがたい遅延である。
占守らになにかしら予期せぬ事態がおこったとしか思えない。
「ビキール、これはただごとじゃねえぞ」
同様の懸念を金本もつぶやく。
予想より敵機の数がはなはだ多いうえにこの電子状況。
小松市北東の夏山の上空で高度をとりつつ、浅間は左目だけでレーダー画面や計器、まわりの状況に注意をくばる。
味方のイーグルが二機がかりで一機のMiG-29を追いかけている背景に、世界遺産にも登録されている相倉合掌造の集落が、翠黛の谷間にミニチュアのように挟まれているのが目に入った。
「エンドリやパルマス、それにアーリーは、たとえ腐って液状化していてもイーグルドライバーだ。いまでは下手なフライト・リーダーより強い。あいつらなら自分の仕事はかならずなしとげる」
首が寝違えたように痛い。
両手両足ともに、操縦のために筋肉をつかうたび激痛がはしり、顔をしかめてしまう。
鎮痛剤が切れはじめている。
「こちらはボドワード指揮官、宵月三佐だ。空から猛攻をうけている。至急支援を求む!」
第1戦車大隊第1中隊からのSINCGARS無線による悲痛な要請だった。
デジタル戦車たる10式戦車に搭載されている地上・空中単一チャンネル通信システム(SINCGARS)は、デジタル変換された音声や画像情報を超短波の周波数で送受信できる。
管制機を介さずに戦車と戦闘機が直接交信できるうえ、デジタル無線ゆえ敵に傍受されにくい。
「おれたちはおれたちの仕事をするぞ。ローウェイ、ディスカス、ついてこい」
金本と漣が二回連続で送信ボタンを押し、意志を統一。
「宵月三佐、こちらポリプテルス・リード。いまから急行する」
「百里のポリプテルスか、感謝する! 敵はSu-25。すくなくとも四機はいる!」
戦車を破壊するために産み出された攻撃機に対し、戦車部隊ができることはなにもない。
味方の高射隊も機能できていないようだ。
燃料を確認。
増槽をふたつひっさげ、中途で空中給油をうけたため、機内燃料タンクはいまだ満タンだが、けっして余裕があるわけではない。
AWACSに目標機の位置と針路を問い合わせ、最適な機位にもっていけるよう航路を設定。
右へゆるい螺旋をえがき、降下。
二万五〇〇〇あった高度を速度に変換することで時速一〇〇〇キロメートル超まで増速し、小松基地へ機首をむける。
四倍から五倍のG荷重に骨がきしむ。
座席に縛りつけるためのシートベルトが、獲物を絞め殺す大蛇となって体に食いこみ、筋肉が潰される。
痛む肉体に、もうすこしでいいからもってくれといい聞かせていると、HUDのむこうで、てのひらに収まりそうなほどだった滑走路が、みるみる大きくなっていく。
その手前に、いまにも着陸をはじめそうな機影。
高翼単葉の平凡な外形。
両脇のエンジンのふくらみが、どことなく、畳まれた蛙の後ろ足にみえた。
火器管制レーダーを起動。
瞬間波動の集中電波が、空域を満たす妨害電波を貫き、朝鮮人民軍の攻撃機を捕捉。
HUDのなかでSu-25の後ろ姿が緑の四角に囲まれる。
ロックオン警報を耳にしたか、敵機が左へ旋回を開始。
爆撃航程からはずすことには成功した。
だが撃墜しなければ脅威は去らぬ。
左にかたむいたままのSu-25は、フレアを左右と下の三方向に放出しながら、時速四五〇キロメートル前後の低速で左旋回をつづけ、浅間をふりきろうとする。
蚊のような機影がどんどん迫ってくる。
こちらが優速すぎる。
追い越さないため、スロットルレバー付近にあるエアブレーキのボタンを操作。
イーグルの背中から、三畳もの面積をもつ板状のエアブレーキが一秒で立つ。
空気抵抗が増大。
機体がきしむ音とともに急激に減速。
敵を追いかけている戦闘機は速度が落ちるため、ほかの敵からすれば鴨撃ちの的となる。
そうら、レーダー警報だ。
レーダー警戒受信機画面の六時方向の外側に、KJL-10と併記された記号。
こちらも電子の結界を展開している。
よほど近づかれなければロックオンされはすまいが、耳障りで目障りだ。
「ローウェイ、六時の梟龍を殺ってくれ。歩道橋があるのに車道を渡ろうとしている年寄りなみに邪魔だ」
「思いやりのある職場ではたらけて幸せだね、まったく」
右後方にいた金本機が横転。
翼の先端から糸のような飛行機雲をひくほどの急旋回で、FC-1梟龍の邀撃にむかう。
ふたたび前方に集中。
HUDによれば、目標たるSu-25との距離は三・五キロメートル、荷重は五・二三G。
HUD中央右寄り、気圧高度計と並行して表示されている目標距離計の目盛りには、上から最大射程距離、機動目標に対する最大射程、いちばん下には最小射程の横線。
目盛りの反対の目標距離をしめす横線が、機動目標への最大射程をとおりすぎ、ミサイルの最小射程の横線とのあいだに入る。
Su-25を囲む緑の四角の下に、ちいさな三角形の星が点灯。
気迫が満ち、拳銃の握りを逆さまにしたような操縦桿の頂点につけられたミサイル発射ボタンを二回連打した。
左翼と右翼のミサイルランチャーから一発ずつ射ちだされた90式空対空誘導弾は、六〇Gというけたはずれな加速で雄飛。
炸薬の牙をもつ双の猟犬となり、鈍重きわまりない攻撃機めがけて殺到する。
刹那、左旋回するSu-25の尾翼基部で、強烈な桃いろの眩光が、写真のストロボのように閃いた。
AAM-3の一発が目標追尾をやめ、ミサイルからただのロケットに退化してしまったかのように直進。
獲物の右側の空間をむなしく貫いていく。
「“エカチェリーナ”か、味な真似を!」
Su-25Tが機体尾部にそなえる電子光学式妨害装置、通称“エカチェリーナ”は、六キロワットの強力なセシウム灯による閃光で、赤外線誘導式ミサイルのシーカーの目をつぶすことで誘導をさまたげる。
それは、人間なら望遠鏡で太陽を直視してしまったかのごとき強光量。
赤外線だけでなく紫外線も可視化するAAM-3の二色検知シーカーさえ盲にさせられてしまったのだ。
同時に二発へは閃光を指向できなかったらしく、AAM-3の一発は正常に追尾。
フレアもものともせず、敵機の右エンジン排気口付近、人間でいう右の腰部分へ突撃。
近接信管は適切にはたらき、爆風と数百の散弾を確実にあびせた。
かぎりなく直撃にちかいミサイル攻撃をうけたSu-25は、一瞬ぐらついたが、すぐに平衡をとりもどし、なにごともなかったかのように飛びつづける。
Su-25は、敵地上空で戦車やトーチカを滅ぼす使命をおびて開発された近接航空支援専用機だ。
その設計思想は、低空飛行で地形の起伏を利用して身を隠したり、最小射程より低高度を飛ぶことで、敵の地対空ミサイルからのがれる点にある。
低空を飛べば、地対空ミサイルのかわりに、対空砲の弾幕にさらされることになる。
そのためSu-25は、戦車に翼をつけたかのごとき重装甲をまとっている。
空対空ミサイルの近接信管では致命傷にはならない。
“エカチェリーナ”もあいまって、後半球からの守りは鉄壁といってよいだろう。
「2、5。敵の尻は鉄の括約筋で守られている。正面角度から攻撃をおこない、コクピットをつぶせ」
「2、ラジャー。ケツがだめなら口にねじこめってか」
「5、ラジャー。爆撃航程に入った敵の正面にまわります」
AAM-3二発と引き換えに梟龍を撃墜した金本が浅間の右後ろにもどる。
「アマテラス、ポリプテルス1。Su-25一機が小松ベースの3-4-5から針路1-6-5にとり、速力三〇〇ノットで接近中。アプローチを開始したと思われる。至急撃墜せよ」
「ポリプ1、ラジャー。ポリプテルス5、エンゲイジ、バンディッツ」(五番機、敵機と交戦態勢をとれ)
「ポリプテルス5、エンゲイジング・バンディッツ」(了解、指令を実行する)
漣のイーグルが、ミサイルをすべて射ちつくした浅間の前へでる。
「前から思っていたが、ビキールの英語ってすげぇ聞き取りやすいよな」
漣を援護できる位置についた浅間に金本が軽口をなげる。
「洋画狂いの親父のせいでガキのころから英語には自信があったんだが、中学の英語の授業で音読するときに自慢の発音を披露したら、先公に『子供のくせにそんなキザな発音しないの。日本人は日本人らしく発音しなさい』っつって言い直させられてな。以来、おれの英語は完全な日本英語だ」
「ビキールのような小型軽量脳の人間を量産しないためにも、徹底的な教育改革が日本の急務だな」
「戦争は最悪の消費行為だが、ローウェイのような違法生物を人生ごと消費できるならすこしは有用性があるかもな」
「おれほど知的な人間はいないぜ」
「おまえの知的には『やまいだれ』がついているだろう」
敵攻撃機は日本海洋上から一機が爆撃航程に入っているほか、三機がIPをもとめて旋回中だ。
たかが四機、一個小隊。
だがSu-25は、たった四機で一個戦車連隊、つまり八〇輛ちかい戦車を殲滅するおそるべき火力をもつ。
迅速に処理しなければならない。
基地をはさんで、海側から腹這いのような超低空飛行で迫りくるSu-25に対し、漣のあやつるF-15Jが山側からむかえうつ。
「ポリプテルス5、FOX2」
機体正面に“エカチェリーナ”はない。
Su-25のキャノピーは防弾強化アクリルガラスだが、胴体の装甲にくらべれば防御力は落ちる。
二条の白煙が一点透視法にしたがって接するとき、空中に火の花が咲き、散った。
名残の黒煙のかたまりから、双翼がとびだす。
惰性で滑空するSu-25は、首がなかった。
二発のAAM-3による指向性榴弾破片効果弾頭の爆発力が、慈悲なき双剣の刃となって、敵攻撃機の首を刎ね飛ばしたのだ。
コクピットで操縦していたパイロットごと。
焔と煙をまとい、水に墨を落としたときのように黒い筋雲をひきながら、主をなくした飛行機が下降していく。
「ナイスキル! つぎいくぞ」
旋回を終えたSu-25が、基地への爆撃をもくろむ。
浅間たちはAWACSの誘導により、正確に敵機正面から対峙。
シーカー冷却中の僚機らを供回りに、先頭の浅間が、スロットルレバーの武装選択つまみで機関砲をよびだす。
照準点を目標のコクピットにかさねる。
照準点を中心に置く照準環内側の円弧は、目標距離計だ。
六時、五時、四時とどんどん巻き戻り、目標との距離が近づいていることをしめす。
照準環外側の三時あたりの点は、機関砲の有効射程。
巻き戻る円弧が、三時の点を通過。
敵機は完全射程内。
時間の流れが粘性を増す。
伸びた体感時間のなか、たがいのHUDと風防ごしに、自分とおなじように射出座席に固定され、ヘルメットとバイザー、酸素マスクに顔をつつんだ敵パイロットが、浅間の網膜に映った。
(あんたらにも、家族がいるんだろうな。国で帰りをまってる親や女房や子供がいるんだろうな)
操縦桿の引金に人差し指をかける。
射撃時間は〇・五秒。
発射された五〇発のうち、半分ちかい二〇発が、見かけ上は人差し指の指先から第二関節くらいまでの大きさのSu-25へ叩きこまれる。
キャノピーが輝く破片となって粉砕。
一瞬、コクピット内が鮮烈な真紅に染め上げられたかとおもうと、炸裂弾による爆発の焔がすぐに覆い隠す。
(愛する人間を置いてきたやつもいるんだろうな。ふだんはおれのように、くだらない冗談ばかりいってるやつだったかもしれない)
時がもとのとおりに流れだす。
反転し、金本と漣を先導して三機めのSu-25の撃墜にとりかかる。
正面にまわると、まだ十二、三キロメートルも距離があるのに、爆撃航程を放棄、旋回してのがれた。
いったん捨て置き、もう一機の予想進路上に先回りする。
三機がわかれる。
単機となった浅間がレーダーロックすると、正対していたSu-25は、むかって左に瞬間旋回。
機首をむけたさきには、金本のイーグルが待ちかまえていた。
もし逆方向ににげていたとしても、そこには漣がいる。
瞬間旋回をしたSu-25は、時速三〇〇キロメートル弱にまで速度が落ちていた。
飛行機が旋回するためには、失速速度にGの平方根を乗じた速度が必要だ。
その速度を下回ると機は失速してしまう。
いまの敵機の速度だと、せいぜい三G旋回が関の山。
進退窮まったSu-25が機首をさげた。
なけなしの高度をはたいて降下し、なんとか増速しようとしている。
それこそ金本の思うつぼだ。
機首をさげるということは、背中をみせるということ。
すなわち、真っ正面よりも投影面積が増えるということだからだ。
覆い被さるようなかたちとなった金本のイーグルの右肩から、PGU-38砲弾がSu-25の頭へ光線のごとく伸びる。
敵機は、キャノピーの天井から毎分六〇〇〇発の超連射をもろに浴びることとなった。
勇壮なる騎兵がすれちがいざまに大薙刀を一閃させたがごとき技の冴え。
無惨、首を刎ねられたSu-25は、降下加速の姿勢のまま、基地南の連峰へと突っ込んでいった。
(おれにとっては、あんたら朝鮮人一〇〇〇人の命より、日本人ひとりの命のほうが重いんだ)
残るは一機。
尾を巻いて逃げるかとおもったが、大回りに回って基地への接近を試みている。
「5、スパイク。ツリー・オクロック」
漣が三時から敵機にレーダー照射されている。
みえぬ浅間の右目のかわりに右後方にはりつく金本とともに、M61バルカンを選択したまま右へ旋回。
浅間機と金本機の背中と主翼上面から、濃霧のような白い雲がふきだす。
断熱膨張によって急速に冷却された空気中の水蒸気が飽和状態に到達、大量の水滴となって機体から雲を生む。
機体がまとう雲が日光を波長ごとに分解し、五彩の瑞雲となる。
鋼鉄の天使が虹の被衣を被って天翔る、神話の一節のような光景だった。
レーダーを振り、目標を捜索。
いた。
正面。
FC-1梟龍、二機。
同時にこちらのレーダー警報も鳴る。
だが、こちらがすでにロックオンしているのに対し、十キロメートルさきの敵機はまだ捜索段階。
たがいに電子妨害をかけているなかでも、イーグルのほうがレーダー性能が上なのだ。
分が悪いとみたか、目標機は急上昇。
僚機も追随した。
浅間も金本も深追いせず、編隊を組み直すべく漣のもとへもどる。
戦闘機は、地上の味方の生死に直結する攻撃機や爆撃機にくらべれば、戦術的にも戦略的にも価値が低い。
相手にしなくてよい状況なら、むだにつきあう必要はない。
Su-25は、いまだ爆撃航程に入ってはいないが、虎視眈々と機会をうかがうかのようにうろついていた。
敵は、北に針路をとった。
日本海側から攻撃するつもりだ。
ポリプテルスの三機はふたたび散開。
漣がアフターバーナーに点火して敵の予想進路のさきへ飛び、浅間がSu-25を追いたてる。
北陸自動車道と海岸線を飛び越して、海上に出る。
機首レーダーを敵の真後ろから照射。
電子戦機の電子妨害と、Su-25TM自身が両翼端に搭載しているMSP-410電子戦装置がロックオンを拒む。
イーグルのAN/APG-63レーダーが周波数変調処理能力で妨害電波を解読し、かいくぐろうとするが、結界が二重では演算が追いつかない。
ならば、電波の出力によって強引に突破するだけだ。
目測で十キロメートルほどまで接近したあたりで、本来は二〇〇キロメートルさきまで探知できるF-15Jのレーダー波が、電子の結界を突破。
ロックオンされたことを察知したらしいSu-25が超低空飛行にうつる。
海面すれすれを飛ぶことで下からの攻撃を遮断。
水平尾翼の右がさがり、左があがる。
敵機の左旋回の兆候に神速で反応した金本が、浅間の右から左後方へと高速移動。
左旋回しようとしていた敵機にレーダー波を叩きつける。
真後ろだけでなく、左後方からもロックオンされた敵機は、旋回を中止。
右にかたむいて、反対方向へのがれようとする。
こんどは浅間が、レーダーロックは維持したまま、右方向舵ペダルを踏みこみ、むしろ敵機に先んじる勢いで右にずれる。
敵からすれば、右に逃げようとしていたのに、六時にいた放射源が自分よりさきに四時方向に辷ってきたのだから、旋回をあきらめざるをえない。
右にも左にもにげられない敵機の正面には、真っ向から突っ込んでくるポリプテルス五番機の雄姿。
のこる逃げ道は上か下。
戦闘機にかぎらず、飛行機は前にむかって飛ぶ。
ただし、機首のむいている方向と、実際の進行方向は、かならずしも一致しているとはかぎらない。
水平飛行している状態から機首をひきあげて急上昇に転じても、慣性の法則でしばらくはまっすぐ飛ぼうとする。
この、機首のむいている方向と実際の進行方向のずれを、迎え角という。
飛行機は、前方から主翼に気流をうけることで揚力を発生させている。
迎え角が大きすぎると、翼の腹で気流をうけることになってしまう。
こうなると揚力は喪失。
すなわち失速となる。
自動車がむりにハンドルを切りすぎるとスリップするのとおなじだ。
眼前のSu-25が前後の挟み撃ちから脱するために急上昇すれば、まちがいなく過大な迎え角で失速する。
かといって下降しようにも、もともと低空飛行していた敵機には、ろくに高度がない。
定石にしがみついたがゆえに最適解を誤ったSu-25は、ただ直進するしかなかった。
浅間と金本が迎え角とG制限いっぱいの右旋回で回避行動にうつるのと同時に、漣がバルカン砲を発射。
鋭い爪をそなえた大鷲の脚は、獲物の首をたやすくねじ切った。
パイロットごとコクピットをうしなったSu-25は、藍いろの海面と接触し、まるでそこが堅固な大地であったかのように跳ね返って前転。
なんども転がり、そのたびに機体が分解。
ついには東側でもっとも強力な攻撃機であったこともわからないほど細かい部品となって海中に没した。
「敵攻撃機掃討を確認。ナイスワークだ」
AWACSの先任管制官の声にも高揚がまじる。
空にあるSu-25はかたづけた。
あとのSu-25はすべて福井空港にいるとのこと。
地上レーダーと地対空ミサイルの城壁は、すでにアンヘル編隊によって破城されている。
アンヘル編隊とおなじくF-2A四機からなるコリドラス編隊がすぐにたいらげてくれるだろう。
「コリドラス・フライトに早くこいってつたえてやれ。残飯処理係になっちまうぞ」
金本のいうとおりだ。
飛んでいる敵機を撃墜していくのは手間がかかって効率がわるい。
一刻も早い地上撃破が必要だ。
ほかのF-2AやF-4EJ改の編隊も獅子奮迅、敵の後衛たる榴弾砲やロケット砲部隊に正確な爆撃をかけている。
しかし、戦闘機ゆえに、爆弾の搭載数がじゅうぶんでない。
敵戦闘機も執拗に爆撃を阻止しようとする。
RF-4EJファントム偵察機が、敵勢力の動向と、味方の爆撃の成果を確認。
AWACS経由の報告に、浅間の肩から力が抜けそうになる。
二〇機以上の作戦機がみな全身全霊、奮励努力しているにもかかわらず、敵地上部隊の後衛の二割程度しか撃破できていない。
近接航空支援に限界がみえはじめた。
「敵の数が多すぎる。おれたちだけでは手に負えん!」
スティングレイ・フライトの編隊長がさけんだ直後、
「AWACS、こちら小松ベース。第2高射特科群と第10高射特科大隊ならびに高射教導隊が編成完了、SAMがオンラインになった。敵性航空機の指示をくれ。こちらで戦闘機の支援をする」
「こちらは第12特科隊。三個中隊が展開した。一五五ミリがある。空自は、可能であれば空から敵の位置を教えてくれ。観測班派遣ののち、敵に弾を返す」
浅間たちがSu-25攻撃機を排除したことで、陸上自衛隊の地対空ミサイル部隊と、長距離砲部隊が動けるようになった。
「全車輛、こちらボドワード1。居留守は終わりだ。出るぞ」
いままで殴られるだけだった基地の戦力が立ちあがる。
反撃のときだ。




