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神蝕のレギオン - sin shock of legion -  作者: kats(異)


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1/8

プロローグ

 ── 神々が神々であることに辟易(へきえき)した時代。


 とある国に、神と呼ばれる、または自称しているモノが数多く存在していた。

 あまりにも(ながら)えた神々は変化を求める。

 神としての力を放棄し、自分たちで創り出した人間に、生まれ変わろうと目論んだ。


 しかし、簡単に神の力を放棄する方法は見つからない。

 ある時、人間の中に突出した能力を有する血筋が現れる。

 神々はその血筋に着目した。

 神々からすれば微々たる能力ではあるが、人間からすれば、その能力は神々の能力と同種に見えた。


 ある神が言った──

『あの血筋を利用できまいか』


 ある神が言った──

『あの系譜ならば、(われ)らの力を徐々に弱めていくこともできよう』


 ある神が言った──

『本当に可能なのか? あんな矮小で華奢な器で、俺たちの力を受け入れるなんて』


 ある神が言った──

『相性があるようですが、うまく交配させ、血を濃くすれば問題ないでしょう』


 ある神が言った──

『どうせただただ無味乾燥に過ごしているだけなのだ。試みても損はあるまい?』


 ある神が言った──

『しくじったとしても、土塊(つちくれ)人形が元の土に還るだけ』


 ある神が言った──

『それでもなお心配であれば、まず土着神(どちゃくがみ)蕃神(ばんしん)で試みれば良い』


 神々は言った──

『異議なし。(ことわり)は今、一つに結ばれた』



 ◇ ◇ ◇



 ……何があったんだっけ。


 今目の前で、ぼくの体であった欠片(もの)がバラバラに千切れ飛び、スローモーションのようにゆっくりと舞っている。

 熟れた果実のごとく潰れた腹部からは、赤錆びた鎖のような臓物がぶちまけられ、手や足は各々が別の生き物として目覚めたかのように、勝手な方向へと逃げ惑っていた。

 それら異形の群れを繋ぎ止めているのは、綻んだ刺繍のように虚空へと延びる真っ赤な糸。

 皮肉にもその細い糸だけが、これらがかつて「ぼく」という一個体であったことを、無機質に証明していた。


 あぁそうか……ぼくは死ぬんだな。


 その向こうには昨日までと変わらぬ、ひどく見慣れた風景が広がっている。

 ついさっきまで、ぼくもその日常の中にいた。

 ぼくという一個体を、この世界から解放することに成功した不器用な鉄の塊が、擦れた金属の焼ける独特な匂いを放っている。

 その周りでは、それに乗車するために列をなしていた大勢の人間たちが、それぞれ好き勝手な音階を奏でていた。


 そうだ……今日は妹の誕生日。

 妹と会う約束で急いでいたんだっけ。

 幼い頃に両親を亡くしてから、ずっと二人きりで支え合ってきた妹。

 ぼくにとって唯一の心残りは、彼女を独りぼっちにしてしまうことだ。


 あぁ……騒がしかった音階が、徐々に遠ざかっていく。

「ぼく」という存在を繋ぎ止めていた真っ赤な糸が、限界まで延びきり、今まさにぷつりと断たれようとしたその瞬間、ぼくの心に圧倒的な存在感を持った何者かの声が響いた。


『『『『『『『見つけたぞ!!』』』』』』』


 逃げ惑う「ぼく」であった全てを、何者かが強引に()()()()()感触がした。

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