002 ドラゴン
2話目です。
ドラゴンの目撃情報の多い地域に向かい、巣があると言われている山に登る。
勿論、道中は冒険者を護衛として雇っている。
ドラゴンの巣に向かうなんてアホか!となかなか受けてくれる人が居なかったけど。
1ヶ月も待機してた頃、有名なパーティーがたまたま来たらしく、ようやく受けてもらえた。
報酬は俺がこれまで貯めた全貯金で承諾してもらった。
助かります。
ドラゴンは魔力が多い。バカみたいに多い。
なので近づいていると魔法使いには感知出来るそうだ。
そこも質問攻めしたいが、今は巣に向かう事が第一なので我慢!
「これ以上の接近は無理だ」
やっとそれっぽい場所を発見した時の、パーティーリーダーの言葉がこれ。
「判りました。ありがとうございました」
「……えっ? 何、その言い方」
「何か変でした?」
「いや、なんかここで依頼は達成みたいな口調だったから……」
「ええ。終了ですよ。ご苦労さまでした」
「はぁぁぁぁぁ?! こんな所に貴方を置いて帰れと?!」
「はい。そうですけど?」
「何するつもりだよ?! 自殺するのか?!」
「ははは、やだなぁ。何で死ななきゃいけないんですよ?
まだまだ知らなきゃいけない事が山のようにあるのに、死にませんよ」
「……依頼には研究の為とあったが、こんな場所でか?」
「そうですよ?」
「メチャクチャ危険だぞ?」
「それは承知の上ですよ。でも、知りたい事実が目の前にある! 俺は逃げませんよ!」
俺の熱量に負けたのか、しぶしぶだが納得してくれた。
2時間もの説得に反論しまくった事で、諦められたとも言うかも。
「ほんっとーに良いんだな?! 帰るぞ?! 一緒に戻るなら今だぞ?!」
「気をつけてお帰り下さい」
「気をつけるのはお前だよっ!
…………判った! 1週間! 1週間後に迎えに来る! それまで生きてろよ!」
「すみません。もうお金は無いんですよ」
「善意だよ! 金なんか要らねぇよ! こっちは無人島に子供を置き去りにするような気分なんだよ!」
こうして冒険者とは別れた。
俺は近場の大きな木に登り、早速観察の準備に入る。
望遠鏡よし、落下防止の命綱よし、メモ用の紙とペンとインクよし。
観察開始だ!!
で、その1時間後。
ドラゴンに発見された。
巣まで連行された。
はい、ここで死にそうになってると思ったでしょ?
違いまーす!
そのドラゴンはホワイトドラゴンで、何と人語を解する!
こんな情報は無かった! 大発見だ!
どうやって聞いてる?! どうやって話してる?! 秘密を知りたい!!
『貴様はあの場所で何をしてたのだ? 殺気も感じぬし何か邪魔をする訳でも無い。
気持ちの悪い視線を送ってくるだけだ。何がしたい?』
「私はドラゴンの事が知りたいのです!!」
『知ってどうする? 効率的な殺し方でも研究するつもりか?』
殺気を込めた声で威圧してくるホワイトドラゴン。
だが、それくらいで俺の研究魂はくじけないぞ!
「何故殺す必要が?」
『我々の死骸を活用するのだろう?』
「確かにそういう人達は居る! だが私は違う! 生き方や生態が知りたいのだ!」
『何故知りたい?』
「それが私の生き方だからだ!」
『……知ってどうする?』
「満足する!」
『え~と、お前はアホなのかな?』
「知識が足りないという意味ではアホなのだろう!」
『あっ、こいつ、話の通じないタイプだわ』
こうしてホワイトドラゴンと打ち解けた(?)俺は、近くに住む事を許可された。
『気持ち悪いけど無害』これが俺への評価だった。
住む対価として、俺もドラゴンへ知っている色々な知識を渡すという条件付き!
ここは天国か?! 誰もが「神様が~」と言う世界じゃない、討論が出来る場所! サイコー!!
でね。
翌日に『我々ドラゴンは生まれてすぐにそこにある草を食べるのだ』と教わった。
なるほど!
この草を食べる事に何か意味があるのだね?!
古来、人間は色々な物を食べてきた。
今では普通の食材でも昔は『不気味な生物』と思われていたものもある。タコとかナマコとか。
では、それらはどうやって食材になったのか?
簡単な話だ。誰かが食べたのだ。「他の生物が食べるくらいだから食べられるのでは?」と考えて。
はい。理解出来たでしょ?
勿論食べましたよ!
対象、何かの草! 実験体は俺!
いざ、実食!!
今ココ。
死にそうです……。
『お前、本当にアホだろ?』
ホワイトドラゴンよ、死にそうな人間に言う言葉がソレか?