020 帰りました
山の頂上で長く休憩する訳にも行かず、少しの休憩で出発する事に。
治療系の魔法を知らないんで、治せないしなぁ。
俺がまだ学者だった頃は、治療の魔法があった。
うろ覚えだが、怪我を治す魔法だったはず。
でも治りを早くする程度のものだったと記憶している。
しかも何故か寿命が縮むという恐ろしい副作用付きで。
中には悪化する人も居たとか。
前世の記憶が戻った今なら理解出来る。
きっと体内の細胞を活性化させているのだろう。
結果細胞の寿命が短くなり、それが寿命にも反映されたのではないだろうか?
悪化するのは癌細胞まで活性化させたからでは?
そんな事を考えながら跳んでいると、ドラゴンの姿が見えてきた。
「ほ、本当にドラゴンが居る……」
「このまま行っても大丈夫だよな? 知らない物が近寄ってきたからって攻撃して来ないよな?」
上の荷台の会話が聞こえてくる。
確かに不安だよね。俺もちょっと不安になってきた。
って事で、後2回跳べば着く辺りで一旦止まる。
荷台をなんとか木の上に設置して、乗っている人と話をする。
「俺も攻撃されないか不安になりました。
なので、ここで待機しててもらえますか? 先に言って話をして来ようと思いますけど、どうでしょう?」
「こちらに異論は無い! 頼んだ!!」
「あ、はい」
では頑張って交渉して来よう。
『戻ったか。で、アレは何だ?』
「いや、村に到着したんだけど、すぐに捕まってな」
『裸に鎧姿の変態だからな』
「それに関しては俺は悪くない!」
『冗談だ。で?』
「ドラゴンの所から来たって言っても信じてもらえなくてね。証明する事になった。
で、連れてきたんだけど……ダメだったか?」
『別に構わぬ』
「攻撃とかしないよな?」
『向こうが何もせねば、こちらも何もせぬわ。まぁ、攻撃してきた所でかすり傷一つ付けられぬがな』
「じゃあ、連れてくるよ」
保証してくれた。
これで安心して連れて来る事が出来る。
戻ろう。
「お待たせしました」
「どうだった? 交渉決裂? 戻った方が良い? 帰ろうか」
「いえ、大丈夫なので、行きます」
「マジか~、ドラゴン、許可しちゃったか~」
「ここまで来たんだ、諦めろ」
「ビビって帰ったって事にするのはどう?」
「貴族の屋敷に『行きます』って前触れを出しておいて、何も言わずに帰る。
これと同じような事をするのか? ドラゴン相手に? 怒って領まで追ってきたらどうする?」
「正論を言うなよ~、正論を。判ったよ、行くよ、行けば良いんでしょ」
「そうだ。ではバトリエル、頼んだ」
「はいはい」
どうしても領主さんは行きたくないようだ。
ま、普通は怖いよね。
領主さんの気が変わらない内に行きますか。
2回跳んでドラゴンの近くに着地する。
ゆっくりと荷台を降ろすと乗ってる人の顔が見えた。
皆顔色が悪い。また酔ったかな? ……んな訳無いよね。ドラゴンにビビってるのだ。
「お、おい。紹介してくれ」
小声で領主さんに言われた。
こういう場合は、俺が紹介するのか。
「え~、こちらは、あの山の向こうにある領の領主さんです。名前は……なんだったっけ?」
「い、いや、領主でいい」
「そうですか? で、こちらが村の駐屯地(?)の師団長さんと、そこの兵士さん2名」
『我はホライトドラゴンである。名は無い。何の用で来た?
こやつの身分の証明か?』
「は、はい。その通りでございます」
『無理に敬語なんぞ使う必要は無い。好きに話せ』
「ありがとうございます。
おい、ほら、要件だってよ。言えよ」
領主さんが、師団長さんに丸投げした。
出る時にそんな話をしてたね。
「ちょ、おま、この場に及んで……!
私、山の向こうの砦を守っております、ギロ・サイデルと申します。
突然バトリエルが我々の居る村にやってきまして。身分が判らず拘束しました。
その時にホワイトドラゴン様の元より来たと言いましたので、確認の為に訪問させて頂いた次第です」
『ふむ。その者は間違いなく、何百年も前からこの地におるぞ』
「そうですか、判りました。………………何百年?」
『そうだ。死にかけの状態で何百年とここで寝ておったわ』
俺の恥ずかしい過去を簡単にバラさないで欲しい。




