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FFFF


ノイズが走る全身を隠すように、それでいてあてもなくさまよい続ける。

安全に身を隠せるところを探さなくては。

複雑な心境をあざ笑うかのように空は晴れ渡り、さわやかな風が草花をなでる。

見渡す限りは誰もいない。

感じる限りは誰もいない。

ただ、ただ歩いて行く。

やがて見えてくる草原のダンジョン。

オフラインの時、一番初めに攻略することになった。

クリアまでに三週もかかった。

小さな、木で作られた物置小屋のような入口。

今の状態なら一人でも十分余裕だろう。

扉を開け地下へと続く階段を下っていく。

雑魚を蹴散らし、ボスを倒す。

ボス部屋の奥の扉が開き、新たな部屋が待ち構える。

気配はない。

そこにそっと足を踏み入れた。

そこそこ広い部屋で、その部屋の奥に地上へと帰還するためのワープ装置が置かれていた。

金にも装備にも食料にも困らない。

敵もここまで入ってこない。

そして出ようと思えばすぐに出られる。

住処としてちょうどいいではないか?

さまざまな道具を取り出し、生活ができるように配置していった。


ここに閉じ込められてから一週間。

現実ではどのくらいだろう?

ゲーム内での時間で一週間が過ぎていた。

時々地上に出ては散歩をしたりしていた。

あの部屋に戻るたび、このダンジョンを攻略しなくてはならないが大した労力はいらない。

ゆらゆらと揺れる消えない松明の炎の下、ベッドに横になった。

まっすぐに手を伸ばす。

相も変わらずノイズが走り続けている。

その内消えてしまうのではないかと不安に駆られる。

運営には直接メールを送ったが、何日か過ぎた今でも返信は来ない。

特に目的はない。

いっそのこと全ダンジョンでも制覇しようか。

そんなことを考えてると小さくウィンドウが開き、通知が来た。


(ただいまより緊急メンテナンスを行います。)

(プレイヤーの皆様は速やかにログアウトしてください。)


ログアウト……

出来たらいいなぁ。

揺れる炎を見ながら何かを考え、それでいて何も考えずにいた。

メンテナンス中もログインしていたらどうなるのだろうか?

もしかすると俺の為のメンテナンスだろうか?

手を頭の後ろで組み、そっと目を閉じる。

着たままの装備が邪魔になることは無かった。

炎の音だけがその部屋に響き渡る。

ゆっくりと睡魔に取り込まれた。


ハッと目を覚ます。

思わず寝てしまっていた。

ウィンドウが小さく現われ、新たな通知を告げる。


(Ver3.11)

(プレイヤーの皆様、ご協力ありがとうございました。)

(ただいまより新イベント、『決闘・囚われのノイズ』を開始します。)

(どこかにいる新たな敵、ノイズ・オブ・プリズナーを倒したパーティ全員に一万課金ポイントをプレゼント。)

(さぁ、装備を整えて新イベントに挑戦しよう。)

(新スキル一撃必……


ノイズ・オブ・プリズナーか。

まるで俺の事だな。

そう思いつつメニューを開く。

帰れるようになったかも、と言う強い期待はあっさりと打ち砕かれる。

閉じた瞬間ちらりと自分の名前が見えた。

普段は気にしていなかった。

だが、名前が変化していたように見えたのだ。

気のせいだと思いつつも何故か引っかかる。

再びメニューを開いたとき疑惑は確信へと変わり、同時に焦りも感じた。

どういうことだ!?

ノイズ・オブ・プリズナー

俺の名前はそれに変化していた。

敵は運営なのか!?

ひとまず地上に出る。

早くも他プレイヤーが何人も徘徊している。

慌てて草木の中に身をひそめる。


「ノイズって一体だけかな?」

「さぁな、とにかくさっさと見つけるぞ。」


一体に決まってる。

何を考えているんだ!

大きなマントを出し、上から羽織る。

深々とフードを被り街に向かった。

どこも新イベントで話題は持ちきりだ。

ばれたらとんでもないことになる。

ここに来てもまずかった。

早くあのダンジョンに戻ろうと急ぎ足で移動する。

だが、人通りの多い道。

ノイズはかなり隠れるが、着る人がほとんどいないために目立つマント。

その上フードを深くかぶりすぎて前がよく見えなかった。

周囲から注目される中、ドンッと誰かにぶつかる。


「あぁ、すいません。」

「お怪我はありませんか?」


こんな時に限ってお節介に会う。

手の動きだけであっち行けと表現し、さっさとその場を後にしようとする。


「待ってください!」

「まだお詫びをしていません!」


ぶつかったそいつは追いかけてくる。

それに気づき慌てて逃げ出す。

が、視界を塞ぐようにウィンドウがあらわれる。


(決闘が申し込まれました。)

(フィールドを選択してください。)


なぜばれた!?


(Volcano)

(起伏が激しくたびたび地中から噴火します。)


俺は逃げることができない。

ひとまずそこを選択した。

が。


「いやー申し訳ありません。」

「どうしてもお話したくて、決闘を申し込んだ次第です。」

「決闘なら強制的にお話しできますしね。」

「すぐに、僕がサレンダーしますよ。」


(Wilderness)

(特に障害物の無いフラットなフィールドです。)


という画面が現れ、周囲の建物が徐々に塵となり消えた。

いつか見た荒野の風景。

さえぎる物はほとんどない。


(TEAM BLUE 1 VS TEAM RED 1)


奴と向かい合う。

この時相手の名前が表示された。

それはおそらく相手にとっても同じ……


「いやー、驚きました。」

「まさかNPCとは。」

「話しかけた僕が馬鹿みたいですよ。」


こいつに会った事自体が俺の不幸だろう。

REDの後ろの数字は変化し6で止まった。

敵は6人か……


(stand by)


ゆっくりとカウントダウンが始まり、そして終わる。


(TEAM BLUE WIN)


元の風景に戻った。

周囲に誰もいないことを確認し、マントを羽織フードを深々とかぶった。

そして急ぎ足でそこから離れた。



十六回春が来た。

十六回夏が来た。

十六回秋が来た。

そして、十六回目の冬。

昔は挑戦者は多かった。

だが、今となっては全く現れない。

たびたび地上に行っては、様子を見てくる。

誰も挑もうとはしない。

誰もが逃げる。

私の周りには誰もいない。

私から決闘を仕掛けた場合もそうだ。

全員が逃げる。

全てのダンジョンを攻略した。

全ての街を見て回った。

もうこの世界は、私にとって狭すぎる。

イベントの敵になってから、モンスターに襲われることはなくなった。

一方的に殴ることも可能だが、反撃はない。

チートコードは遥か昔にオフにしていたが、効果は消えなかった。

ロースペックが故に求めた力。

FFFFの最大は何をしても消えることなく、この身に宿り続けた。

体のほとんどがノイズと化し、いつか消えてしまうのではないかと不安にさせる。

冷たい風が重たい雲を運ぶ。

枯れた草原にただ一人、片足を立て胡坐をかいて座っている。

肩に立てかけた剣に風が当たり、甲高い歌を奏でる。

チャラチャラと揺れ、当たる金属の音。

そっと目を開ける。


「待たせたな。」


初めての決闘の相手。

かなり沢山を相手にした気がするが、覚えていない。

これまでの間、それ以来一度も会っていなかった。

変わらないな。

変わるわけないか。

あの時よりも遥かに強くなっている、気がした。


「ふむ、まだ私に勝負を挑むとは……。」


見た目はノイズ。

精神年齢は30近くなっていた。

荒ぶる性格は丸くなり、落ち着きを纏っていた。


(決闘を申し込まれました)

(フィールドを選択してください)


座ったままの姿勢でフィールドを選択する。

あの時の、あの場所で……


(Wilderness)

(特に障害物の無いフラットなフィールドです。)


久々に行われる決闘。

この表示を見るのはどれだけぶりだろうか。

風景に大した変化はなかった。

少しばかり草が飛んで行った位だろうか……


(TEAM BLUE 1 VS TEAM RED 1)


様々なフィールドで様々なプレイヤーを相手取った。

火山の噴火に巻き込まれたこともあった。

唐突に起こった砂嵐により吹き飛ばされかけたこともあった。

全てが懐かしく感じる。


5。


私は何故チートを使ってしまったのだろう。


4。


私はどうなるのだろう。


3。


私はどうなっているのだろう。


2。


私は何者だろう。



1。




私は今――




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(TEAM RED WIN)



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